つい先日、Twitterで連ちゃんパパという作品が話題になっていた。

 

Twitterでのこの漫画に対する評価はこんな感じだ。

 

「登場人物、みんなクズ」

「コボちゃんみたいなカワイイ絵柄でヤミ金ウシジマくんみたいなストーリー展開」

「あまりにも展開が残酷すぎて読めない」

 

と、いうわけで僕も興味をもって読んでみたのだが、読後感は上とは随分違う。

個人的にはギャンブルの恐ろしさを見事に表現した傑作だと思った。

 

なお、連ちゃんパパはマンガ図書館Zにて全巻無料で読めるので、興味がある人は一読してもいいかと思う。
www.mangaz.com

 

人は依存症になると、自分が何をやってるのか冷静に振り返られなくなる

連ちゃんパパのあらすじを簡単にいうと、普通の一般家庭がパチンコにより壊される物語だ。

それまで至極平穏に過ごしていた連ちゃんパパ家族だが、ある日ママがパチンコ狂いとなり闇金にまで手を出し、300万円もの借金をこさえた上で家を飛び出してしまう。

 

初めはママを連れ戻そうと色々画策する連ちゃんパパだが、物語が進むにつれて自分もパチンコの闇に触れてしまい、自分も見事にパチンコ沼へと転落する。

そこからパチンコを打つお金欲しさに冒頭でいうところのクズのような行いを平気でニコニコやるようになってしまう、というわけである。

 

連ちゃんパパはパチンコ打つお金欲しさに劇中にて淡々と笑顔で他人の人生を壊していくのだが、冷静に考えれば分かる通り、これは彼がパチンコの快楽にズブズブにハマってしまったが故の行いである。

この物語を真人間がやっているとみてはいけない。

これはパチンコに脳を完全に支配されてしまった人間の凶行である。

 

依存症というのは誠に恐ろしい。

 

本来、人間は自分で自分をコントロールできるはずなのだが、依存症に陥ると、人は自分の人生のコントロール権がなくなる。

劇中にて、連ちゃんパパは元々かなり仕事熱心で人望にも厚い人物だったという事が描かれているが、そういう真人間もパチンコに脳を支配されたら、いとも容易に良心の呵責なしにクズといわれるような事をやるようになる。

 

この漫画は、依存症になったら人はどういう存在になるのかを非常にわかりやすく描いていると僕は思う。

アルコールやギャンブルを始めとして、私達の社会には危ういタイプの依存症が地獄の門のようにそこかしこに仕組まれている。

 

あなたがもし、その地獄門を開いてしまったら……ひょっとしたら連ちゃんパパのような存在になってしまうのかもしれない。

この物語は、そういう風に読むべきだと僕は思う。

 

連ちゃんパパは、ありえるかもしれない自分の未来の姿なのである。

 

依存症の難しさは、ほとんどの人にはそれを上回る快楽があまりないこと

ギャンブル狂いは見方によっては確かに人生が破綻しているのかもしれない。

が、難しいのはギャンブル自体は相当に楽しいところにある。

 

例えば「熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録」では、なんと106億円もの大金をギャンブルで溶かしたエピソードが出てくる。

106億円……ギャンブルはそれぐらい楽しいのである。

 

依存症の沼から抜け出すのは本当に難しい。

僕がそれを心底痛感したのは、小田嶋隆さんの上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白 を読んだときだった。

 

小田嶋さんは、色々あってアルコール依存症の沼につかってしまい、その後とある精神科クリニックを受診するのだが、そこで主治医に言われる言葉が誠に僕には衝撃的だった。

 

「私は今まで散々勤務医時代にアル中をみてきた。その経験上、アル中は治らないから開業したら診ないと決めた」

「けど、君はインテリだから診てあげよう」

 

いったい何をいってるんだ?正直、読んだ瞬間、僕は何を言ってるのかサッパリわからなかった。

が、しかしその後本を読みすすめるにつれ、これは誠に至言だと思うようになる。

 

アルコール依存症の治療は断酒である。

もう未来永劫、酒を飲むことはできない。

 

酒をやめるとはどういうことか。

 

それは大幅に新たな生活パターンを構築するという事である。

それまで酒が占めていた時間を、別の作業で補填するし、酒の関係で成立していた人間関係も全て一新するという事でもある。

 

生活パターンの再構築……人間関係の一新……ちょっと考えて欲しいのだが、これ、普通の人には絶対に無理である(少なくとも僕には相当難しい)

今までの人生で、一番楽しく、それ中心に回っていた飲酒をキレイサッパリ放り投げ、その代わりに別の活動や人間関係で補填する。

 

これを本当に実行するとなると、相当に強い意志と能力が必要である。

「君はインテリだから診てあげよう」とは「インテリだから他の活動で知的好奇心を満たして、飲酒により得られる喜びを補填できるだろう」という意味だったのである。

もちろん、別にインテリに限らず、別の活動で飲酒を代償する事だって可能だろう。要は。

 

「飲酒以外の他に自分を喜ばせられる何かを、あなたは自分の生活パターンに取り入れて人生を再構築できますか?」

「できないのなら、結局は元の木阿弥ですよ」

という話である。

 

これを冒頭の連ちゃんパパの話を組みあわせて考えると……僕はひどく難しい気持ちになる。

 

実は連ちゃんパパも、作中で何度かパチンコから身を離すことに成功するのだが、結局周りの環境に左右されてパチンコの沼へと何度も落ちてしまう。

沼は一度目よりも二度目。二度目よりも三度目の方が底が深い。

実際、連ちゃんパパも沼にはまる度にどんどんエグくなるが、フィクションとはいえこれは随分リアルだなと僕は思う。

 

1番の楽しみを捨て去った人生は寂しいが、デメリットは特にはない

小田嶋さんはアルコールを絶った人生を「4LDKのなかの二部屋で暮らしているような、独特の寂しさ」と形容している。

自分の人生には、もっともっと面白い部分がある事はわかってはいつつも、それを積極的には選ばない。

そういうものだと足るを知る。

ポスト・アルコール依存症の人生とは、そういうものだというのである。

 

ただ、特にデメリットがあるわけではないという。

考えてみれば、世の中には酒を飲まないで生きている人も数多いるのだから当然っちゃ当然な話でもあるのだが。

 

寂しいが、特段デメリットのない世界を生き続ける。

それを積極的に選びつかみ続けるインセンティブを、自分の人生の中に再構築できた人だけがポスト・依存症の人生を生きることができるのだろう。

 

一つの喜びを捨てて、別の喜びに価値を見出す。

 

これが自分にできるのかを考える度に、僕はパチンコを始めとするギャンブル類には手を出すまいと思うのである。

くわばらくわばら……。

 

 

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【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

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Photo by Dick Thomas Johnson