会議に出席するとよく、「なんか言っているようで、何も言ってない発言」を耳にします。
例えばこんな感じです。
— Yukiya Sasaki@MD, Psychiatrist (@YukiyaMEDICAL) March 30, 2022
この手の話題では、あの有名な
「今のままではいけないと思っています。だからこそ日本は今のままではいけないと思っています」
という発言を想像する方も多いかもしれません。
(出典:ANNnewsCH)
ただ、冒頭の「何も言ってない」と、上の政治家の発言とは、若干異なります。
事実、「ユーザーのニーズを捉えて、適切に施策をうつべきですよね」という発言は「正しい主張」であり、意味不明ではない。
それにもかかわらず、なぜ「何も言ってない」とみなされるのか。
それは「当たり前すぎる話で、何の意見も入ってない」からです。
*
昔、上司に、仕事のトラブルを相談してたプロジェクトメンバーがいました。
その時のやり取りが、こんな感じでした。
「すいません、ちょっとお客さんと揉めてしまって……アドバイスもらえないでしょうか。」
「どうしました?」
「かなり前に検収を終えたのに、今になってここが仕様通りになってない、と言ってくるんです。」
「対応できる?」
「わかりません。エンジニアに聞かないと。ただ、そもそももう検収を終えてるんですよ。基本「追加料金いただきます」と返していいはずですよね?」
「お客さんファーストでね。」
「えー……ということは、無料で改修に応じるってことですか。」
「そうはいってない。ただお客さんにとって何が一番か、よく考えて。」
(???……どっちなんだ……!(困惑))
この上司の発言が、「何も言ってない」のは明らかです。
「お客さんにとって何が一番か、よく考えて。」は、会社の理念に書かれるほど、反論のしようのない、当たり前のことです。
でも、個別の事態に必要なのはそんな一般論ではありません。
リスクとデメリットのついて回る、「判断」です。
要するにこの上司は「リスクを取って主張することから逃げている」。
だから、「何も言ってない」とみなされるのです。
*
コンサルタントをやっているとき、この手の発言をする人をよく見ました。
「何が良いのかは目的によりますね」とだけ言う人とか。
「議論が必要ですね」とだけ言う人とか。
「検討を重ねましょう」と言って、何もしない人とか。
いや、コンサルタントたちの中にも、このような発言をする人がいました。
大体、お客さんから「何言ってんのかわかんない」とか「どうすればいいのか、はっきり言ってくれない?」と、怒られてましたけど。
もしかしたら、政治家がこんな感じだから、みんながマネするのかもしれません。
かかしでも立たせとけ pic.twitter.com/rYpV9V4EUQ
— 野村 純 (@kagimurajun) March 23, 2022
もちろん、私見を発するのは、リスクを伴います。
反対されたり、馬鹿にされたりするわけです。
でも、私はコンサルタントの上司に言われました。
「選択肢を並べるだけだったら、バカでもできる。「私はこれを推す」を言いなさい」と。
ピーター・ドラッカーも「事実ではなく、意見からスタートせよ」と言います。
成果をあげるエグゼクティブは、意思決定は事実を探すことからスタートしないことを知っている。誰もが意見からスタートする。このことに不都合はまったくない。
一つの分野に多くの経験をもつ者は当然自らの意見をもつべきである。一つの分野に長い間関わりながら自らの意見をもたないのでは、観察力と姿勢を疑われる。
人は意見からスタートせざるをえない。最初から事実を探すことは好ましいことではない。すでに決めている結論を裏づける事実を探すだけになる。
見つけたい事実を探せない者はいない。統計を知る者はこのことを知っており、したがって数字を信じない。彼は数字を見つけた者を知っているために、あるいは見つけた者を知らないために、数字に疑いをもつ。
したがって、現実に照らして意見を検証するための唯一の厳格な方法は、まず初めに意見があること、またそうでなければならないことを明確に認識することである。
リスクを取って意見を言わない人は、会議に参加する価値はない。
そのように言われるのは、必然なのです。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
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