この記事で書きたいことは、大筋下記のようなことです。
・「社長(ではないけど社長的な人)のイエスマン」としてあまり評判がよくない人がいました
・一緒に会議に出るようになって、その人が社長のアイディアに対する追従ととれる発言を頻繁に口にする人だということは分かりました
・ただ、その人は「曖昧なアイディアの長所を的確に言語化する能力をもった人」でもあり、結果的には経営の原動力になっていました
・どういう立場、どういう視点に立つかによって、人に対する評価が変わってくるのは当然のことです
・ただし、「分かりやすい一言」で人をラベリングすること、それによってその人の評価を固定することには慎重であるべきです
・どんな人の評価であれ、なるべく自分で見て、自分で触れた上で判断したいものだと思います
以上です。よろしくお願いします。
さて、書きたいことは最初に全部書いてしまったので、後はざっくばらんにいきましょう。
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むかーーーーし所属していた会社での話です。
以前も書いたことがありますが、私は昔、システム開発の会社に所属していたことがあります。
自社プロダクトの開発・販売の他、保守もやれば受託開発も人出しもやる、まあ昔ながらのアルファベット3文字系SIの会社だったと思います。
私は、その会社の中でも受託開発を担当することが多い事業部に所属していました。
請負もやりましたし、デスマも経験しましたし、SES契約の人身御供として単身で客先に放り込まれたりもしました。大変でした。
今から考えるとレガシーそのものだけど当時基準ではオサレだった案件もちょこちょこやりました。
Tomcat立ててServlet+JSP動かしてjdbcでoracle繋ぐのがそこそこ先進的な案件だった時代、と言えば伝わる人には伝わるでしょうか。まあ、私はもっぱらDB屋だったんで、自分ではあんまりTomcat触ってないんですけど。
で、うちの事業部とよくやり取りをする部署として、事業戦略部という部署がありました。
仕事と人員的にはどちらかというと営業に近い部署で、開発の力点をどこに置くか決めて、顧客にどうアプローチするか戦略を考える部署、と言えば大筋外れないと思います。直接的に仕事をとってきたりもします。
うちの事業部と事業戦略部は、控えめな言い方をすると仲が悪く、しょっちゅうお互いの悪口を言い合っていましたし、責任を追求しあっていました。
ただ、政治的に言うと事業戦略部の方が社長(正確に言うと社長ではないのですが、諸々の事情で立ち位置的には社長みたいなもので、面倒なので社長ということにします)の直轄に近く、当然発言権も強い為、大体の場合うちの事業部が割を食う展開になっていました。
事業戦略部の部長さん、ここではAさんとしますが、私はAさんについて、色んな人から「社長のイエスマン」的な陰口を聞いていました。
ここで言うイエスマンというのは、「目上の言葉に無批判に賛成して、自分の考えを持たない、いてもいなくてもいい人」というような、あまり良くない意味になると思います。好きじゃないんですけどね、陰口。
とにかく、Aさんという人は「社長の思い付きに無批判で追従する人」だと言われており、「イエスマン」という言葉はうちの事業部どころか、Aさんの足元である事業戦略部からすら聞こえてきました。
私も当時は経験も浅く、周囲の評価を割とそのまんま受け取って、ああ、そういう人なんだろうなーと思っていました。
私、陰口も苦手なんですけど社内での政治的な動きというのは陰口以上に苦手でして、出来れば派閥争いみたいなものとは二万光年くらい離れた小惑星の岩石の裏あたりで過ごしていたい、と常々思っています。
とはいえ、不本意ながら日の当たるところに引っ張りだされることもありまして、あるプロジェクトの関係で、偉い人たち同士の経営会議に定期的に出席して、色々喋ったり聞いたりする羽目になりました。
政治的な動きの煮凝りみたいな場所だったのでだいぶ疲れました。
その時私は、初めてAさんの発言をまともに聞きました。
なるほど、と思った部分もありました。
当時の社長は営業畑の人で、営業経験は豊富でしたが、技術に対する理解はそれ程ありませんでした。
かつ、アイディアマンと言えばそうなのですが、発想と発言に瞬発力がある上に押しが強いので、余り練られていないアイディアを思い付きでぽんぽん口にして、しかもそれをゴリ押そうとする傾向がありました。
その社長の意見に、常にすかさず賛同意見を言っていたのがAさんでした。
社長:「〇〇分野の××を始めたらどうだ?今どうせ◆◆でしかやってないんだろう」
Aさん:「おっしゃる通りですね。××はベンダーも注力しつつあって、サポートも豊富なパッケージですし、◆◆でも受託を捌ききれておらず、潜在的な需要も多いと聞きます。国内でも勉強会が開かれていて、□□や▽▽が人材を探し始めています。当社でもいち早く注力するに値する分野かと思います」
もちろんだいぶはしょってますが、大筋はこんな具合です。まず社長が口火を切って、Aさんが社長の意見について賛同し、更にその意見の長所を補足的に述べて、それに対して反応する形で他の議論が始まる、というような展開が一種のテンプレートになっているようでした。
確かに、Aさんが社長の意見に対してマイナスの意見を口にすることはほぼありませんでした。
一方で他の人の意見に対して議論を仕掛けるというようなことも殆どなく、ちょこちょこ付随的な意見を言うだけで、基本的には「社長の意見への賛同」「社長の意見の補足」以外、会議中で一切情報を出力しない、というようなスタンスに見えました。
Aさんが「イエスマン」と呼ばれていた理由も分からないではありません。
ただ一方、「イエスマン」という評を理解した上で私が考えたことは、
「それでもAさんの発言には議論を進める上で価値があるし、Aさんの存在は必要不可欠かも知れない」
ということでした。
まず、「曖昧な思いつき」止まりである社長の意見に、妥当かどうかはともかく「一定のメリット」「それをやる理由」を可視化しており、そこに対する反論の可能性も創出している点。
つまり、偉い人がただの「思いつき」ベースの段階で発言すると、そもそもそこに焦点を当てた議論をすることが難しく、議論が始まったとしても非常にふわっとしたものになってしまうわけです。
「Aがいいんじゃない?」と言われても「そっすかね」としか言いようがない。そこに、具体的に「これとこれとこれが良いところですよね」とラベルを張ってもらえれば、そのアイディアの長所も整理出来るし、そこを焦点に議論を始めることは出来るわけです。
更に、「その意見に対する反対」を、社長ではなくAさんに対して言えるようにしている。
当たり前ですが社長の権限は会社組織において非常に強く、直接の反論ってしにくいわけですよ。
けれど、社長の意見に賛同する形でとはいえ、具体的なメリットを口にしているのはAさんであって、社長程反論がしにくい相手でもないので、反論がある人は「Aさんに向かって」反論が出来る。ある意味では、自分が矢面に立つ役割を引き受けている、とも言えるわけです。
更に更に、「議論の明確なトリガーを作り、議論を促進している」。
システム畑ではよくあることなんですが、精密な議論が得意な一方自分から何かを言い出すのは苦手、って人そこそこ偉い人でも珍しくはないので、誰かが何かを言っても「しーーん」ってなっちゃうことが時折あるんですよ。大変時間がもったいない。
だからMTGでは誰かが議論をファシリテートする必要があるんですが、論点の明確化がAさんの発言の時点で終わっているので、他の人たちはそこをスタート地点にして積極的に議論を展開できるわけです。Aさんに対する反感も、議論を活発化するエネルギーのひとつになっていたかも知れません。
多分Aさんには、批判的な問題発見能力は欠けていました。あるいは、そういう能力が実際にはあったとして、少なくとも組織内で積極的に発揮しようとしてはいませんでした。
ただし、Aさんは「あるアイディアの良い側面を具体的に言語化する能力」と「アイディアの論点を整理して会議の方向性をリードする能力」は間違いなく持っていました。そういう意味で、「イエスマン」のラベリングでAさんを一概に評価してしまうのは、あまり公平ではないかもなーと当時の私は思ったのです。
***
もちろん、色んな面で良し悪しな点もあります。明らかに妥当ではない社長の思い付きが、Aさんという助力を得て結果的に実行に移されてしまい、会社に損害を与えたこともあったのでしょう。
少なくとも、私の所属事業部が何度もデスマに追い込まれていたことは間違いありません。
実際、私はその少し後に色々な事情でその会社を辞めてしまい、またさらに数年後には別の会社に吸収合併されて会社自体がなくなってしまいました。
これ、当時の社長が悪いとも言い切れないところではあるのですが、経営責任という点では社長が負うべき部分が大きいとは言えるでしょう。
ただ、そのずっとずっと後、当時の会社に所属していた人と飲む機会があって、その時聞いた言葉として、「Aさんがいなかったら、そもそもあの会社案件まわってなかったよ」と。
当時の(社長を除いた)経営層には技術的な知見はあっても営業的な視点やセンスは欠けていて、そんな中でも様々な施策を剛腕で回していたのは社長であって、その社長のアイディアを形にしていたのがAさんであって、Aさんがいなければ社長もそもそも動けなかったでしょ、と。結果論としてうまくいったいかないという話はあるけれど、それでもAさんは必要だったでしょ、と。
そういう言葉も、私にとってはある程度納得感があり、どんな視点に立つかによって人の評価が変わるのは当然のこととはいえ、他人の評価をそのまま丸のみにしたり、簡単なラベリングでその人を総括しようとするのは危ないなあ、と。
「イエスマン」と言われている人にも、もしかするとその人なりの不可欠な役割があるかも知れないと思った、と。
そんな話なわけです。
今日書きたいことはそれくらいです。
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システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、 メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。
岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
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(2026/01/19更新)
【著者プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
Photo:Jen Theodore














