ステイホームをきっかけに、名だたる芸能人たちが本格的にYoutubeに参入。
いままで「テレビの人」だった存在が、あっというまに「ネットの人」になった。
そんななか、わたしは最近『かまいたちチャンネル』にハマっている。
芸人かまいたちのおふたりの動画だ。
2月に開設し、すでにチャンネル登録者数は50万人以上。
群雄割拠状態のお笑い芸人チャンネルのなかでも、かなり成功しているほうだ。
さて、なぜわたしが彼らの動画に夢中になるのか。
その理由を考えると、わたしがテレビのバラエティ番組を見て笑えなくなった理由、多くの視聴者が「古い笑い」に不快感を示す理由がわかったので、今回はそれについて書いていきたい。
安心して穏やかに笑える『かまいたちチャンネル』
まず、かまいたちチャンネルの動画のなかで、好きな場面をいくつか紹介しよう。
・ステイホーム中、お互いお菓子を送りあって「懐かしい〜!」とはしゃぐ
・利きボケ企画で、いくつかある選択肢のなかから山内さんのボケを濱家さんが当てまくる
・質問コーナーで、ふたりとも自分より相方に高い点数をつける
・生配信中ネコが乱入したり子どもが映り込んだりする(しかもコメント欄は「かわいい」で溢れる)
・「(Youtuberとして有名な)10代の女の子にいろいろ教えてもらうのって抵抗ないんですか」という質問に、ふたりとも口をそろえて「全然ない」「師匠だと思ってる」と即答
もちろん、大前提としておもしろいのは言うまでもない。
一流のお笑い芸人だけあって、ただ会話しているだけでも笑える。
でもこうやって、仲の良さや平和な雰囲気で成り立っているのが、このチャンネルの最大の魅力だ。
とくに声を荒げるわけでも、マシンガントークで畳み掛けるわけでも、頭を思いっきり叩くわけでもない。
ただ会話して、盛り上がって、ふざけあって、それを公開している。
本人たちが一番楽しそう。それがいいのだ。
クラスで仲良い男子が休み時間中ふざけあってて、それを見て笑っちゃう感じとでもいうか。
オーバーな演出も、一方的に笑い者にされる道化もいない。
ガキ大将が取り巻きをからかって起こる笑いとはちがう。
だから、安心して笑えるのだ。
バラエティ番組は「舞台から観客に見せるもの」だった
一方テレビのバラエティ番組は、演者それぞれに役割があり、それを観客に見せていく手法だ。
舞台上には「悪者」や「道化」が必須で、演者もそれを承知したうえで期待されたキャラを演じる。
見ていてわかりやすいように、派手な動きもつける。
観客はそれを、外から眺めて笑うのだ。
ルフィに殴られる敵に「痛そうだなぁ」と同情しないように、舞台上で悪者が攻撃されていても、道化がバカにされていても、観客の心は痛まない。
むしろ「やったれやったれ!」くらいに思ってる。
だって、そういう役割の人だから。
観客と演者はちがう世界の人。
だから芸能人がプライベートで「飲む・打つ・買う」を派手にやっていたとしても、観客はあんまり気にしない。
舞台上で「いい役」を演じてくれればそれでOK。
なんなら、浮世離れしているほうがおもしろくていい。
高級車を持ち主の目の前で壊しても、女性の胸を揉んでも、あくまでそれは舞台上での話。
だから観客は、たいして目くじらを立てていなかったのだ。いままでは。
でも、この令和の時代に、画面内で同じことをしていたらどうだろう。
セクハラ、パワハラは不愉快。
非常識な言動はすぐに炎上。
容姿いじりなんて古いし、LGBTQネタも厳禁。
それなのにテレビをつければ、いまだにそういうネタで笑いをとろうとする人ばかり。
なぜ、観客は、そういう「笑い」を許さなくなったんだろう?
「画面越しだから」で好き勝手が許されなくなった理由
その理由はきっと、わたしたち観客が、いままでは舞台上にいた「特別な人たち」が「ただの同じ人間」だと気づいてしまったからだ。
いまや多くの芸能人がSNSをして日常を発信し、アプリでファンと直接やり取りするご時世。
Youtubeでも、ミリオン歌手やレギュラー番組を持っているタレントたちの動画が、一般人の動画と混ざってランクインしている。
一流芸能人であっても、もう「スター」ではなく、ただの「有名な人」でしかないのだ。
演者が「画面越し」という舞台から降りて一般人の観客と肩を並べるようになったから、わたしたちは「それならとなりにいても無害な人がいい」と思うようになった。
それだけの話だ。
たとえばスタバで読書中、となりの席にいたグループが、バラエティ番組でよくあるような会話をしていたらどうだろう。
「人の容姿を悪く言うなんて聞いててムカつく」
「独身いじりをいまだにやってんのか……」
「先輩が後輩を笑い者にしてるとか聞くに耐えない」
こうやって顔をしかめるんじゃないだろうか。
昔はよかったかもしれないけど、この令和の時代、日常生活でバラエティ番組のノリを持ち込むと確実に「老害」になる。
舞台の上でなら笑えたことも、隣の人がやることだと思うと、全然笑えないのだ。
後輩に無茶振りして困ってるところを見てはしゃぐ先輩がいる会社で働きたいか?
昔から住んでる町内会長を「大御所」として顔色をうかがうお祭りに参加したいか?
不倫をネタにしたり配偶者の悪口を言う大人たちに子どもを引き合わせたいか?
わたしならイヤだね。絶対にイヤだ。
いまだに「自分たちは不可侵の舞台上で演じている」と思っている人たちは、わかっていないのだ。
容姿いじりや年功序列によるパワハラツッコミ、いじめとも言えるドッキリやできないことをあげつらうことが、日常生活ではただの「嫌われる行為」でしかないことに。
わたしたちは無害で穏やかな笑いを求めている
そう言うと、
「規制が厳しくなっておもしろいことが言えない!」
と嘆く人がいるのも知ってる。
でもさ、おかしくないか?
ほとんどの人間は、友だちの頭を叩いたり、容姿をおとしめたり、貧乏をバカにしたりしない。
それでも楽しく飲み会やってるよ?
YoutubeやSNSでみずから身近な存在になっておいて「一般社会とはちがう道徳観、倫理観でやってます!」はちょっとちがうんじゃないかなぁ。
そのくせ、ワイドショーなんかでは「ワタシ一般的な感覚もってますよ」と常識人ぶってコメントするんだからさ。
そりゃ都合がよすぎるよ。
まぁ、SNSでプライベートが明かされやすくなり、神秘性が薄れたのは、多少同情の余地があるのかもしれないけれど。
OLインスタグラマーに100万人のフォロワーがいたり、だれもが知ってるタレントなのにYoutubeの再生回数が1万回いかなかったり……。
もう、演者と観客の垣根はなくなったのだ。
クラスのかわいい子がアイドルになるような時代だしね。
だったら、「となりを歩いてるかもしれない人」として、演者側にも「一般的な感覚」を求めるのは自然な流れだろう。
M-1で「否定しないツッコミ」としてぺこぱが話題になったのも、サンドウィッチマンの好感度がやたら高いのも、「隣人として無害だから」というのがあると思う。
「仲が悪いけど割り切ってやってます。俺らプロなんで」
という人たちより、
「俺ら仲良しだよー! 家族が大事で一般常識あります!」
という人たちのほうが、見ていて安心するし、笑いやすいのだ。
こう思ってるのはたぶん、わたしだけじゃない。
やらせやヒールが存在する大げさな笑いより、和気藹々として心配なく見れる平和な笑いを楽しみたいって人、結構多いんじゃないかな?
日常でさんざんストレス溜まってるのに、画面のなかでもキツイ言葉聞いてたら疲れちゃうもん。
だったら、仲よさそうにふざけあってる動画を観ていたいよ。
だからわたしは、「穏やかな気持ちで安心して笑える場所」を求めて、バラエティ番組ではなくかまいたちチャンネルを見ているのだ。
ちなみにおすすめは、カバンの中身チェック回と、利きボケ回。
作業用にするなら、エゴサしたTweetに反論していく生配信アーカイブが好き。
最後のほう爆笑必至なので、ぜひ。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【著者プロフィール】
名前:雨宮紫苑
91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&
ハロプロとアニメが好きだけど、
著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)
日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち (新潮新書)
- 雨宮 紫苑
- 新潮社
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ブログ:『雨宮の迷走ニュース』
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