「宇宙船サジタリウス」のラナって改めて観るとすげーちゃんとした大人だったな…って話をします。
皆さん、子どもの時好きだったアニメや漫画や小説を、大人になってから改めて見返してみた時、昔とまるで違う感想や印象を持ったことってありませんか?
古いコンテンツを漁るのが好きだからということもあるんですが、しんざきにはちょくちょくそういうことがあります。
成長なのか老化なのかは微妙なところですが、やはり感受性というものも年を経ると変質するものでして。
子どもの頃と大人になった今では、コンテンツの見え方、受け取り方というものもだいぶ変わってきます。
うっかりすると180度変わったりします。
例えば、制作側の事情が分かってきて、昔は気付かなかった「無理やりなつじつま合わせ」や「予算不足によるカット」に気付いてしまったり、だとか。
昔は気にならなかったご都合展開が気になったり、「宇宙空間で平面的な艦隊戦やるのおかしくないか?」と疑問を持ってしまったりだとか。
これは、どちらかというと「昔楽しめていたコンテンツが(昔程には)楽しめなくなる」部類の変化です。
一方逆に、「昔楽しめなかったコンテンツが今は楽しめる」という体験をすることもあります。
子どもの頃はそんなに好きではなかったキャラクターが、実は味のある人だということに気付いたり。
昔は気付かなかった作者さんの工夫やオマージュに今更気付いたり、意味が分からなかったシーンが解釈できるようになって滅茶苦茶面白く感じたり、といったものが代表的なパターンです。
結構、「子どもの頃好きだったコンテンツのたな卸し」って面白いんですよ。
自分の感性の変化度チェック、というような意味合いもあります。
で、そんな「コンテンツの印象の変化」の中でも頻度が高めなものとして、「大人のキャラクターに対する印象の変化」というものがあります。
特に多いのは、「あれ、この人、子どもの頃はかっこいいと思ってたけど、実は意外とダメな大人なんじゃあ……?」というヤツです。
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子どもの頃、大人って基本的に「謎」な存在だったんですよね。
大人に対する解像度が低かった。
だから、「大人のキャラクターが、どんな意図をもってそういう言動・行動をしているのか」ということが良くわからなくって、なんとなく「ミステリアス」という程度に四捨五入して流してしまっていた。
一方、自分が実際に大人になってみて、「大人」という存在の解像度が上がってくると、大人には何が出来て何が出来ないのか、というのがイヤでも分かるようになるから、「大人の行動」というものも段々読解出来るようになってくる。
そうなると、制作者さんがどういう意図で「大人」を描いているのか、も分かるようになってきます。
となると、「いや、理屈は分かるけど、なんでそこでそういう態度とるの?」ということが気になっちゃうこともあるんですよ。
最近分かったんですが、私に関する限り、その「気になるポイント」って「どれだけきちんとコミュニケーションが出来ているか」というところにあるようなんです。
ちょくちょくあるじゃないですか、主人公に対してなんか思わせぶりなことを言ったり、謎めいたヒントをくれたり、推理もので何かに気付いた描写があって、「……いや、けど今はまだ推測に過ぎない」とか言って自分の推理をほのめかしだけで退場しちゃうキャラとか。
昔はそういうキャラ、「ミステリアスでかっこいい」枠に分類してたんです。
情報量や洞察力で一歩主人公をリードするジョーカー的存在。かっこいいですよね。
しかし、今改めてそういったコンテンツに触れてみると、「なんだこいつ全然ホウレンソウ出来てないやんけ」とか考えてしまう訳なんですよ。
そこでせめてもう一言意志疎通してれば、この後の悲劇防止出来たじゃん!!とか。
お前いつもは自信たっぷりのキャラじゃん、なんでそこだけ遠慮して「いや、今は話すべき時ではない」とか言っちゃうの!?とか。
お前の能力があれば情報共有して知識を冗長化しておくことの重要さ分かるでしょ!?とか。
開示しよう!情報共有しよう!!!
いやまあもちろん、シナリオ上の都合があることはよくわかるんですけどね。
とはいえ、子どもの頃は「ミステリアス」の一言で納得していたキャラクターが、大人になって「単に意志疎通が足りてない人」に見えてしまう、というケースがままあることは事実と言わなくてはいけません。
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ところでちょっと、すげー古いアニメの話をしてもいいでしょうか。
「宇宙船サジタリウス」っていうんですけど、1986年くらいのアニメだから、もう35年も前ですね。
皆さんご存知ですか?宇宙船サジタリウス。
宇宙もののSFなんですけど舞台設定が妙に庶民的でして、主人公が宇宙の輸送会社で働く中年サラリーマンたちなんです。
「どこから見てもスーパーマンじゃない」っていう主題歌の歌詞がそのまんま当てはまる、「ヒーロー」では決してない等身大のキャラクターたちが、宇宙をまたにかけて活躍したりしなかったり。そんなアニメです。
当時、アニメの主人公といえば「少年・少女・ヒーロー」が普通だった中、「零細企業の妻子持ち中年サラリーマン」が主役だったこの作品。
相当異色だった筈なんですが、妙な面白みがありまして、動物を戯画化したようなキャラクターの可愛さもあって、当時かなり人気が出たように記憶しています。
「ドラえもん」の直後に放送してたんでしたっけ。
しんざきは子どもの頃からゲームばっかりの人間でして、アニメについては片手の指で数えるくらいのタイトルしかちゃんとは観てないんですが、何故か「巨神ゴーグ」と「宇宙船サジタリウス」の二作だけは最初から最後まで観て、妙に記憶にはっきり残っているんですよ。
で、最近ちょっと機会がありまして、宇宙船サジタリウス見返しまして。
やっぱり当時からするとすげー印象変わるなーと。
特にキャラクターについての印象が物凄く変わるなと。
このアニメの主要キャラクターの中に、「トッピー」と「ラナ」というパイロット二人組がいます。
トッピーがサジタリウスのメインパイロットで、真面目で責任感が強いキャラクター。
ラナはトッピーの相棒で、不平屋で現実主義なキャラクター。
トッピーは犬っぽい、ラナは蛙っぽいデザインでした。
このトッピーとラナが、時にはブラック企業的な上司の下で苦労したり、大企業との軋轢に悩まされたり、生活苦の為に日雇いの副業をしたりしながら、色んなトラブルに巻き込まれつつそれを解決する。
一話の筋立てからして「月面のトイレ修理から帰ってきたばかりのトッピーとラナが、落ち着く間もなく人探しに飛ばされる」「子どもの出産に立ち会えなかったトッピーが船上で出産の連絡を受けるところで引き」という、サラリーマンの悲哀全開のシナリオなんです。
展開の中心は「生活のためにキツい仕事でも無理やり受けるサジタリウスの面々」というものだとはいえ、「責任感を持って、無茶な仕事でもなんだかんだいって真面目に片付けようとするトッピー」と、「文句が多く利己的で、ちょくちょく逃げ出すラナ」というような、ややラナが作劇上の割りを喰った描写が多めです。
で、やはり子どもの頃は、「トッピーが頑張ってるのにラナは文句ばかり」みたいな、ラナに対するマイナス評価をやや強めに持っていたんですが、改めてみると全然印象が違いまして。
コミカルな描写をされてはいるものの、ラナ滅茶苦茶ちゃんとした大人だなーと。
例えば、とある回で「なかなか仕事をとれずに悩んだトッピーが、リスクに目をつぶって仕事を受けたことに、ラナが激怒して会社を辞める」という展開があります。
この時も、当時は「会社が苦しいからトッピーが頑張ってるのに…」とトッピー寄りに観ていたんですけれど、今見ると「事前に分かっていたリスクを、トッピーが仲間たちに開示していない」だとか、「仲間に相談していれば引っかからなかったであろう詐欺に引っかかっている」だとか、責任感が故に一人で背負いこんでしまって裏目に出ちゃってる描写がちょくちょくあるんですよ。
「トッピー、ちゃんとホウレンソウしよう……」と思うところ大でした。というか昔の印象よりもトッピーがだいぶダメな大人に見えるし、「責任感はあるんだけど、総合してみるとダメ寄りな大人」としてちゃんと描写されていることに気付く。
一方、ラナにはとにかく「意図をごまかさない」「思ったことは全部言う=情報共有をちゃんとする」という面が強く、普通なら言いにくそうなことでもガンガン言うし、弱音も文句もガンガン吐くんですよ。
とにかく自分を飾らないし、ストレートに自分の要求を表に出す。
利己的で扱いにくい部分もあるんですが、コミュニケーションはすごーく密にしてるんですよね、ラナ。
上記でトッピーに対して激怒した展開も、今見れば「情報を開示しない仲間に対する問題指摘」としてはもっともです。
ちょくちょく危険から逃げ出す描写も、そもそも仕事とは関係ない部分でのトラブルだったりして、「家族の為にも死ねない」というのは7人の子どもを育てる父親として当然あるべき態度だとしか言いようがありません。
ラナが仕事上の問題点やリスクを指摘する場面もままあり、「ラナ滅茶苦茶ちゃんとした職業人じゃん……!!!」と印象が変わりまくりました。
そんな中、仲間が本当に命の危険に直面した時は、なんだかんだ損得抜きで駆けつける熱さも持ち合わせている。
ラナ偉い。皆さんラナのヤバさをもっと知るべきだと思います。
これ以外にももちろん宇宙船サジタリウスには等身大のキャラが多数出ていまして、トッピーやラナと一緒にサジタリウスの乗組員になるジラフだとか、ジラフと結婚するアン教授なんかもいい味出しています。
アン教授も、今観ると相当扱いにくそうな人で、そういう部分が隠されずにちゃんと描かれているところも凄い。
一方シビップが実は女性だった展開は当時も衝撃でした。
「大人に対する解像度が上がったことで、当時は狂言回し扱いされていたキャラクターの味が分かった」という話でした。
子どもの頃観たアニメを観直してみるの、いかがでしょう?楽しいですよ、結構。
あと、全然関係ないんですが、子どもたちのクラスにどうも「妙に古いコンテンツ好きの親御さんがいるご家庭」があるらしくって、その子の家のDVDボックスを借りて皆で観たりすることがあるようで、「何で今それ!?」という名前が出て混乱することがあります。
この前は「友達とコナン観た」というのでてっきり名探偵コナンかと思って、よく聞いてみたら未来少年コナンだったりしました。マジかよ。
今日書きたいことはそれくらいです。
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【著者プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
Photo by Brian McGowan