本日の議題はこちらです。

「チームに無能がいた場合、そのメンバーを見捨てるのが最善か」

 

実は以前もこのテーマで書こうとしたのだが、うまくまとまらずにボツにしていた。

しかし先日、当サイトで『「どうにも成長しないし、意欲も低い部下」をどうすべきか?』という記事が公開されたので、この記事と合わせてふたたび書いていきたいと思う。

 

記事を要約すると、

 

・管理職にとっての悩みは、向上心がなく、能力が低く、素直でない部下の扱い

・管理職には育成の義務があるとはいえ、大事なのはチームの目標達成

・教育の費用対効果が合わない人の育成優先度は落としてもいい

・問題児はそもそもその仕事に向いていないケースが多いので、当てにしない、成長に期待しない、その人に時間を使わないのが最適解

・採用失敗の責任は人事と経営者がとるべきなので、あとはその人たちに任せればいい

 

ということだ。

 

記事の最後は、こう締められている。

「今の職場」で仕事ができなかったとしても、何か別の仕事に適性があるケースは多い。

技術者志望だけど「営業をやったほうがいい」というケースや、「デスクワークより肉体労働のほうが向いているのでは」というケースもあります。

だから、一企業の中だけで考えなくてもいいのです。

中小企業で用意できる仕事は限られています。それを告げて、社外でその人が向いている職業を早く見つけてくれるのを祈りましょう。

部下と、そして管理職の両者がメンタルをやられる前に、さっさと

「うちの会社では君にやらせることができる仕事がない」

といえるほうが、望みのない成長に希望をつなぐよりも、幾分かマシです。

人が集まれば当然、適正が低い人もいるだろう。

 

他の人と比べて、同じ時間でも学ぶ量が少なく、それをカバーする熱意もなく、上を目指す意欲にも欠け、そのくせそれを悪びれない人……ざっくりいえば、「無能」である。

 

こういう人を一人前にするために時間や労力を使っても、たいてい報われない。

だから、「適正のあるところでがんばれよ」と放っておくのは、まっとうな着地点だと思う。

 

しかし残念ながら人間関係はむずかしく、「無能を排除した結果、チームが瓦解する」なんてことも起こりうるのだ。

 

向上心が低くヘタクソなチームメンバーをクビにした結果

とあるゲームで、とてもうまいフレンドのAさんと遊んだ時のこと。

Aさんはプレイヤー企画の非公式大会に向けたチームのリーダーをしていたのだが、どうやら大会前に解散したらしい。

 

何気なく事情を聞いてみると、なかなかヘビィな答えが返ってきた。

 

・Aさんのチームには問題児Bさんがいた

・Bさんはプレイスキルが低く足を引っ張っているうえ、急に練習を休む

・注意したが改善されず、チームに悪影響があると判断し、「ちがうチームでがんばってほしい」と除名

・その後、チームメイトの一部はAさんの判断を支持したが、一方で反発の声も上がった

・Bさんの処遇をめぐり派閥が生まれ、チームは解散

 

それを聞いて、Aさんに「除名する前にみんなに相談しなかったの?」と聞いてみた。

「それも考えたけど、裏で『Bさんを除名するか』って話し合うのはいじめみたいだし、多数決でBさんの残留が決まったら、除名賛成の人に『じゃあ自分が抜ける』って言われる可能性も考えてさ……」

 

と、相談しなかった理由を答えてくれた。

なるほど、難しい問題だ。

 

「たしかに、メンバーに個別に意見を聞いても収拾がつかなくなりそうだし、『Bさんを許すか』って踏み絵をするようなものだから気が進まないよね」

「そうなんだよ」

「それなら、リーダー権限で除名は正しかったと思う」

「自分としては、Bさんは明らかに足を引っ張ってたから、これで丸く収まると思ってたんだけど……」

 

しかし結果は、そうはならなかった。

 

「次クビにされるのは自分かもしれない」というプレッシャー

許容範囲は、人によって大きくちがう。

 

除名に関して、「Bさんのやる気ない態度に腹が立っていた、決断してくれてありがとう」と言う人がいる一方で、「できない人をフォローするのもリーダーの役目では? Bさんなりにがんばってたのにかわいそう」と言う人もいたらしい。

 

Bさんをかばう人がいることに驚きつつ、Aさんは自分の考えを丁寧に説明。

しかし一度生まれた亀裂を修復できず……。

 

そんな状況で、とあるメンバーから、「自分も除名される可能性はありますか」と聞かれたらしい。

これにはAさんも慌てて、「君はちゃんとやってくれてるから問題ないよ!」と返したそうだが、その「ちゃんと」の基準はリーダー次第で、他メンバーにはわからない。

 

実際Bさんに対して、「自分の期待値以下なので切り捨てます」ってやっちゃってるわけだからね。

結局その人は「自分も足引ってるんで」とみずから抜けることを選び、最終的にそれが引き金となって、チーム解散に至ったとのこと。

 

問題児除名はリーダーにとっても苦渋の決断で、チームにとっていい結果になるだろうと憎まれ役を買って出たわけだが、なんとも残念な結果になってしまった。

 

チームの質を高めるために、足手まといに抜けてもらうという判断

AさんはBさんのために時間をとって、「こうしたほうがいいよ」「ああしたほうがいいよ」といろいろレクチャーしていたそうだ。

 

しかしBさんはアドバイスをもとに自主練するわけでもなく、プレイスキルは低いまま。

練習も時折休んでいたから、「このままでは練習の質が下がってしまう」と除名した。

 

除名に関しても、相手を責めはせず、「方針とは合わないから別のチームでやったほうがいいんじゃないか」という伝え方だったそうだ。

Bさんも「そうですね、すみませんでした」とあっさり抜けたという。

 

考え方としては、冒頭で紹介した記事とまったく同じだ。

向上心がなく、能力が低く、素直でない部下には時間を使わず、「うちの会社では君にやらせる仕事がない」と告げて関知しないほうがいい、というのは、現実的な主張に思える。

 

しかし悲しいことに、全員がそれを理解し、受け入れてくれるとはかぎらない。

能力の評価と人間関係での評価は、ちがうから。

 

貢献度が低いからクビ=正しい行い、とはかぎらない

チームとは基本的に、なにか目的があって、それを達成するためにメンバーが集まる。だから、目標に対する貢献度で各人の能力を評価しやすい。

そういう意味では、Bさんの貢献度は低く要求基準に達していなかったのだから、除名するのは妥当だろう。

 

しかし人間とは複雑な生き物で、人間関係込みの評価になると、話は変わる。

人間同士が集まると利害関係とは別に、単純な「好き嫌い」がうまれる。さらに、それぞれの許容範囲も大きく異なるから、「付き合いきれないライン」に差があるのだ。

 

たとえば、Bさんがヘタなくせに自主練をしないことに、Aさんは腹を立てていた。

しかしBさんと気が合う人は「フォローしてあげればいいじゃん」と思っていただろうし、Bさんを好きじゃなくとも「自主練するかは個人の自由だから腹が立たない」と考える人もいたかもしれない。

 

また、Aさんにとって「貢献度-10の人は除名、Bさんは−15だ」と思っても、メンバーのCさんは「除名は−30から、Bさんの貢献度は−5くらい」と認識していたらどうだろう。

両者とも「Bさんの貢献度はマイナスだ」と思っているが、Aさんにとっては明確な除名対象である一方で、Cさんにとっては「たったこれだけのマイナスで除名しちゃうの?」という印象になる。

 

Bさんの貢献度がマイナスだったとしても、その事実の受け止め方は人それぞれなのだ。

だから、「貢献度が低いやつをクビにするのは妥当」というのは正論に思えるが、まわりから「正しい行いに見える」とはかぎらないのである。

 

目標への貢献度だけでなく人間関係も加味しないと、統率力が疑われる

なにがいいたいかというと、「能力自体は低くとも、案外まわりの人は気にしていない・受け入れているケース」が存在するということだ。

リーダーには「能力が低いくせにプライドが高く扱いづらい人」でも、ほかの人にとってはイベントごとが好きで同期の誕生日を祝ったり、ポジティブで周囲を励ましたりする「良い人」だったりするしね。

 

リーダーはその責任と立場から、「能力の評価」を重視しがちだ。

「この人は目標達成のためにどれだけ貢献しているか?」と。

 

しかし他の人は往々にして、人間関係をもとに判断をすることが多い。

「この人は自分にとって良い人か?」と。

 

目標達成できなくて一番困るのはリーダーだけど、それほど責任がない人にとっては、「自分が不愉快にならないか」のほうが大事だから。

 

大切なのは、問題児の「目標達成への貢献度」だけでなく、「その人がまわりに与えている影響」も踏まえて処遇を決める必要があるということ。

さらに、「その人を見限ることで、チーム全体の雰囲気や今後のリーダーシップに悪影響がないか」も加味しなくてはいけないということ。

 

「無能を追っ払えば優秀な人が残る」という足し算・引き算的な考えは、人間関係のなかではうまくいかないこともあるから、問題児をどう扱うかの判断はとてもむずかしい。

伸びしろがなさそうな問題児であっても、面倒を見ている感を出したほうが「いいリーダー」に見え、チームメンバーが「みんなでがんばろう」とやる気を出し、最終的にはプラスになる……なんてこともありうる。

 

わたしの実感でいうと、目標達成が困難なレベルの能力ならばその事実を伝え、みんなが「残念だけどそれならしょうがないね」と思えるかたちでチームから抜けてもらう。

しかしそれができない程度の「無能さ」であれば、親切にしつつ損失ができるだけ少なくなるタスクを割り振って、表面上「いいリーダーといいチーム」でいたほうが、丸く収まるような気がする。

 

その人を追放したところで、その人より良い人がすぐ来てくれるって保証もないからね……。

まぁ、能力も低く人間関係のトラブルも多ければ、迷わず切ってしまえばいいのだけど。

 

 

【お知らせ】
「記憶に残る企業」になるには?“第一想起”を勝ち取るBtoBマーケ戦略を徹底解説!
BtoBにおいて、真に強いリストとは何か?情報資産の本質とは?
Books&Appsの立ち上げ・運用を通じて“記憶されるコンテンツ戦略”を築いてきたティネクトが、
自社のリアルな事例と戦略を3人のキーマン登壇で語ります。



お申し込みはこちら


こんな方におすすめ
・“記憶に残る”リスト運用や情報発信を実現したいマーケティング担当者
・リスト施策の限界を感じている事業責任者・営業マネージャー
・コンテンツ設計やナーチャリングに課題感を持っている方

<2025年5月21日実施予定>

DXも定着、生成AIも使える現在でもなぜBtoBリードの獲得は依然として難しいのか?

第一想起”される企業になるためのBtoBリスト戦略

【内容】
第1部:「なぜ“良質なリスト”が必要なのか?」
登壇:倉増京平(ティネクト取締役 マーケティングディレクター)
・「第一想起」の重要性と記憶メカニズム
・リストの“量”と“質”がもたらす3つの誤解
・感情の記憶を蓄積するリスト設計
・情報資産としてのリストの定義と価値

第2部:「“第一想起”を実現するコンテンツと接点設計」
登壇:安達裕哉(Books&Apps編集長)
・Books&Apps立ち上げと読者獲得ストーリー
・SNS・ダイレクト重視のリスト形成手法
・記憶に残る記事の3条件(実体験/共感/独自視点)
・ナーチャリングと問い合わせの“見えない線”の可視化

第3部:「リストを“資産”として運用する日常業務」
登壇:楢原 一雅(リスト運用責任者)
・ティネクトにおけるリストの定義と分類
・配信頻度・中身の決め方と反応重視の運用スタイル
・「記憶に残る情報」を継続提供する工夫

【このセミナーだからこそ学べる5つのポイント】
・“第一想起”の仕組みと戦略が明確になる
・リスト運用の「本質」が言語化される
・リアルな成功事例に基づいた講義
・“思い出されない理由”に気づけるコンテンツ設計法
・施策を“仕組み”として回す具体的なヒントが得られる


日時:
2025/5/21(水) 16:00-17:30

参加費:無料  定員:200名
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
こちらウェビナーお申込みページをご覧ください

(2025/5/12更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

ブログ:『雨宮の迷走ニュース』

Twitter:amamiya9901

Photo by :Nik