他者の意見を、「尊重しよう」という人がいます。

皆の意見を「大事にしよう」という組織があります。

そう考えること自体は、別に良いと思います。

 

が、私が現場で教えられてきたのは

「価値があれば尊重せよ。そうでなければ相手にしなくていい。」でした。

もっと平たく言えば「考慮はするが、尊重はしない。」という態度です。

 

どういうことか。

「尊重」という言葉の意味は、日本国語大辞典によれば、「価値のあるものとして大切に扱うこと」です。

つまり、「皆の意見を尊重しよう」という考え方は、他人の意見は、デフォルトでは価値あるものとして扱いなさい、という発想だと思います。

美しいですね。

 

しかし、学校を卒業し、私が社会人で経験したのは、

「尊重されるのは、価値のあるものだけ」

という現実でした。

 

実効性の高いもの。

顧客の満足を高めるもの。

生産性を向上させるもの。

良い仕事につながるもの。

 

そういった「意見」は歓迎されます。しかし、

「バカな意見」

「実効性のない計画」

「現実を見ない理想論」

といった、「時間の無駄」に関して、それに対していちいち「大事だね」と尊重するなど、現場ではありえません。

はいはい。で?成果につながることを言ってくださいよ。」で、おしまいでした。

 

ですから他者の意見は、現実にはデフォルトで「尊重」ではなく「保留」という事になります。

 

 

「冷たすぎるだろう」

「人を何だと思ってるんだ」

「傲慢だ」

という意見が聞こえてきそうですが、これは、皆の生活を守るためでした。

 

つまり、ただでさえ忙しいのに、仕事において「くだらない意見につきあうこと」自体が、皆の仕事の質、ひいては生活のレベルを下げることにつながる。

この考え方です。

 

だって、そうでしょう?

皆の時間は無限ではありません。いちいち他人に配慮して「尊重」をしていたら、いつまでたっても何もできないのです。

 

かくいう私も、会社の会議で「意見が尊重されている」と感じたことは一度もありませんでした。

いい意見なのか、くだらない妄言なのか。

それだけが、判定の対象となる。

 

「くだらないこと」を言えば、「なるほど」といったん受け止めてはもらえますが、そのあと「意味が通じませんね」「解決になりませんね」「関係ないですね」と言われるだけです。

 

ただ、誤解の無きよう申し上げますが、

「尊重」されないからといって、それが「失礼」だとは思いませんでした。

なぜかというと、「考慮」の対象だからです。

 

すくなくとも、発言されたことについては会議の出席者の皆が、一度は「考慮」する。価値をジャッジされる。

もちろん意見を出すことは、大変な緊張感が伴いますが、仕事なのでやらねばなりません。

 

逆に、そういうことを通じて、くだらない意見が出たときに暗に発される

「お前の言っていることは、マジでくだらねえ」

というメッセージをその場から受け取れなけば、改善もないので、ある意味それは重要なのだともいえるわけです。

 

 

最近では、多様性やら、心理的安全性という言葉が強調されすぎて、

「皆の意見を尊重しよう」

という考え方が先走っている組織があります。

 

人の会社ですから、それに対してどうこう言うつもりはあまりないですが、

本当にくだらない意見なのに、「意見をありがとうございます」とか言っているのは、どう考えても健全ではありません。

 

バカな意見には「その意見は却下」と、はっきり言わなければならない。

 

もちろん、人の意見を、よく考えもせずにバカにしたり、無視したりするのは、正しい態度ではありません。

というよりも、ダメな態度です。

 

しかし、皆の意見を尊重しましょう、という態度も、病的です。

中身に関わらず尊重しようと考えることは、それもある意味、人を馬鹿にしていると考えたほうがいい。

 

そう考えていくと、

「他者の意見。考慮はするが、尊重はしない。」

という態度くらいが、ちょうどいいような気がします。

 

 

余談ですが、「市場」というのは、これをもっともよく体現していると思います。

つまり、商品や作品を見たときの人間の反応が、「考慮はするが、尊重はしない。」なのです。

いや、ブログやSNSも同じかもしれません。少なくともつまらない文章は誰も尊重しません。

 

売り場で、ダメな商品を「尊いですね」という人はいません。

選択肢として「考慮」はされますが。

 

仕事における「意見」も、一種これと同じだと思うのです。

 

小学校では

「お友達の言ったことは大事にしようね」

でよいかもしれませんが、社会においてそれは現実とは異なります。

 

もちろん、誰も面と向かって「お前はバカだなあ」とは言わないと思います。

失礼ですからね。

が、大した価値も出せていないのに、「自分の意見は尊重されてしかるべきだ」と思っている人間は、呆れられて、無視されるだけです。残念ながら。

 

 

【お知らせ】
生成AIを導入しても成果につながらない――そんな課題に向き合うためのウェビナーを開催します。
生成AI活用が当たり前になりつつある一方で、「思ったように成果が出ない」「手応えが感じられない」と感じている企業も少なくありません。
本ウェビナーでは、ティネクトが実際に経験した“失敗事例”を起点に、生成AI活用でつまずく本当の理由と、成果につなげるための考え方を整理します。
経営層、マーケティング責任者、オウンドメディア運営担当者の方に特におすすめの内容です。
ぜひご参加いただき、2026年に向けた判断軸をお持ち帰りください。


このウェビナーでお伝えする5つのポイント
・生成AI活用が「うまくいかなくなる構造的な理由」がわかる
・実際の失敗事例から、避けるべき落とし穴を学べる
・問題はAIではなく「設計」にあることが整理できる
・AIと人間の役割分担をどう考えるべきかが明確になる
・2026年に向けたコンテンツ投資・運営の判断軸が持てる

<2026年1月20日 実施予定>

生成AIを導入しても、成果が出ない本当の理由

“AI+人間”で信頼を築く企業だけが生き残れる時代へ。
失敗から学ぶ、これからのコンテンツ設計と生成AI活用の考え方をお届けします。

【内容】
第1部:しくじり先生の告白 ― 生成AI活用で何が起きたのか(楢原一雅)
第2部:客観解説 ― なぜ成果が出なかったのか、どうすべきだったのか(安達裕哉)
第3部:解決編 ― AI+人間で信頼を生むコンテンツ制作の考え方(倉増京平)


日時:
2026/1/20(火) 10:00-11:00

参加費:無料
Zoomウェビナーによるオンライン配信となります。


お申込み・詳細
こちらのウェビナー詳細ページ をご覧ください。

(2025/12/24更新)

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」65万部(https://amzn.to/49Tivyi)|

◯Twitter:安達裕哉

◯Facebook:安達裕哉

◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書

Photo:Jonathan Tesmaye Salvador