スマホ脳という本を読んだ。
スマホ脳(新潮新書) 『スマホ脳』シリーズ
- アンデシュ・ハンセン,久山葉子
- 新潮社
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- 発売日2020/11/18
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筆者の主張を一言でいえば、スマホが人間の集中力をかき乱しまくっており、そのせいで脳が蝕まれるというものだ。
実際、スマホが持っていく私達の集中力は結構凄い。
僕も暇あればスマホを触っている気がするし、電車に乗っていると乗客の90%以上はスマホを触っている。
スマホが人間にとって魅力的な対象物である事は間違いない。
かのスティーブ・ジョブズは自分の子供達にiPadを触らせなかったという逸話があるが、この話とセットで聞くと、違法薬物の売人が自分の販売商品には絶対に手を付けないという話を思い出さずにはいられない。
思い出される、ゲーム脳という言葉
世間のこの本への評価は大絶賛の嵐である。
本原稿を執筆時点でAmazonレビューは585個。評価は☆4.5と見事なものである。
スマホが現代人の脳に悪影響を与えている。
いやまあ、そりゃ与えているだろう。それについては異論はない。
ただ…このキャッチーなタイトルをみると思い出してしまうのだ。
かつてゲーム脳として攻撃された、テレビゲームの事を。
今ではすっかり無かった事のようにされているが、かつてテレビゲームは全ての諸悪の根源であるかのように世間から叩かれまくっていた事がある。
その先陣を切っていたのがゲーム脳という単語だ。
この単語は脳科学者である森昭雄が発端とされている。
彼が2002年に出版した”ゲーム脳の恐怖”という本で、ゲームをやると前頭前野のβ波が低下し無気力状態になるという事例を報告し話題となり、ゲームバッシングへと転用された。
ゲーム脳はゲームの取り扱いに迷った親や教育者に「我が意を得たり」と大々的に受け入れられた事もあり、一時期マスメディアにてハチャメチャに話題になっていた。
が、様々な研究者などから批判され、結局ニセ科学の烙印を押されるに至った。
それと比較すればだが、スマホ脳で書かれている事の多くは比較的科学的なもので、割とまっとうな本ではある。
ただ…スマホが新しすぎるテクノロジーだから、人間の脳を破壊すると言うのは…さすがに”言い過ぎ”だ。
確かに人間は誘惑に弱い。
しかし、人間はそこまで弱い生き物ではない。
むしろ変化に適応するのが異常に上手いといってもいい。
アルコールや違法薬物のような人間のシステムを直接ハックするような構造物を体内に接種するのならまだしも、たかだか手のひらサイズの箱が人間の脳を根本から壊せるだなんて、ちょっと夢見がちすぎである。
多くのゲーマーが成長して社会人になったらゲームに見向きもしなくなったのと同様、スマホも今はみんなが熱中しているが、数十年もたてばみんな今ほどには熱狂していないと考えるのが妥当だろう。
悪そうなものでも、仕組みを理解できれば良い使い方もできる
ことわざに「馬鹿とハサミは使いよう」というものがあるが、ようはゲームもスマホそんなもんである。
実際、ゲームでいい影響を受けた人は多い。
桃鉄で46都道府県の正確な位置と名産品を覚えたり、信長の野望で戦国時代オタクになった人も多いだろう。
最近ならリングフィットアドベンチャーで健康になった人が続出したのもいい例である。
だからスマホも提供する側と受け入れる側が上手に適応してゆけばいいのである。
今すぐには難しいかもだが、時間と人の善意がそれをゆっくりと成し遂げるのは間違いない。
ただ…ゲームが一部の人を異常なレベルで熱狂させられるのは事実である。
そしてスマホもそれと無関係ではない。
その秘密には、学ぶべき事は多い。
いったい人はゲームやスマホの何に夢中になるのだろうか?
その鍵はドーパミンという脳の化学物質が握っている。
ドーパミンは期待が煽られると出てくる、気持ちよくなるホルモン
ドーパミンは一般的には興奮するホルモンと思われているが、最近の研究によるとそれは不十分な理解で、本質的には「期待」が煽られると出てくる脳の快楽物質なのだという。
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具体例をあげて説明しよう。
ソシャゲのガチャというものがある。
実際には存在していないデータ上のレアカードを引き当てる為に、月に数万~数十万以上も課金する人がいるこのシステムだが、その売上はハンパない。
例えば日本のソシャゲの雄であるFate / Grand Orderの累計売上高は4300億円超である。
これは1986年から続いているゼルダの伝説”シリーズ”やバイオハザード”シリーズ”の合計売上高を上回っているというのだから、ちょっと洒落にならない。
ソシャゲのガチャはコスパが良い
冷静に考えればである。
ヴァーチャルなものにお金をゴリゴリと湯水のごとくぶっ込むだなんて馬鹿げた話である。
だが、単なる馬鹿げたものには4300億円超もの売上を叩き出せない。
その価値が本当にあるかどうかは置いといて、何かはあるのだ。
なぜガチャに重課金する人が後をたたないのか。
その正体がドーパミンである。
実はソシャゲのガチャはドーパミン噴出機であり、あれがドバっと出た時に感じる気持ちよさに、多くの人がズブズブになっているのである。
実際、ソシャゲのガチャでレアカードが出た時の気持ちよさは言葉ではなかなか言い表せない良さがある。
僕の友人は
「ソシャゲのガチャはコスパが良い。お金を投げるだけでこんなに簡単に気持ち良くなれるものは他にはない」
と言っていたが、その人が言わんとする事はわからなくはない。
多くのエンタメは楽しもうと思うと、結構めんどくさいのである。
旅行は…計画しないといけない。
レストランは…美味しくないかもしれない。
恋愛は…成就しないかもしれない。
映画だって…2時間も座ってジッとしてないといけない。
こうして考えてみればわかるけど、エンタメ類は楽しむのにある程度の素養や努力が要る。
けどソシャゲのガチャにそれは皆無だ。
当たるまで引けば…超速で絶対に気持ち良くなれる。
敷居は非常に低く、必要なのはお金だけだ。
指でタップしてるだけで、100%脳に快楽物質を放出できる。
面倒くさいレベルアップとか練習のような手間は一切かからず、誰にも分け隔てなく、絶対に当たりが来る。
そこまで掘り下げて考えてみればである。
こんなお手軽で平等な快楽システム…ちょっと他にはないのである。
FGOの売上4300億円超にはそれなりの合理性がある。
ソシャゲのガチャは最速でドーパミンを放出させる為の、科学技術の粋だったのだ。
ソシャゲのガチャを回している時に感じる不安とドキドキが入り混じった時のあの感覚は本当に勉強になる。
あれがどういう条件下で出るかを逆算して上手に転用できれば…なんだか凄いことができそうに思えてこないだろうか?
脳の報酬系がどう作用してるかを学ぶのにゲームやスマホは非常に有用
ソシャゲのガチャで出るドーパミン量はどしゃぶりの雨だ。
それと比較すると、スマホをちょこちょこ触って出るドーパミン量は小雨のようなものである。
さすがにどしゃぶりの雨を日常生活に転用するのは難しいが、小雨なら実はそこまで難しくはない。というか実は結構多くの人がそれをやってる。
スマホをなんとなく触っている時の感覚を思い出してほしいのだが、私たちは大きな喜びようなものを求めてスマホに毎日定期的にそれなりの時間を費やしているわけ”ではない”。
なんとなくLINEが来てないかなとか。
なんとなく知り合いがFacebookに新しい投稿をしてないかなとか。
自分の投稿にいいね!が付いてないかなとか。
Twitterでトランプ大統領が垢バンされててm9(^Д^)プギャーみたいな面白いニュースが流れてないかなとか。
そういう、ちょっとした新しい何かがあるんじゃないかって思えるだけで、「期待」が煽られてドーパミンは出てきてしまう。
そしてそれが出るのなら…人は大して面白くもないものでも、キチンと毎日定期的にそれなりの時間を費やせたりするのである。
あなたが毎日スマホを触ってるのが、その何よりの証拠である。
面白くなさそうな事を、毎日定期的にコツコツやり続けられてる人は、たぶんドーパミンの小雨を降らせるコツをつかんだのだ。
だから継続して努力できているだけで、勤勉なわけでも真面目なわけでもない。
単に脳のシステムを上手にハックできてるかできてないかの差でしか無い。
だから、あなたもコツコツ勉強したり、本を読んだりといった何かを習慣化させるのは絶対にできる。
スマホを毎日触ってるのが、ほんのちょっと変化しただけの話なのである。
「Evil」かどうかは私達が決める
ある人にとって良い方向に作用したものが、別のある人には壊滅的に悪く作用した。
世の中はそんなものばかりである。
人間にも合う合わないがあるように、世の中、純粋な善や悪というものは極めて稀で、良い面と悪い面が同居するのは普通の事である。
ゲームで人生がぶっ壊れたという人もいる一方、ゲームが自分の人生を作ってくれたという人もいる。
ゲーム自体に善悪の概念はない。
それを使う側と提供する側の信念の問題だ。
Googleの社員たちが非公式ながらモットーとしていた有名な標語に「Don’t Be Evil」というものがある。
この言葉からわかるとおり、新しいテクノロジーを提供する側の責任は重大だ。
世に解き放たれるまで、それがどういう風に働くのかは誰にもわからないのだから、真摯に反応し続ける責務が提供側には求められる。
しかしその一方、提供されたものを使う私達にも、実は強い決定権がある。
人間は本質的に褒めて欲しい生き物である。
世間からバッシングされたい人間はいない。
だから何をすれば褒めてもらえるかは非常に強い意志表示となって、私達の未来を明るくしてくれる。
スマホもたぶん、ゲームのように人間の生活を良い方向に動かせる。
ただ、その方向にいかに素早く舵をきれるかは、私達の姿勢も大切なのだ。
良いものをキチンと評価し、悪いものは評価しない。
そういう小さな積み重ねが、私達の社会をより良いものへと形作っていく。
賢い消費者をやっていく。
そういう胆力が私達にも求められているのだ。
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(2025/3/18更新)
【著者プロフィール】
都内で勤務医としてまったり生活中。
趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。
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noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます
Photo:Marco Verch