去年の10月、動物愛護団体から、ルーマニアで保護された野犬を引き取った。

わたしがクロの飼い主になって、もう1年が経つ。

 

夫が仕事から帰ってきてうれしさのあまりドアに激突するところとか、雷が鳴ると怖くて震えるところとか、夜に歯を磨いているとベッドの上で待っているところとか、もうかわいくてかわいくて。

毎日が幸せだ。

 

さて、「犬の飼い主」として他の人と関わるようになってから、いくつか気づいたことがある。

犬を飼う前は気づかなかったけど、犬連れだとこう思うんだなぁ……という、いわば「犬を飼っていないみなさんへのお願い」だ。

犬を飼っていない人にこそ、ぜひ伝えたい。

 

犬の気持ちを無視して自分勝手に触るのはNG

多くの人は「イヌ」という生き物を、「人に撫でられるのが好きで人懐っこいかわいい生き物」だと認識していると思う。

 

でも、そうではない。

正確にいえば、「そういう犬は多いけどみんながみんなそうではない」。

 

クロは長いこと野犬として暮らしていたからか、臆病で警戒心が強く、「撫でられるのが好きな人懐っこいワンちゃん」ではなかった。

でもまわりの人はそんな事情を知らないわけで、クロの前に屈んで通せんぼしながら撫でようとしたり、飼っている猫のお菓子をあげようとしたり、「お手!」と言いながらクロの前脚を掴んだりする。

 

そういう人には、正直困った。

下の階のご近所さんは初対面のクロの口元をいきなり触り、クロが驚いて吼えると、「あらぁちゃんとしつけしないとねぇ」なんて言ったくらいだ。

(わたしが断ればよかったんだけど、クロに人慣れしてほしかったし、ご近所さんにもクロを受け入れてほしかったから、様子を見てしまった)

 

もちろん、その人がわざとやってるわけではないのも、クロがかわいいのもよくわかる(親バカ)。

でも犬にも個性があるし、わたしたちが何気なくする行為が犬にとって嫌なことかもしれない。

 

犬に触るなら飼い主にひと言声をかけるべきだし、犬と触れ合いたいのであれば、犬にとって嫌なことや正しいあいさつなどをわかったうえでやるべきなのだ。

まぁこれは犬を飼ったからこそ思うことで、わたしもいままでかわいい犬を見かけたら不用意に近づいちゃってたから、相手を責めるつもりはないんだけども。

 

犬は身近な存在だけど無警戒でいいわけじゃない

クロは最初、子どもや自転車、すぐそばを通りすぎる人、あらゆるものによく吼えていた。

しつけ方法を調べて実践したり、ドッグトレーナーをお願いしたりして、いまは問題ないけどね。

 

当時はまだヒトとの生活に不慣れで、すべてが「得体の知れない怖いもの」に映ったのだろう。

「ちゃんとしつけなければ」と神経を尖らせながら散歩するなかで、いかに人間が犬に対して無警戒かを思い知った。

 

ある日、クロが電柱のにおいを嗅いでいると、なにやら叫びながら子どもが駆け寄ってくる。

「クロは人慣れしてないからそれ以上近づかないで! ストップ!」

そう言っても子どもはクロに興味津々で、どんどん近づいてくる。

で、親はといえば、ママ友としゃべりながら、にこやかに見ているだけ。

 

無理やりにでもリードを引っ張って距離を取ったから、幸いクロが子どもに危害を加えることはなかった。

でももしクロが吼えたら? 飛びかかろうとしたら? それに驚いて子どもが転んで怪我でもしたら?

そう考えると、気が気じゃない。

 

自転車だってそうだ。

ベルを鳴らさず、原付バイクよりも速い速度のマウンテンバイクが後ろから通り過ぎるたび、心臓が縮み上がる。

 

犬というのは、夢中になって葉っぱのにおいを嗅いでいたかと思いきや、いきなり全然ちがうものに興味を示してあらぬ方向に走り出すこともある。

いま大人しく道の脇にいたとしても、1秒後もそこにいるとはかぎらない。

クロが突然方向転換して、自転車にぶつかってしまったら?

 

もちろん、不慮の事故が起こらないように気をつけるのは飼い主の役目だ。

子どもが近づいてきたら一声かけるし、自転車が来るなら「待て」をさせて端に避ける。

とはいえつねに全方向を警戒できるわけじゃないし、すぐに犬を連れて安全な場所に移動できるわけじゃない。

 

だから、

「犬はまっすぐ道を歩くはず」

「おとなしくそのままでいるはず」

「飼い主が100%コントロールできるはず」

と、不用意に子どもを犬に近づけたり、ベルを鳴らさず自転車で追い抜いたりしないでほしい。

 

……まぁこれも、犬を飼ってわかったことなんだけどね。

わたしだって、自転車で犬の横を通るとき、毎回特別注意を払っていたわけではないし。

 

でもそれって、危ないことなんだ。本当は。

だから、「良い意味」で、犬に対して少し警戒してもらえるとうれしい。

 

歩きスマホ、スマホ運転はダメ、ゼッタイ。

最後に、一番言いたいこと。

歩きスマホは、絶対にやめてくれ。

 

クロは鼻が長いタイプの子で、散歩中くしゃみを連発したとき、アスファルトに勢いよく鼻をぶつけて流血したことがあった。

クロの出血を見たわたしはパニックで、とにかく帰ろうと方向転換。

しかしクロはもっとお散歩がしたいと血を滴らせながらグイグイと引っ張る。

 

しかたない、ムリにでもとりあえず家に帰らせて……と思っているところで、クロが行こうとしている方向の角から、若い女性が歩いてきた。スマホを見ながら。

その人に気づいてもらおうと、あえて大きい声で「クロ、今日はおうち帰ろうね」と言う。

それでもその人は気づかず近づいて来るので、「もしもし?」と言うもこっちを見ない。

 

ぶつかる!というくらいの距離まで来てはじめて、こっちに気づくありさまだった。

(横はフェンス、もう片方は路上駐車の車に挟まれていたので、わたしも身動きがとれなかった)

 

ほかにも、交差点の角でクロと車が通り過ぎるのを待っていたとき、スマホ運転の自転車が目の前を通り過ぎたことがあった。

角に立っていたわたしたちが急に視界に入ってきて驚いたのか、バランスを崩して車道に飛び出し急ブレーキ。

わたし、結構前から角に立ってたんだけどね。

 

「交通ルールを守るべき」だなんてみんなわかっているはずなのに、「まぁ大丈夫だろう」「ちょっとだけ」「ちゃんと前も見てるし」と、スマホ歩きやスマホ運転しちゃうんだろうなぁ……。

自分だけに被害がある自損事故なら、好きにすればいい。

でも巻き込まれるほうは、たまったものじゃない。

 

道には、犬を連れた人だけでなく、ベビーカーを押している人、車椅子に乗っている人、白杖を持っている人、歩行器を使っている人、いろんな人がいる。

ほんの少しの不注意が、取り返しのつかない大事故につながるかもしれない。

 

歩きスマホ、スマホ運転はするな。しないでくれ。絶対に。

自分が思っているよりもずっと、まわりのことが見えてないから。

 

犬を飼ってはじめてわかった「みなさんにお願いしたいこと」

犬は愛らしい見た目をしているし、人懐っこい子が多いし、パートナーとしてともに暮らすのに最適の動物だ。

 

でも、だからといって、すべての犬が人間に慣れていて、人間が大好きで、よくしつけされているわけではない。

たとえそういう犬であっても、突然走り出したり、なにかのきっかけで噛み付いたりするかもしれない。

 

犬がみんな、つねに、「人間にとって安全なイキモノ」というわけではないのだ。

 

犬を飼う前であれば、他の人の犬を見たら撫でたくなったし、自転車で犬の横を通り過ぎるときもたいして警戒しなかったし、歩きスマホも「危ないなぁ」と眉をしかめる程度だった。

でも実際犬といっしょに外に出てみると、不用意にクロに触る人には困るし、犬に対してまったく注意を払わない人たちが怖いし、交通ルールを守らない人がいるとひやりとする。

 

大切なパートナーだからこそ、犬が、クロが、だれかを傷つけてしまったり、傷ついたりしてほしくないから。

 

もちろん、そうならないように最善を尽くすのは、飼い主であるわたしの義務だ。

できるかぎりまわりに気を配り、しつけをする努力を怠るつもりはない。

 

でもつねに、最初から完璧にできるわけではないし、こっちが気をつけているだけじゃどうにもならないこともある。

だから、新米飼い主として、今日お伝えした3つを少しだけ頭の隅に置いておいていただけると、うれしく思う。

 

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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(2025/6/2更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

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