最近は生成AIも一通り新発表ラッシュが終わり、ChatGPTが登場した直後の「熱狂」は一通り収まってきたように感じる。
おそらく現在は
「ちょっと触ってみて、すごいと思ったけど、あまり実用性を感じられなくて、今はたまに使うくらい」
という人が多いのではないかと思う。
いわゆる「失望の谷」に入った状態だ。
なぜ生成AIは「失望の谷」に入ったのか。
その原因は明らかで、生成AIを使って、自分が狙っているクオリティの成果品を出すのが難しいし、プロンプトを考えるのが面倒からだ。
例えば、こんな状況を想像してほしい。
朝出勤してきて、最初に
「昨日一緒に飲みに行った、お客さんの部長さんに「お礼」のメールを書きたい」
とする。
多くの方が想像する通り、お礼のメールは結構書くのが面倒だ。
そこで、「生成AIを使ってみよう」と、次のようなプロンプトをChatGPTに打ち込むとどうなるか。
昨日一緒に飲みに行った、先方の部長さんにお礼のメールを書いて。
すると、生成AIから帰ってくる回答は次のようなものとなる。
件名: 昨晩の楽しい時間に感謝申し上げます
\[部長のお名前\] 様
お世話になっております。昨日はお忙しい中、お時間をいただきまして誠にありがとうございました。楽しいひとときを共に過ごすことができ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。
また、いろいろと貴重なお話を伺うことができ、大変勉強になりました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
お礼まで、失礼いたします。
\[あなたの名前\]
—
これでいかがでしょうか?部長さんのお名前を差し込んでください。
これを見て、どう思うだろうか。
率直なところ「機械がこれだけ書けるのはすごいけど、そのまま送るのはちょっと……」と思う人が多いのではないだろうか。
それは、いかにも「テンプレ」「AI」という感じがぬぐえないからだ。
「生成AIを使いこんでいる人」だけが知っていること その1
では、どうすればアウトプットのクオリティを上げることができるのか。
「生成AIを使い込んでいる人」は体感的に知っているだろうが、実際にうまくお礼のメールを書かせるには、
・部長との人間関係
・昨日、飲みの席で何を話したか
・自分の情報
など、追加で「周囲の状況に関する情報」を入れなければならない。
では、少しプロンプトに情報を盛り込んでみよう。
昨日、一緒に飲みに行った、顧客の部長に、お礼のメールを書いてください。
その際には、以下の背景を考慮すること。
#背景
・部長さんは、以前プロジェクトで知り合った方
・ごちそうになった焼き鳥は大変おいしかった
・今度本部長に昇進するとのこと
・信頼していた部下が転職を考えており、がっかりしている
・部長さんは高級過ぎない店が好きで、あちこち開拓して回っている
・また飲みに行こう、と誘われたので、今度はこちらから声掛けしようと思っている
すると、以下のようなメールを書いてくれる。
件名: 昨夜のお礼と今後のご健勝をお祈りして
部長様
お世話になっております。昨日はお忙しい中、お時間を頂戴し、誠にありがとうございました。また、大変美味しい焼き鳥をご馳走になり、心から感謝申し上げます。あの店の雰囲気も素晴らしく、部長様が選んでくださるお店はいつも素敵だなと改めて感じました。
また、昇進のご予定を伺い、大変嬉しく存じます。今後のさらなるご活躍をお祈り申し上げます。一方で、信頼していた部下の方が転職を考えておられると伺い、心中お察しします。部長様のお気持ちが少しでも和らぐよう、今後もお力添えできればと思います。
部長様の新しいポジションに移られる前に、ぜひまたお食事をご一緒させていただければと思います。次回は、私の方からお店を選ばせていただきたいと存じます。
引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
[あなたの名前] [あなたの会社名] [連絡先]
一目瞭然で、こちらの方が圧倒的にクオリティが高い。
つまり、いかにAIが優れていようと、個別の事情までAIは知りえない。
だから、文章に込めたい情報は、どうあがいても自分でまとめる必要がある。
実際、生成AIにクオリティの高いアウトプットをさせるには、プロンプトに精通するだけではダメで、
・周囲の状況に関する情報をまとめること
が非常に重要となる。
「生成AIを使いこんでいる人」だけが知っていること その2
そしてもう一つ、生成AIに精度の高い仕事をさせるために重要なのが、
・どのようなステップで、AIにアウトプットさせるか?
である。
例えば、「キャッチコピーを作りたい」と思ったときに、普通であれば以下のようなプロンプトを書くだろう。
オレンジジュースのキャッチコピーを10個、書いてください。
以下の特徴があります。・従来のオレンジジュースより酸味とエグみがとても少ない
・甘さ控えめであっさり
・果汁100%
Google Geminiに打ち込んでみると、次のような回答がある。
1.酸っぱくない、苦くない。だからゴクゴク飲める、果汁100%
2.甘さ控えめ、後味スッキリ。大人のための果汁100%オレンジジュース
3.オレンジ本来の味を、酸味とエグみを抑えて。果汁100%
4.ゴクゴク飲める、果汁100%。朝の目覚めにもぴったり
5.オレンジのやさしい甘さ。果汁100%
6.もう酸っぱいだけのオレンジジュースには戻れない。果汁100%
7.毎日飲みたい、果汁100%。健康と美容にも
8.オレンジジュースの概念が変わる。果汁100%
9.お子様から大人まで、みんなが笑顔になる味。果汁100%
10.自然な甘さと爽やかさ。果汁100%
これも、メールの返信と全く同様の感想ではないだろうか。
率直なところ「機械がこれだけ書けるのはすごいけど、そのまま使うのはちょっと……」と。
なんか全部100%が入ってしまっているし、そもそもこれは、「商品の説明」ではあるが、「キャッチコピー」にはなっていない。
ではどうすればいいのか。
著名コピーライターの梅田悟司さんに、「コピーライターって、どうやって作るんですか?」と聞くと、次のような手順を示された。
これを基に、生成AIに
・従来のオレンジジュースより酸味とエグみがとても少ない
・甘さ控えめであっさり
・果汁100%
という情報を与えたうえで、上の6つのステップを踏んで、キャッチコピーを作らせると次のようになる。
1.すっきり甘く、毎日の元気をチャージ。
2.成長する子どもに、自然の恵みを。
3.甘さ自然、心も体も満たされる一杯。
4.子どもの未来を想う、無添加の約束。
5.家族で過ごす時間、おいしさで彩る。
6.忙しい朝も、栄養バランスで安心。
7.喜びも安心も、この一杯に込めて。
8. 毎日続けやすい、自然の甘さで。
9.笑顔あふれる、朝もおやつも。
10.ほっと一息、自然の味わいでリフレッシュ。
なお、ペルソナは「子供を持つ親」と、生成AIが設定してくれた。
こちらもメールと同じく、ちがいを見ると、一目瞭然だ。
キャッチコピーを作るステップを、きちんと踏ませた方が、圧倒的に生成AIの出力クオリティがあがるのだ。
要するに、業務の解像度が高ければ高いほど、生成AIのアウトプットの出力を上げることができる。
だから、以前から言われているとおり、生成AIは「人間の能力を増幅する」装置だと言われる。
要は、自分で手と頭を動かして仕事する人ほど、AIをうまく使えるのである。
今後の生成AIサービスは「プロンプト」を自分で書く必要はなくなる
だから、本質的には自分で解像度の低い業務のプロンプトを無理やり書くよりも、専門家が作ったプロンプトをそのまま利用したほうが、絶対に良いものができる。
だから、今後はますます、生成AIのサービスにおいて、プロンプトは隠ぺいされる方向に行くだろう。
【プロンプトなんて、自分で打つ必要ないですよ】と。
クリック一つで、望むものが出るほうが、絶対に使い勝手が良いからだ。
それまではしばらく、生成AIは「失望の谷」をさまように違いない。
だから我々も、
キャッチコピーを作るプロンプトは、一流のコピーライターに書いてもらうべきだ。
記事を作るプロンプトは、専門ライターに書いてもらうのが良い。
提案書を作るプロンプトは、腕の良い営業やエースコンサルタントに書いてもらう。
と考えて、【Automagic】という、ツールを作った。ぜひ、使ってみてほしい。
Automagicについて今度、話します!
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【著者プロフィール】
安達裕哉
生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」65万部(https://amzn.to/49Tivyi)|
◯Twitter:安達裕哉
◯Facebook:安達裕哉
◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書)
Photo:Ben Wicks