ある方から、「悩める新米の管理職にアドバイスを」と言われたので、記事を書くことにしました。

 

はじめて管理職になって一番の悩みは

まず、「管理職になって一番の悩み」となり得るのは何でしょうか。

 

いろいろとあります。

ただ、実のところ最も頭を悩ませるのは、上司との関係でもなく、目標のキツさでもなく、会議の多さでもありません。

「向上心がなく、能力が低く、素直でない」部下です。

「教育の費用対効果が合わない人」と言い換えてもいいでしょう。

 

管理職の仕事の中には、部下を教育し1人前に育てる、というミッションが含まれていることが多いですが、やってみると「この人の成長にかけるコストと、この人が生み出すリターンが見合わない」ケースが少なからずあります。

そしてだいたい、そういう人は社内で「問題児」扱いされているのです。

 

たとえば知人にシステム開発業のマネジャーがいますが、

「(メンバーの)あの人、そもそも技術者向いてないよ」

という話は、いままで何百回聞いたかわからないくらいです。

 

「考えるのが嫌いだといってる」

「同じミスを何回もして、しかも直そうととしない」

「勉強しない」

「そもそも開発に興味がない」

「口ばかり達者で、行動しない」

 

など、まあ、「それはたしかに困るよなあ」という話が掃いて捨てるほど出てくるのです。

 

もちろん、本質的なところで言えば、会社の採用ミスなのでしょう。

しかし、マネジャーにそんなことを言う権利はありません。

会社員である以上、「手持ちのカードで勝負する」ことを求められます。

 

もちろん、こうした事態は営業でも起こります。

よく聞くのは、

「問題児に対処する時間がもったいない。この人の育成の優先度は落とそう

と考える営業マネジャーの話です。

営業は時間の使いかたこそ命ですから、こういう意思決定が出やすいのです。

 

実際、私の経験の中でも、「この人は、知識労働には向いてないよなあ」という人、いました。

 

例えば、「どうすればいいですか?」と毎回聞いてくる人。

まわりにはいくらでも資料があるので、どうすればいいかを、まず自分で案を出してから、それを確かめるために人に聞けばよいのです。

 

あるいは何か頼むと、「無理です」「できません」「客のせいです」を連発する人。

お客さんのせいにせず、仕事しろ、といいたくなります。

 

こういう人に対しても、建前上は「育成の義務」が管理職にあります。

 

でも、管理職だって、とても忙しい。

部門の数字を持っていれば、その人ばかりにかまけているわけに行きません。

優先度は当然、問題児の育成 <<<<< チームの目標達成 なのです。

 

当たり前ですが、管理職は事業を推進させるために存在しているのであって、部下の親や先生ではありません。

まして、教育の専門家でもありませんし、カウンセラーでもありません。

 

そうした重荷を管理職に背負わせる日本企業では「管理職」への期待が大きすぎます。

 

ですから、そもそも無茶を言われているのですから、部下が成長しなかったとしても、そこは優先度を落としてよい場所だと認識しましょう。

成長するかしないかは、なにより、部下本人の責任においてやるべきことですし、そもそも「成長なんてしたくない」という人の方が多いのですから、余計なお世話です。

 

問題児を頑張らせると、ろくなことにならない。

ただ、往々にして、責任感の強い人は、こう言うかもしれません。

「いやいや、問題児にも頑張ってもらって、成果を出してもらいたい」と。

 

美談ですが、たいていの場合、やめたほうがいいです。

 

なぜかというと、頑張らせた結果として、メンタルをやられる部下が出てくるからです。

実際、「問題児」はその仕事に向いていないケースが多いので、育成の難易度が非常に高い。

負荷をかけると、簡単につぶれてしまいます。

そして、それは「上司のせい」になります。

 

管理職が善意に基づいて、熱心に指導しているだけなのに「パワハラ」と言われることもある。

 

だから、本当は「私にこの人の育成は無理ですし、時間を使いたくないです」と潔く言ったほうがいいのです。

それが、お互いのためです。

 

もちろん、ごくまれにですが、相手の能力に応じて、成長のペースを考えられる管理職もいます。

そういう人は、育成の名人ですが、往々にして、成長に時間がかかりすぎて、他のメンバーに成果をカバーさせないといけないことがあります。

「問題児」が周りに好かれていれば、そうしても問題はないのですが、「礼儀がなってない」「口のきき方が悪い」など、周囲と摩擦を起こしやすい人物の場合は、他のメンバーから文句が確実に来ます。

なんであの人だけ楽させるんですか、と。

 

結局、日本企業における問題児の取り扱いの最適解は

「当てにしない、成長に期待しない、その人に時間を使わない」に落ち着くことになるのです。

 

特に、新米管理職には、難易度が高すぎますから、あとは人事に任せて「関知しない」で十分です。

採用失敗の責任は、人事と経営者にきちんと取らせましょう。

 

「適材適所」は、一社の中でなく社会全体で実現する

また、それを気に病む必要は全くありません。

 

人間の能力は非常に多彩です。

「今の職場」で仕事ができなかったとしても、何か別の仕事に適性があるケースは多い。

技術者志望だけど「営業をやったほうがいい」というケースや、「デスクワークより肉体労働のほうが向いているのでは」というケースもあります。

 

だから、一企業の中だけで考えなくてもいいのです。

中小企業で用意できる仕事は限られています。それを告げて、社外でその人が向いている職業を早く見つけてくれるのを祈りましょう。

 

部下と、そして管理職の両者がメンタルをやられる前に、さっさと

「うちの会社では君にやらせることができる仕事がない」

といえるほうが、望みのない成長に希望をつなぐよりも、幾分かマシです。

 

 

4月19日に”頭のいい人が話す前に考えていること” という本を出しました。

ここには、「働く上で知っておくと得すること」を盛り込みました。

 

マネジメントやコミュニケーションの摩擦が、「本来注力すべき仕事」の邪魔をするという事はよくあります。

こうした「人間関係の摩擦」を最小限にする、という事を一つの目的として書いた本です。

ぜひ、お手に取ってみてください。

 

 

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(2024/2/8更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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