人は何らかの星の元に生まれるものだが、筆者の場合は新卒から一貫して、入った会社がいずれも「終わってる組織」という定めを負っていた。
幸いにして海外に飛び出して、この不運な星から逃れられたが、日本にいた頃を思い返すと頭に浮かぶのはそういった企業特有の断末魔的な現象の数々だった。
その経験から学んだことは、詰んでる会社、修復不能な組織ほど、どういうわけか似通った悪手を打つということだ。
そんな場所からはさっさと退散するしかない……
と言うのは簡単だが、人間そう簡単に人生を左右する決断は下せないものだし、中にいる間は感覚が麻痺しておかしさに気付けないことだってある。
そこで今回は「終わってる組織」マイスターを自称する筆者が、やばい組織にありがちな危険シグナルの事例をご紹介したい。
その兆候を感じたら、せめて次を見つける準備くらいしておいて損はない。
危険信号を察知するアンテナを磨くべし!
まず最初にお断りしておくと、終わってる組織あるあると言っても、給与遅配やパワハラ、ワンマン社長の専横といった誰でも分かるブラックしぐさを本稿で取り上げるつもりはない。
また、「いい雰囲気で面談を終えて就職を決め、出社してみたら面接時にはいなかったラオウみたいなおっさんが机の上に足を上げてふんぞり返っていて、それが会社の代表だった」
あるいは、「出社初日に会長と称する人物に出くわし、よろしくお願いしますと元気よく言ったところ、返ってきた言葉が『ところで君、パクられたことある?』で思わず凍りついた」
といった、即脱出レベルのエピソードを紹介したいわけでもない。(どちらも筆者の友人が実際に体験した話)
そんなの、誰だって一発でやばいと理解できる話。
わざわざ警鐘を鳴らさずとも、逃げられる人ならとっくに逃げているはずだ。
ここで取り上げるのは、
傾きつつある組織が追い詰められて打ち出しがちな「会社を良くするための取り組み」。
あるいは、本人たちはよかれと思ってやっているが実は3手、4手先が読めていない短絡的な施策。
そういった組織内で、判を押したように表れる終末感漂う事象である。
①未知の可能性に賭けるあまりリスクを軽視する人事
業績がかんばしくない場合、チームリーダーを替えるという手は決しておかしなことではない。
だが、それは「人を見る目を持つ者が決定した場合」という前置きがつく。
会社のえらいさんは時として、現任者を厳しく評価する一方、「まっさらの人間」に過度の期待を寄せる。
“現任に託したところで、きっと大きな変化は望めない。
それならいっそのこと、自分から手を上げるやる気に満ちた人に任せたほうがいい。”
こういう思考パターンで下された人事に成功例がないとは言わないが、筆者の経験ではロクなことにならないケースが多かった。
なぜなら、可能性を追うとはすなわちリスクを取るということだが、崖っぷちに立っている会社の上役は往々にしてその自覚が薄いからだ。
企業に体力があるうちなら失敗してもやり直しがきくし、組織の新陳代謝を上げる意味でもリスク覚悟でやってみる価値はある。
だが、失敗したら次がない会社の場合、部署の売り上げが全て吹っ飛ぶような人事は、目も当てられない。
そもそも、業績が落ち込んでいる部署の長は、上役から厳しい目を向けられがちなもの。
一方、外部もしくは部署内から見ていると「この人が仕切っているから、なんとか今の状態が保てている」と感じさせられるケースは割とある。
そういう事情に全く気づかず、数字だけしか見なかったり、個人的印象で物事を決める上役が人事権を握っていたりすると、さらにドツボにはまる決定が下される。
しかも、その決断を下した者は、たいがい責任を取ろうとしない。
そういうことが続くと結局、人を見る目のない上役自体が組織のガンなのであって、人事どうこう以前にそこを取り除かないとダメだよね、という結論に達する。
こうなると他社で通用する人、特に若手から1人また1人と消えていき、加速度的に組織が傷んでいくのである。
②後先を考えない部署の解散
「今後は独立採算制、赤字の部署は廃止します」
これもまた何かマニュアルでもあるのかと思うほど、追い込まれた会社が打ち出しがちな施策である。
独立採算制も赤字事業の整理も、普通に事業が回っている会社であるならば全く問題はないというか、むしろ正常な取り組みと言える。
だが、「終わってる組織」の場合、これを本気で実行に移すと会社がいっそう激しく傾く。
筆者自身の経験を語ると、かつて出版社で雑誌5冊を受け持っていた際、そのうちプラマイゼロ、もしくはギリ赤字の媒体2冊を即休刊にすべしとのお達しをある日突然言い渡された。
確かに、商売として将来性もなければ、今後好転する兆しも全くない。
大のオトナが何人もかかりきりで仕事をして、売り上げこそ年間億単位だけども、人件費や資材費、会社の固定費を差っ引いたら儲けはほぼなし、というか若干の赤。
「そんなの潰して当たり前なのでは?」と感じる方もおられようが、繰り返し言うとそれは健全な会社の話。
年々事業縮小に追い込まれている企業の場合、人余りに陥っているケースは少なくない。
そんな中で既存の事業をむやみに畳むと、従事していた人員がそのまま社内失業者と化す。
余剰人員を出すのはいいが、その人たちを使って何らかの企画なり新事業なりを立ち上げ、儲けとまでは言わずとも同じ売り上げを立てられる確信が持てるのか。
もっと言えば、社内で遊んでいる人をさらに増やして、真面目に働いている一部若手のモチベーションをこれ以上下げることに何のメリットがあるのか。
むろん、事業の絞り込みや継続の可否などは結局、経営陣が判断すること。
自分の目には会社の死期を早める行為以外の何物にも映らなかったが、トップには筆者のような一介の社員には想像もつかない遠大な戦略があったのかもしれない(おそらくなかったとは思う)。
皆さまの勤め先でも、ある日突然何らかの部門が解散となったり、進んでいたプロジェクトが中止になったりということが起きるかもしれない。
そんな時は是非、携わっていた人たちのその後の動向に注目していただきたい。
手の空いた社員の使い道がなく、長く遊ばせているようなら、その組織に計画性がない証拠。
そんな会社に自分の人生を預けてよいものかどうか、一考する価値があると筆者は考える。
③多大な浪費を放置しながらの節約
「カラーコピーの使用は許可制」
「電力節約のためエレベーターの利用を禁ずる」
「定時後は原則としてクーラー使用禁止」
これらは全て、筆者の元勤め先が経費削減と称して打ち出した施策である。
資源のムダ使いを避けるという意味では、いずれも間違ったことではない。
ただし、社員がしっかり順守している中、経営陣の浪費が放置されているなら話は別。
例えば、ヒラ社員に節約せよと呼びかける一方、役員勢が接待やら出張やらで引き続き経費を垂れ流し、そこに全く手をつける気配が皆無なら、エレベーターを使わず階段を上り下りしている人々はいかなる思いを抱くか。
「経費削減、意味なくね?」と思われるくらいならまだマシな方。
会社のためと言って社員に何らかの行動を強いておきながら、それと無にするふるまいをし、しかも隠すそぶりすらない会社は、優秀な人から見切りをつけられるのは必定だ。
経営陣は良かれと思ってやっているのだろうが、実際には経費削減で会社を延命するどころか、崖に向かってアクセルを踏み抜くような自殺行為だ。
④上記のような問題を、実は上役たちも理解している
①〜③はあくまで一例、他にも挙げていけばキリがないが、こういった問題を会社の責任ある立場の人が理解していないかというと、実はそうとも限らない。
当然のことながら、上の人間だってバカではない(中にはモノホンもいるが)。
腹を割って話してみると、実は全く同じ思いを共有していて、何が問題か、本当はどうすべきかを分かっていたりするものだ。
だが、すでに答えが出ているにもかかわらず、トップへの忖度や企業体質などさまざまな理由で実行に移されないのなら、無意味どころか永遠に修正されないという点でより始末が悪いだろう。
人生100年時代などと言われるが、元気に働ける時間が有限であることに変わりはない。
一度過ぎ去ったら二度と取り戻せない、自分の時間。
それを今いる職場で費やす価値があるかどうかを考えるにあたり、本稿が何らかの参考となれば幸甚の極みだ。
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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
【プロフィール】
御堂筋あかり
スポーツ新聞記者、出版社勤務を経て現在は中国にて編集・ライターおよび翻訳業を営む。趣味は中国の戦跡巡り。
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Photo by Lindsey Turner