会議に出席するとよく、「なんか言っているようで、何も言ってない発言」を耳にします。

例えばこんな感じです。

 

この手の話題では、あの有名な

「今のままではいけないと思っています。だからこそ日本は今のままではいけないと思っています」

という発言を想像する方も多いかもしれません。

(出典:ANNnewsCH

ただ、冒頭の「何も言ってない」と、上の政治家の発言とは、若干異なります。

事実、「ユーザーのニーズを捉えて、適切に施策をうつべきですよね」という発言は「正しい主張」であり、意味不明ではない

 

それにもかかわらず、なぜ「何も言ってない」とみなされるのか。

それは「当たり前すぎる話で、何の意見も入ってない」からです。

 

 

昔、上司に、仕事のトラブルを相談してたプロジェクトメンバーがいました。

その時のやり取りが、こんな感じでした。

 

「すいません、ちょっとお客さんと揉めてしまって……アドバイスもらえないでしょうか。」

「どうしました?」

 

「かなり前に検収を終えたのに、今になってここが仕様通りになってない、と言ってくるんです。」

「対応できる?」

 

「わかりません。エンジニアに聞かないと。ただ、そもそももう検収を終えてるんですよ。基本「追加料金いただきます」と返していいはずですよね?」

「お客さんファーストでね。」

 

「えー……ということは、無料で改修に応じるってことですか。」

そうはいってない。ただお客さんにとって何が一番か、よく考えて。

 

(???……どっちなんだ……!(困惑))

 

 

この上司の発言が、「何も言ってない」のは明らかです。

「お客さんにとって何が一番か、よく考えて。」は、会社の理念に書かれるほど、反論のしようのない、当たり前のことです。

 

でも、個別の事態に必要なのはそんな一般論ではありません。

リスクとデメリットのついて回る、「判断」です。

 

要するにこの上司は「リスクを取って主張することから逃げている」。

だから、「何も言ってない」とみなされるのです。

 

 

コンサルタントをやっているとき、この手の発言をする人をよく見ました。

 

「何が良いのかは目的によりますね」とだけ言う人とか。

「議論が必要ですね」とだけ言う人とか。

「検討を重ねましょう」と言って、何もしない人とか。

 

いや、コンサルタントたちの中にも、このような発言をする人がいました。

大体、お客さんから「何言ってんのかわかんない」とか「どうすればいいのか、はっきり言ってくれない?」と、怒られてましたけど。

 

もしかしたら、政治家がこんな感じだから、みんながマネするのかもしれません。

 

もちろん、私見を発するのは、リスクを伴います。

反対されたり、馬鹿にされたりするわけです。

 

でも、私はコンサルタントの上司に言われました。

「選択肢を並べるだけだったら、バカでもできる。「私はこれを推す」を言いなさい」と。

 

ピーター・ドラッカーも「事実ではなく、意見からスタートせよ」と言います。

成果をあげるエグゼクティブは、意思決定は事実を探すことからスタートしないことを知っている。誰もが意見からスタートする。このことに不都合はまったくない。

一つの分野に多くの経験をもつ者は当然自らの意見をもつべきである。一つの分野に長い間関わりながら自らの意見をもたないのでは、観察力と姿勢を疑われる。

 

人は意見からスタートせざるをえない。最初から事実を探すことは好ましいことではない。すでに決めている結論を裏づける事実を探すだけになる。

見つけたい事実を探せない者はいない。統計を知る者はこのことを知っており、したがって数字を信じない。彼は数字を見つけた者を知っているために、あるいは見つけた者を知らないために、数字に疑いをもつ。

 

したがって、現実に照らして意見を検証するための唯一の厳格な方法は、まず初めに意見があること、またそうでなければならないことを明確に認識することである。

 

リスクを取って意見を言わない人は、会議に参加する価値はない。

そのように言われるのは、必然なのです。

 

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
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(2025/6/2更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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