まずは「器」づくり

「成長」とは何かを定義せよと問われたら、あなたはどう定義するでしょう。

私の定義のひとつは「成長とは自分を3方向に伸ばすこと───広げる・高める・深める」です。

 

自分を3方向に伸ばすことで、自分という「器」が大きくなります。

仕事というのはその取り組みを通して、自分を広げてくれたり、高めてくれたり、深めたりしてくれますから、まさに自分という「器」づくりをする恰好の機会といえます。

 

そして「器」に何を満たしていくか

私たちは学校に入ってまず、ひらがな・カタカナを覚えます。そして掛け算の九九を暗記します。

そうやって知識や技術といったものを自分に蓄えていきます。

蓄えるとは、自分という「器」を満たしていくことです。

 

私たちのまわりには「あの人は引き出しが多いね」と言われる人がいます。

直面する状況に合わせて過去の成功法をいろいろ持ち出してきてくれたり、突破の手がかりとなる人脈を紹介してくれたり。

相談を持ちかけても、あの手この手の助言を経験から教えてくれたり。そうした引き出しの多い人は、実は背後に持っている「資産ストック(蓄積)の器」が豊かだといえます。

では「資産ストックの器」を豊かにするとは具体的にどういうことでしょう。

能力的資産の観点からは、「情報を集める」「知識を覚える」「技術を積む」「経験・知恵を蓄える」といったことでしょう。また、物的資産として「財貨を貯める」。人的資産としては「人脈を築く」「信頼を重ねる」があげられます。さらに心的資産としては「意志を保つ」「品性・徳を湛える」です。

 

私たち一個一個は生物的に生きる動物です。その動物が、かけがえのない一人の人間になるために、自分という器に何を満たしていくか。これは生涯にわたる大きな挑戦です。

 

「器」に満たしたものを「分けてあげたい」という利他の心

さて、器にいろいろなものを満たしたとき、私たちはそれを自分だけのものとして閉じてしまっていいものでしょうか。

たいていの人は、それを他の人にも分けてあげたいという心がわいてくるのではないでしょうか。

むしろ自分が蓄えたり、溜めたりしたものを他者に提供することで、さらに返ってくるものが増え、結果的に器の中身はより濃厚になるでしょう。

 

働くことを通して、自分という「器」をこしらえる。そして「器」を満たす。

さらには、満たしたものを他に分けてあげる。

これらの作業プロセス自体が「仕事の喜び」といえるのではないでしょうか。

現下のコロナ禍において、こうした仕事の喜びが奪われている職業の方々に対し、深くご同情申しあげます。

また、医療現場で奮闘される方々におかれましては、社会が「器から分ける」ことばかりを強いている現状を申し訳なく思います。

心より感謝申しあげます。いずれにせよ、すべての働く人たちが、器をつくり、満たし、中身を分けてあげる喜びを求められる平時が、一日でも早く戻ってくることを祈ります。

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(執筆:溝口 聖規)

 

 

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3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
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・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

グロービス経営大学院

日本で最も選ばれているビジネススクール、グロービス経営大学院(MBA)。

ヒト・モノ・カネをはじめ、テクノベートや経営・マネジメントなど、グロービスの現役・実務家教員がグロービス知見録に執筆したコンテンツを中心にお届けします。

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Photo by Mateus Campos Felipe