「質問がヘタな人」が、世の中には数多くいる。

例えば、こんな感じだ。

 

 

後輩 「先輩、昨日のお客さんの件で、いまお時間いただいていいですか?」

先輩 「うん。」

 

後輩 「今後、どういう作戦がいいかと思いまして。」

先輩 「……?何の話?営業の話?それとも提案資料について?」

 

後輩 「えー、追いかけるべきかどうかです。」

先輩 「……ああ、今はまだ、ちゃんと営業したほうがいいんじゃないかな。」

 

後輩 「あ、じゃ、ご案内したほうがいいですよね?」

先輩 「……?何を?カタログ?会社案内?」

 

後輩 「次回の営業セミナーです。」

先輩 「ああ、営業セミナーか、そうだね、ん-、ま、ご案内したほうがいいかな。」

 

後輩 「わかりました。あ、どっちがいいですかね?」

先輩 「どっちって……?何の話?セミナー何種類もあったっけ?」

 

後輩 「いえ、セミナーをメールでご案内するか、直接会ってご案内するかです。」

先輩 「……単なる連絡の話?……連絡は早いほうが良さそうなのでメールで……ねえ。」

 

後輩 「はい?」

先輩 「もうちょっと、考えてから質問してくれないかな……。」

 

 

こういう類の質問のしかたは、回答者を無用に迷わせるので

「ヘタな質問」に属する。

 

先輩がいい人だったり、「そういうものだ」と割り切って、辛抱強く付き合ってくれる人もいると思うが、先輩が忙しかったり、短気な人だとイラっとされて、

「もうすこし考えてから、質問してくれないかな。」

と冷たく言われてしまうこともあるかもしれない。

 

では、これはどのように質問すればよかったのかというと、次のようになる。

 

 

「先輩、昨日のお客さんの件で、お時間いいですか?」

「うん。」

 

「質問が3つあるのですが、一つ目は、昨日のお客さんは、営業案件としてきちっと追いかけたほうがいいでしょうか?私は追いかけるべきだと思っていますが……。

「追いかけるべきだろうね。」

 

「わかりました。二つ目は、そういうことなら、次回の営業セミナーをご案内したほうがよいでしょうか?

「ん-、まあ、そうだね。」

 

「わかりました。三つめは、来週またお客さんに訪問するので、セミナーはその時に案内しようかと思いますがどうでしょう?

「セミナーなら、早めに連絡したほうがいいと思うんで、事前にメールでもご案内してもらえるかな。」

「わかりました。」

 

前提条件が不明だと、なにを回答してよいかわからない

この差はいったいどこにあるのか?

それは、質問者が「前提条件を提示しているかどうか」にある。

 

例えば、パートナーから「何食べたい?」と質問されたとする。

 

こちらが「ん-、(今は)アイスが食べたいかな」と返したら、

「いや、(今じゃなくて)夕飯の話。」

と、後づけの条件を加えられたことがある人、いるのではないだろうか。

 

このように、回答にあたって「それを先に言ってくれよ」と思うような条件。

「それを踏まえて」答えなければならない条件。

それが、質問の「前提条件」だ。

 

仕事でも「条件によって回答が変わるので答えづらい」という質問をもらうことは多いだろう。

「今後の見通しはどうですか?」とか。

「やったほうがいいことはありますか?」とか。

「何か対策はありますか?」とか。

 

特に上のような「予測」に関する質問は、前提によって大きく回答が変わってくるので、答えるのがとても難しい。

 

にもかかわらず、「質問がヘタな人」は、こうした前提条件をすっ飛ばして、「自分が聞きたいことだけ聞いてくる」。

だから、「それは場合によるけど……」と、回答に苦慮することもしばしばある。

 

もちろん、できる先輩は、「前提条件」を推測し、後輩の言語化して先回りして答えてくれる。

「こういう場合は、こう。別の場合なら、こう。あるいは、このケースなら、こう。」と。

 

実際、冒頭の先輩は

「今後、どういう作戦がいいか?」

という質問に対して、次のように言った。

「……?何の話?営業の話?それとも提案資料について?

これは先輩が、前提条件を文脈から推定してくれたのだ。

 

だが、このやり取りは、「質問される側に、時として多大な負荷がかかる」。

 

だから、親切な先輩であっても、何度もこのような質問をされ、改善の気配がないと、徐々に

「あいつの質問、答えるのが面倒なんだよなあ」

という評価を下すようになる。

 

 

だから、質問がヘタで、相手をイライラさせてしまったことのある人は、質問の前に

「どのような情報を与えれば、相手が質問に答えやすいか?」

を、少し考えてみると、状況が改善する。

 

たいていの場合は

・質問をしようと思った経緯を説明する

・聞くだけではなく、自分の意見を言ってから質問する

・主語(~が)や目的語(~を)を省略しない

だけで、「質問上手くなったね」と言われるくらい、かなり良くなる。

 

「面倒だな」と思わず、回答者の負担を少しでも減らしてあげよう。

 

 

4月19日に”頭のいい人が話す前に考えていること” という本を出しました。

頭のいい人が話す前に考えていること

頭のいい人が話す前に考えていること

  • 安達 裕哉
  • ダイヤモンド社
  • 価格¥1,650(2025/06/16 09:55時点)
  • 発売日2023/04/19
  • 商品ランキング126位

ここには、「働く上で知っておくと得すること」を盛り込みました。

 

マネジメントやコミュニケーションの摩擦が、「本来注力すべき仕事」の邪魔をするという事はよくあります。

こうした「人間関係の摩擦」を最小限にする、という事を一つの目的として書いた本です。

ぜひ、お手に取ってみてください。

 

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第4回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第4回テーマ 地方創生×教育

2025年ティネクトでは地方創生に関する話題提供を目的として、トークイベントを定期的に開催しています。

地方創生に関心のある企業や個人を対象に、実際の成功事例を深掘りし、地方創生の可能性や具体的なプロセスを語る番組。リスナーが自身の事業や取り組みに活かせるヒントを提供します。

【日時】 2025年6月25日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【ゲスト】
森山正明(もりやま まさあき)
東京都府中市出身、中央大学文学部国史学科卒業。大学生の娘と息子をもつ二児の父。大学卒業後バックパッカーとして世界各地を巡り、その後、北京・香港・シンガポールにて20年間にわたり教育事業に携わる。シンガポールでは約3,000人規模の教育コミュニティを運営。
帰国後は東京、京都を経て、現在は北海道の小規模自治体に在住。2024年7月より同自治体の教育委員会で地域プロジェクトマネージャーを務め、2025年4月からは主幹兼指導主事として教育行政のマネジメントを担当。小規模自治体ならではの特性を活かし、日本の未来教育を見据えた挑戦を続けている。
教育活動家として日本各地の地域コミュニティとも幅広く連携。写真家、動画クリエイター、ライター、ドローンパイロット、ラジオパーソナリティなど多彩な顔を持つ。X(旧Twitter)のフォロワーは約24,000人、Google Mapsローカルガイドレベル10(投稿写真の総ビュー数は7億回以上)。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
ご視聴登録は こちらのリンク からお願いします。

(2025/6/16更新)

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

◯Twitter:安達裕哉

◯Facebook:安達裕哉

◯有料noteでメディア運営・ライティングノウハウ発信中(webライターとメディア運営者の実践的教科書

頭のいい人が話す前に考えていること

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  • ダイヤモンド社
  • 価格¥1,650(2025/06/16 09:55時点)
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  • 商品ランキング126位

image:Tachina Lee