仕事において、『こまったちゃん』化しやすい人の特徴がいくつかある。
そのなかの一つが、「ちょっとしたダメだしにも、すぐに怒りで噴き上がってしまう」ことだ。
もう少し説明的に言えば、「自分へのダメだしを冷静に受け止めることができない」という特性を持つ人は、職場の悩みの種になりやすい。
その批判の正しさには関係なく、こういう人は、
「でも、あなたも悪いですよね(怒)」とか。
「私は誤解されてます(怒)」とか。
「私のことを嫌いなんですね(怒)」とか。
論点をすり替えてでも、必ず反論をしてくるからだ。
男性にも女性にもいるし、クライアント先で、あるいは同僚で、こういう人を数多く見てきた。
すぐにばれるウソをつく
この「ダメだしを冷静に受け止めることができない」という特性は、周囲をとても困らせる。
彼らは「ダメだしされた!」と思った瞬間に、頭がわいているので、冷静に話ができず、論争になってしまう。
こちらが「あなたに困っている。一考してもらえないだろうか」と述べたいだけなのに、
私のせいじゃない!
私は悪くない!
ひどい上司(会社)だ!
と噴きあがられても、こちらも困る。
繰り返すが、ダメだしはまず一度、「私たちはあなたに困っている」という事実をよく受け止めて、考えてほしいだけなのだ。
怒ってしまっては、何も話ができないではないか。
「怒りは、問題解決の役に立たない」。
怒りは、敵に利用されやすく、衝動的、近視眼的で、思慮が浅く、真実から目を背けさせ、常に過剰だ。
心理学者のスチュアート・サザーランドに言わせれば、「怒りや恐怖など強い感情にとらわれると、私たちは愚かな行動に走りやすい」。
要するに、怒っているとき、人はバカになっている。
そのため、こういう人は批判されると「すぐにバレるウソをつく」傾向にある。
「ちゃんと連絡しました」(してない)とか。
「説明したはずです」(してない)とか。
「メッセンジャーに書きました」(書いてない)とか。
まわりの人は、もうその人に関わりたくないから、
「そうでしたね」と言ってくれるが、本当は皆、その人が何もやっていないことをわかっている。
こうなると、「いや、もういいよ」という形で、その人に何かを言う人はどんどん少なくなっていく。
しまいには、重要な仕事からはすべて外されて、「はい、おしまい」だ。
言い方に気を付けてもムダ
私は、こういう特性の人物には、「言い方に気を付ければ、何とかわかってもらえるのでは」と思ったときもあった。
「あなたが悪いわけではないのですが」という枕詞を付ける。
「私の責任ですが」と述べてから切り出す。
「本当に申し訳ないのですが」と嘆願してみる。
だが、全部ダメだった。
「あなたは悪くない」を本気にしてしまうのだ。
いや、むしろ本気で
「いやいや、大丈夫ですよ」
とか、逆にこちらをなぐさめてくる、まである。
彼らに婉曲的な表現は、通用しない。
「私がいないと困るでしょう?」と、絶対に言わせない
と、ここまで散々書いてきたが、「ひょっとして私のこと?」と思った方もいるかもしれない。
断じて言う、違う。
あなたのことではない。
これをよんで、「自分のことでは?」と思うような鋭敏な感覚を、彼らは持ち合わせていない。
「自分の気持ちには、とても敏感、他者の気持ちには、とても鈍感」
というのが、彼らのデフォルトだからだ。
彼らに「気づきを与えて、変わってもらう」という手法は通じない。
追い出せればよいのだが、そうもいかないケースも多いだろう。
では、どうするべきなのか。
まず、部下がそういう人物のとき。
もし特殊技能を持つなど、役に立つ人物なら、短期的にはまず彼の悪影響がほかの人に及ばないようにすることだ。
できるだけ、他の人と関わらせないように、いわゆる「隔離」を行う。
困っている人も多いだろうから、みんな、喜んで協力してくれるはずだ。
だが、その人の代替となるような機能は、他に探しておかねばならない。
それは「代わりの社員」であったり、「システム」であったり、「外注」かもしれない。
こういう人は、仕事を抱え込んで秘匿し、自分の存在感を出すタイプも多いので、とにかく「私がいないと困るでしょう?」と、絶対に言わせない準備をしておくことが肝心だ。
そして、そういう人がやっていた業務を見直すと、たいていの場合
「別にやらなくてよかったことだった」
「コストばかりかかっていて儲かっていなかった」
「お客さんも嫌な思いをしていた」
と言ったことが発覚し、後から振り返ると、「なーんだ、別にどうってことなかったわ」と一件落着する。
決して怖がる必要はない。
業務改革のつもりで取り組んでしまえば、そのうち笑い話になる。
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では上司や経営者がそういう人物のときは?
これも簡単だ。
そういう会社からは次々と人が去っていくので、「まっとうな先輩・同僚」が辞めてしまった時点で、一緒に辞めてしまうこと。
大人になってから、このような特性は、ほとんど変わらない。
彼を変えるのは、無駄な試みだし、人生の一部を使うに値しない。
転職活動に時間を使うほうが、100倍マシなので、思い切って外の世界をみよう。
絶対にいいことがある。
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【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
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