靴磨き中年

「靴磨きの少年が株の話をしはじめたら、暴落の前兆だ」というエピソードがある。

ジョセフ・P・ケネディの話だという説もあるが、だれだかしらん。まあ事実はどうであれ、それは株式市場のことをよく言い表しているから、今に伝わっているのだろう。

 

というわけで、毎月、馬券購入に手取りの19万円の3/4を突っ込んでいる低所得者のおれが株や投資について語る。みな、警戒しろ。

手取り収入の3_4を馬券購入につぎ込む人間の告白/Books&Apps

 

……とはいっても、おれが投資の真似事みたいなものをはじめたのは2007年のことである。かなり前だ。

「最近株価高いらしいっすね?」とか、「新NISAっていいらしいっすね?」とか、靴磨き中年というには、ちょっと年季が入っている。

 

そもそもなにを始めたのだったっけ? プチ株(単元未満株、端株)で投資ごっこをしたかったのだ。

単元未満株は文字通り単元未満で売り買いできる。リアルタイムで反映できないなどの制限はあるが、「300円」という株価の株なら、そのまま300円で買える。むろん、300円ぽっきりであれば手数料で儲けもほとんど出ないが、「単元買うには十万賭けなければいけない」という縛りに比べたら入りやすい。カブドットコム証券(当時)に口座を開いた。

 

というわけで、おれが株式市場とかに目を向けてから15年は経っている。その間に、リーマンショックもあった。すごい底値もあった。日経平均8,000円台前半とかあった。そのうえで、え、日経平均が34年ぶりの高値! 37,000円台! という。なので、調子に乗って、こんな記事を書いてみようと思う。

 

終わらないレース

そもそもなぜ、おれ株取引の真似がしたかったのか。

ほんのわずかながら、持ち金を増やしていって、いずれは億万長者にみたいな気持ちはあった。

無理なのはわかっていた。それは無理だとしても、博打、おれにとっては「べつの競馬」という意味合いが強かった。たまには競輪とか競艇とか買いたくなるじゃない。

 

で、この株取引という競馬は、1分や2分では終わらない。買った投票券が紙くずの0円にならない。会社が倒産とかしないかぎり、レースは続く。

下手すれば自分の寿命より長い。先頭から何馬身つけられようと、馬券を持ち続けることはできる。なんてぬるい博打だろう。どんなに含み損を抱えても、塩漬けで塩分過多になっても、0になることはほとんどないのだ。

 

なおかつ、オッズが変わったらまた買える。レース中に単勝が5.0倍から10.0倍になったとしたら、そこで買い足せるのだ。すごい。競馬でナンピンなんてできない。

 

まあ、競馬と投資を一緒にするなと言われたらそれまでだが。それでも、「安くなったら、オッズが上がったということなので買う」という行動をとった。

そのおかげで、このあいだ新NISAに移行ついでに銘柄を整理していて見たのだが、投資信託のS&P500とか「+100%」とかになっていたぞ。2倍だ。むちゃくちゃ安いときに仕込んだんだろうな。

 

え、投資信託? そうだ、おれはプチ株にはすぐに飽きてしまって、かといって単元株のトレードにも進まず、こつこつ投資信託を買うようになっていたのだ。

 

投資信託万歳

なぜ、投資信託を買うようになったのか。はっきりと覚えてはいない。しかし、どこかでなにかの投資の記事を読んだからだろうか。「プロが自分のかわりに売り買いしてくれるなら、自分でやるよりは勝率が高いだろう」ということだ。

それに、プチ株とはいえ値動きをチェックするのも面倒くさい。だったら、なんとなくリターンは小さくても、リスクを分散させて、金が増えたら楽しい、というのを選ぶ。勝手にやってくれる。

 

おまけに、投信を買ってしまえば、その金を使うのにひと手間かかる。ほんの一手間だが。

基本的に、おれは「すぐに競馬に使えないようにお金を避けておく」という崇高な理念で投資をしている。銀行口座に置いておくよりは、ギャンブルが楽しめる。投資は楽しい。ただし、個別銘柄はやめておけ、とは2022年に世界に向けて忠告したことはある。

投資とかしたけりゃすりゃいいだろ、ただし個別銘柄はやめておけ

おれはというと、「すぐに競馬に使えないようにお金を避けておく」という、非常に高い意識でもって、気が向いたらポイポイ証券会社に入金して、チョイチョイ投信を買っている。自動的な積立とかはしていない。半自動的だ。もちろん、貧乏人なので少額もいいところだ

このエントリーは、投資素人の自分が書いたわりには「参考になった」とほめられた。なんでだろう? え、はてな?

 

投信の答え合わせ

話は変わる。2024年1月に、山崎元氏の訃報が届いた。

 

ネット上にはいろいろな専門家がいろいろな記事を書いていて、それぞれ毀誉褒貶ある。

自分の知らない分野については、その人が信用できるかどうか判断が難しい。難しいが、それこそはてなブックマーク(ソーシャルブックマークサービス)の反応などで、なんとなく判断するしかない。

 

もちろんおれはマネーについて知らない(というか、おれの専門分野とはなにか? ハズレ馬券を買うこと?)。

そんな自分にとって山崎元さんは「信用できそうな人」に分類されていた。ひょっとしたら、おれがプチ株という遊びをやめて、投資信託に金を突っ込むようになったのは、山崎元さんの影響だったかもしれない。

 

新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場の記事一覧 /東洋経済オンライン[社会をよくする経済ニュース]

それにまあ、エコノミストのくせに競馬やってるところに共感したのかもしれない。

 

その、山崎元さんが亡くなった。いくつか追悼記事を読んだが、なかでも気になったのはこちらの記事だった。

今月、山崎さんが亡くなられたあと、奥様と直接お話する機会があったのですが、山崎さんは「ほったらかし投資術」をとても気に入っていて、金融関係者以外のプライベートな知り合いには本書を渡して回っていたと仰っていました。また、編集さんによれば、山崎さんは入院中も本書を医者たちに配っていたようで、奥様から「池袋ジュンクの在庫を買い占めた」というご連絡を受けていたとのこと。

多数の本を執筆してきた山崎さんですが、それだけ「ほったらかし投資術」をとても気に入ってくれていたのだと、あらためて驚きました。

思えば、おれは山崎元さんの本を買ったことはなかった。それにもう、真面目な投資をする人は「投信、インデックスファンド買っとけばいいんでしょ?」という結論は出ていた。

 

でも、そんなに山崎さんが気に入っていた本なら、一つ買って読んでみようかと思った。買って、読んだ。

『【全面改訂 第3版】ほったらかし投資術』、これである。

 

『ほったらかし投資術』の真髄

さて、この本ではどのような投資術を勧めているのか。べつに秘密でもなんでもないようなので書いてしまえば、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(同等品含む)に突っ込めということだ。

 

いや、「突っ込め」というのも語弊はある。資産のうち、どれだけ資産運用に回すのか。どれだけリスクを許容するのか。そういう話もちゃんとされている。そのうえで、投資するのであれば「オルカン」がいかに有利で、便利で、再現性があり、優れているのか解説されている。

 

では、この本を読めば「オルカン」を信じることができるのだろうか。

そもそも著者達は、投資にあって「信じる」という心の持ち方には信用しませんが(おそらくは「賭ける」くらいが適切でしょう)、投資する際に敢えて「信じる」に足る原則があるとすると、企業の利益や経済の成長ではなく、「市場の価格形成の適切性」でしょう。

「市場の価格形成の適切性」について、おれはおれの言葉で語ることはできないけれど、知りたければ本書を読んでほしい。それよりも、「信じる」ではなく「賭ける」というところがいい。

 

なにせ、全世界の株式を買うのだ。広く、薄い、といってもいいだろうか。

それでも、「信じる」のではなく「賭ける」だ。そのギャンブリングの意識が、馬券狂いのおれには響く。「オルカン」という投資であっても、「賭け」には違いない。

 

まあ、投資行動を始めなよ

して、おれも貧乏人として「投資はじめたほうが面白いぜ」という思いは伝えたい。本書では投資と上手く付き合えない人のパターンを3つあげている。

第一に、投資を始めることが億劫な人。
第二に、投資を続ける胆力がない人。
第三に、上手くやろうとして動き過ぎる人。

おれはどうだろうか。始めることはべつに億劫でもなかった。JRAの即PATの申し込みをするていどのことだった。

ネットに馴染んでいる人ならば、ネットで証券会社の口座を作るなんて朝飯前だろう。

 

投資を続ける胆力。これについては、おれはもうあまり関係ない。

おれの投資の源は「すぐに競馬に使えない金を置いておく」ことであって、それ以上でもそれ以下でもない。銀行口座に置いておくのと同じ意識でほったらかしできる。

 

上手くやろうとして動き過ぎる。これについてはどうか。

実のところ、おれの投信のメーンはS&P500であってオルカンではないし、純金(昔は「株はもうだめだからブラックロック・ゴールド・ファンド買うか」とか思って買っていた)ファンド買ったり、アクティブファンド買ったりしている。暴落のニュースがあったら買い足すし、動きすぎている面はある。

 

とはいえ、もともとおれは真っ当な定期収入、年齢とともに上がっていく収入のある人間ではない。どうあがいたところで、「老後の資金2,000万円」とか作れないのだ。これは人生の心配であって、あなたは別だろう。

 

おれはギャンブルで投信を買っているのであって、真っ当な資産形成とは程遠い。真っ当な資産形成と程遠いのであれば、個別銘柄で「テンバガー」とか狙えという話になるだろうが、そんなのはわからん。もっとも、馬券で10倍を的中させるのもたいへんなことなんだがな。

 

それでも、なんだろうか。おれは普通の正社員として就職できた人間に比べて1/10くらいしか資産形成できないと思うが、もしもあなたが普通の人ならば、投資しない理由はないぜって思う。

なぜなら、そっちのほうが金の増える可能性もあるし、おもしろいからだ。

 

……って、おれは先にS&P500(アメリカ株式)で2倍と書いたが、場合によっては半分になるということだ。そのあたりのリスク管理は慎重に考えられたい。

 

マネーで自由になる

投資は「やらなければならない」ものではなく、「やると有利だと思った人がやるもの」というのが、「ほったらかし投資術」の基本思想です。

そうだ、いくら「長期・分散・低コスト」を意識したところで、それに「賭ける」ことが有利と思えるかどうかは人によってちがう。

すごく資産のある人ならば、べつに投資で増やそうなんて考えなくてもいいかもしれない。逆に、おれのような人間はべつに投資したところで「有利」を得ることはできない。元手がなさすぎるからだ。

 

なので、これはおれのような「投資したところでどうでもいい人間」からの言葉になるだろう。おれは「オルカン」だけでは面白くないので、S&P500に一番突っ込んでいるし(アメリカがだめなら日本も世界もだめだろうという思い込み)、ほかにも各地の個性ある投資信託に金を入れている。

少しでも多く増えたらおもしろい。それだけだ。それでおれの老後の資金がどうにかなることもない。馬券の延長線だ。

 

だが、この調子で増えるものならば、普通の人生を送っている人の人生マネーには大きく影響があるんじゃないかと思う。

「株式に投資されたお金は生産活動に回って役に立つから」とか、「人間には欲望があり資本主義経済は成長するから」とか、果ては「応援したいと思う会社の株式を買ってみよう」とかいった理由で株式への投資を勧めるのは正しくありません。

ということだ。おれは「応援したいと思う会社の株式」を、こりもせず買っている。おれにとってはシンヨモギネスの馬券を買うのと同じことだ。

 

だが、馬券を買ったりしないような人。まじめに稼いでいて、資産形成の可能性がある人、そういう人にとっては「目をつぶってオルカンを買う」というのはありじゃないかと思う。

 

おれにはおれの言葉で語れないから『ほったらかし投資術』を読んでほしいと思う。そのうえで、証券口座の口座を開くなんて簡単だし、おれみたいな人間でもぽいぽい買えるもんだ。とにかくやってみろ。貧乏人が毎週ハズレ馬券を買うよりずっとましな人生を送れるはずだ。

この「ほったらかし投資術」には、オリジナル版から一貫して、資産形成に掛ける手間とコストを節約して、「人生をよくすること!」にこそ時間とエネルギーとお金を使いたいと考える著者たちの思想が強く反映しています。

おれには無理だが、あなたがたは投資によってよい人生を!

 

 

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(2024/3/26更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

著者名:黄金頭

横浜市中区在住、そして勤務の低賃金DTP労働者。『関内関外日記』というブログをいくらか長く書いている。

趣味は競馬、好きな球団はカープ。名前の由来はすばらしいサラブレッドから。

双極性障害II型。

ブログ:関内関外日記

Twitter:黄金頭

Photo by :Mathieu Stern