「限りある時間の使い方」という本を知人に勧められ、読んでみた。
この本が言わんとしているのは、結局3つ。
1.生産性を追求すると、追い込まれるだけで、ますます時間がなくなる
2.ゆえに「時間ができたら◯◯しよう」は永遠にやってこない。人生には「今」しかない。
3.だから、たくさんのことをするな、大事なことだけせよ
一言でまとめれば、
「時間がないことは、タスクをこなすスピードを上げることでは解決できない。「たくさんのことをしない」ことが唯一の解決策だ。」
という話で、ほかには何もない。
それを、一冊の本を使ってじっくりと説得してくれる。
忙しすぎて、「自分の人生を生きているような気がしない人」にはとてもいいと思う。
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なお、同様の洞察はすでに、ピーター・ドラッカーの1966年の著書「経営者の条件」でなされていた。
私に「時間」について、はじめて深く考えるきっかけを与えてくれたのは、まさに、この本だった。
そこには、こう書かれていた。
あらゆるプロセスにおいて、成果の限界を規定するものは最も欠乏した資源である。それが時間である。
当時、コンサルティングという仕事は、売上=時間なので、朝7時に会社に来て、タクシーで帰るような生活を何年もおくっていた。
「何かおかしい」と思っていたが、このフレーズが妙に頭に残った。
そうして、読みすすめると、ピーター・ドラッカーはこう続けていた。
時間はあらゆることで必要となる。時間こそ真に普遍的な制約条件である。
……
そこでふと、気づいた。
『あらゆること』に時間が必要だということは、「時間とは、人生の一部のこと」だと。
仕事だけではなく、旅をするにも、趣味に打ち込むにも、親孝行するにも、パートナーとの人間関係を作るにもすべて、時間、すなわち人生の一部を必要とする。
でも自分は、何ひとつ、仕事以外に重要なことができていない。
いや、そもそも一番時間を投じている仕事ですら、限界にきている。
だから、「今の生き方は、根本が間違っている」はじめてその時に思った。
*
では、どのように間違っていたのか。
そこには、次のように書かれていた。
・優先順位を列挙し、そのすべてに手を付けても、関係者が満足するだけで「結局、何もなされないで終わる」。
・一度に一つのことしかするな
・その一つは「大きくて新しいもの」にせよ
・決定に必要なのは分析ではなく「勇気」である
普通のことを言っているように見えるが、そうではない。
この洞察は、実質的には「世の中のほとんどのことは「時間を使う価値がないよ」」と言っているのだ。
そして、ドラッカーはこう結ぶ。
集中とは、「真に意味あることは何か」「最も重要なことは何か」という観点から時間と仕事について自ら意思決定をする勇気のことである。
この集中こそ、時間や仕事の従者となることなくそれらの主人となるための唯一の方法である。
時間、すなわち人生をどのように使うか、というのは常に賭けである。
だったら、大きく、新しく、自分が意味があると思うものだけに、勇気をもって賭けよ、というのが、ドラッカーの教えだ。
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以来、教えをできるだけ忠実に守るように努めた。
まず、生活のすべてに『タスクを詰め込む』のを、辞めた。
そして、「大きくて新しいこと」をするようにした。
たとえば旅行はそのいい例だ。
私はそれまで、『どう効率よく回れば、その地域の「見るべきもの」を全部見ることができるか』という思考だった。
しかし現実的には、どうあがいても「全部見る」のは不可能であり、単に名所を回っているだけ、そんな旅が楽しいかというと、Noだった。
だから、考えかたを変えた。
「旅は一つだけ、超素晴らしい体験ができれば良し」と思うようになった。
通りすがりで、気持ちよさそうな川を見つけたら、そこで車を止めて、1日過ごしたっていいのだ。
本もそうだ。
『どうすれば早く読めるか』という思考をやめた。吟味してよく読み、「感動が一つでもあれば良し」と思うようになった。
人間関係もだ。
本当に大事な、ごく一部の人だけに集中して時間を使う。
人生の最後に必要とする人間関係に時間を使わずして、誰に使うというのか。
もちろん仕事もだ。
『どうすればタスクをすべてこなせるか』という中途半端な思考は捨てた。
そして、時間=成果の仕事はしないと決めた。
「成功のリターンが大きく、かつ新しいことしかしない」ことは、長期的に、働く時間そのものも、減らすことができるとの目論見だ。
しかし、私は立場上、自分の裁量だけでそれを決めるのが難しいという現実があった。
しかも、コンサルタントという時間単価ビジネスそのものの限界もあった。
結局、決定に必要なのは分析ではなく「勇気」である、というドラッカーの言葉通り、
「ま、何とかなるだろう」
と、会社を辞めて、起業することにした。
そしてそれらは、最良の意思決定の一つだった。
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結局のところ、世の中には「やる価値のないこと」が多すぎるがゆえに、時間は「使い方」ではなく「何に使わないか」にこそ、本質がある。
だから、私が思うタイムマネジメントは、タスクをこなすことを主眼に置かない。
やるべきことを「減らす」ことに主眼を置かないと、何も解決しない。
「カネさえあれば、時間は買える」というが、それはウソだ。
人生はいくら積んでも増やせない。
大富豪であっても、1日は24時間以上には決してならないし、冒頭の本で紹介されていたように、人生はたったの4000週間しかない。
結局、勇気をもって「やらないこと」を決めること以外に、人生を充実させる方法はないと、改めて思った。
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4月19日に”頭のいい人が話す前に考えていること” という本を出しました。
ここには、「働く上で知っておくと得すること」を盛り込みました。
マネジメントやコミュニケーションの摩擦が、「本来注力すべき仕事」の邪魔をするという事はよくあります。
こうした「人間関係の摩擦」を最小限にする、という事を一つの目的として書いた本です。
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【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
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