この記事で書きたいことは、以下のようなことです。
・塾の先生が「お勧めしたゲームをちゃんと遊んで感想をくれる人」でした
・生意気な子どもだった私も、「その先生の言うことだけはちゃんと聞かねば」となりました
・「真剣に聞いてくれる」「何かを共有出来る」相手だと思うと、子どもの側でも真剣に話を聞く姿勢をとりやすい気がします
・また、「自分が好きなコンテンツを、相手も好きになってくれる」というのはもの凄く楽しい体験です
・子どもに読書をさせたいなら、親自身本を読むのももちろんですが、子どもがお勧めする本を親が真剣に読むのも大事かもと思います
・子どもにも「お勧めする楽しさ」を知って欲しいと思っています
よろしくお願いします。
さて、書きたいことは最初に全部書いてしまったので、後はざっくばらんにいきましょう。
昔話から始めさせてください。
30年くらい昔の話です。当時の私はまだ中学生で、名古屋の上社というところに住んでいました。
路線でいうと地下鉄東山線、名古屋の北東の隅の方です。上社~藤が丘間だけは地下鉄が地上を走っているのですが、幼少の頃の私は「地下鉄」なのに何故地上を走っているのかがよく分からず、「日曜日は地下鉄で」という当時のキャッチフレーズを真に受け、「普段は地上を走ってるんだけど日曜だけは地下鉄に変形するんだな」と完全に勘違いしていました。
初めて一社方面の地下鉄に乗って、電車が地下に潜って行った時の「こういうことだったのか!」という鮮烈な驚きは今でも忘れません。子どもの勘違いというものは時に妙な感動を生み出すものです。
中学に入った頃の私は、小学校までは得意科目だった算数の成績をだいぶ落としていました。初歩の算数は特に勉強しなくても出来ていたところ、数学になって汎化した概念を理解出来ずについていけなくなる、その典型的なパターンだったと思います。
そこで心配した親が塾に通わせてくれたようで、それがしんざきにとって初めての通塾の記憶になります。
その塾で数学を教えてくれた先生のことを、ここでは仮にA先生とします。
当時の私はいかにも生意気な子どもで、根拠のない自信に溢れており、しかも大人の話をあまり真剣に聞いていませんでした。勉強なんて真面目にやらなくても出来るし、たまたま成績が悪くてもちょっと頑張ればすぐ取り返せる、と。なんなら、周囲の大人よりも自分の方が頭がいい、とまで考えていました。今から考えると実に浅薄な話で、学校の先生もさぞかし扱いにくかっただろうと思います。
ただ、そんな生意気な私も、A先生の話はきちんと聞いていましたし、A先生が「こうするといい」と言ったことは、かなり素直に受け入れていました。私にとってA先生は「周囲の大人とはちょっと違う人」であって、「この人のいうことは真剣に聞かないと」と思っていました。
それは何故かというと、端的に書くと「A先生に「新桃太郎伝説」をお勧めしたら、ちゃんと遊んで感想を教えてくれたから」でした。
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「新桃太郎伝説」ってゲーム、皆さんご存知でしょうか?色んな昔話をごった煮にした和風RPG「桃太郎伝説」のSFCでの続編でして、一言で表現すると「バランスに多少難はあるものの、和風の世界観とシナリオ、仲間を使い分けた攻略や様々な演出が超面白いゲーム」です。
「桃鉄」に登場するキャラクターが元々出演していたRPGのシリーズ、といった方が通りが良いでしょうか。
天気によってキャラの強さが上下するシステムとか、仲間が好き勝手歩き回るフィールドの演出とか、ただひたすらに広い希望の都とか、前作と打って変わってシビアなシナリオとか、まあとにかく遊び甲斐のあるゲームでした。あとBGMがめちゃくちゃ良い。
特に「ましら」という仲間の能力が際立ってまして、「実際に画面上に表示される鍵盤から3つ選んで打鍵し、その組み合わせで様々な効果を発揮する」という、他に類を見ない特色をもっていました。この「ましら」を上手いこと使いこなしてゲームを攻略することに、当時の私は大変ハマっていたわけです。まあ、あまり細かく新桃の話をしているとそれだけで1万字くらいになりそうなので、これくらいにしておきますが。
で、とある授業の際、「家にスーパーファミコンがあって、子どもがたまに遊んでいる」というような話をしたA先生に、話の流れで私は「新桃太郎伝説」をお勧めしたわけです。上記のようなゲームの面白さを力説したのでしょうか。
で、このA先生の何がすごいって、次の授業の時本当に「新桃太郎伝説買った!!」とおっしゃいまして。その後も、「希望の都ついた!!」とか「風神雷神が強すぎるんだけど」とか「大江山がひど過ぎる」とか、実際に自分でゲームをプレイして、授業の合間にちょくちょくゲームの話で盛り上がったのです。
この時だけではなく、その後もA先生、私が「面白い」と言ったゲームや漫画を、ちょくちょく実際に買って遊んで/読んでは、その度私に感想を話してくれました。
実を言うと、「自分がお勧めした本やゲームを大人が読んでくれた」って経験、当時の私には衝撃的だったんですよ。
なぜかというと、「子どもが楽しんでいるコンテンツを、大人は基本的に相手にしてくれない」と思っていたから。
当時は今ほどゲームや漫画が市民権を得ていなかったということもありますが、「ゲームを遊ぶ/漫画を読む」という趣味をおおっぴらにしている大人はかなり希少でした。ゲームは「子どもが遊ぶもの」でしたし、子どもが好むコンテンツは基本「子どもだまし」であって、大人が真剣にそれを摂取しようとすることは、少なくとも私の周囲では殆どありませんでした。
今から考えれば、まあ無理もない話ではあります。ある程度年を食ってくると、新しいコンテンツを摂取するハードルってどんどん上がりますし、時間だってお金だって限られます。ゲームなんて普通に遊ぶだけで数十時間食うのはざらでして、たとえ「面白そう」と思ったとしても、そう気楽に手を出せるものではありません。「面白い」という感覚の違いだって、面白さを感じる為のバックグラウンドの違いだってあるでしょう。
そこから考えると、むしろ当時のA先生の方が特異点というか、相当頑張って時間やその他もろもろのリソースを捻出してくださっていたのだろうと思います。
とはいえ、斜に構えていた私が、「新桃太郎伝説」を契機にすっかりA先生に私淑して、「この人の言うことはおろそかに出来ない」と認識していたことは事実です。もとよりA先生の教え方は大変分かりやすく、勉強のノウハウも色々教えていただきました。その後私に学習の習慣がついたのも、数学の成績が改善していったのも、一つにはA先生のおかげなのだろうと思います。
これがA先生の狙い通りだったのかどうか、今となってはよくわかりません。生徒一人の成績を改善する為にゲームを何本も買うのもちょっとしんどい話ではありまして、もしかすると本当にA先生はゲーム好きで、単に私のお勧めしたタイトルが性にあっただけだったのかも知れません。どちらかというとその方がいいなあ、とも思います。
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「子どもが本を読まない、読書をしない」という親御さんの悩みを、昔からちょくちょく聞きます。ひと昔前は「ゲームばっかり遊んで本を読まない」だったかも知れませんが、最近は「youtubeやTikTokばっかり見て本を読まない」になるのでしょうか。
そういう悩みに関して、これまたよく聞く言葉として、「そういう親自身は本を読んでいますか?」というものがあります。
普段過ごす環境が「当然のように本を読む環境」になっているかどうか、周囲の人たちが「ごく自然に本を読む」人かどうか。「本を読む」という文化がごく普通のものかどうか。子どもの読書習慣について、その辺が重要なのは確かなのでしょう。両親が読む本の冊数が多くなるほど子どもが本を読む頻度も増える傾向がある、という研究もあるようです。
本なんて楽しいから読むものであって、興味がない子に無理に読ませるようなものではないと思うんですが、まあ「楽しい本に出会う機会」「ごく自然に本を手にとれる環境」は用意してあげた方が望ましいのかも、というのは大筋で同感です。読みたい本があれば勝手に読むでしょ、とも思うんですけどね。
ただ、そこにもう一つ付け加えるとすれば、
「親が「この本を読みなさい」と勧めるばかりではなく、子どもが「これ面白いよ!」とお勧めしてくれた本や漫画やゲームのようなコンテンツを、親も真面目に摂取してみるのはいかがでしょうか」
とも思うのです。
まず、「自分が面白いと思うコンテンツを、他人と共有して一緒に楽しめる」って、言うまでもなくめちゃくちゃ楽しいんですよね。驚きを、感動を、笑いを、憤りを、悲しさを他人と共有できる。「そうそう、それそれ!」で盛り上がれる。あるいは、単に「いいよね……」「いい……」で通じ合える。
ある程度コンテンツに真剣に向き合っている人なら、誰もが「他人と共有する楽しさ」というものを知っていると思います。自分一人でも楽しいけれど、誰かと一緒だと二倍楽しい。
まず、この「誰かと一緒に楽しむ喜び」というものを知ってもらう、それによってますます本やゲームのようなコンテンツに真剣に、主体的にのめりこめるようになる、という要素は、一つ間違いなくあると思うんです。まず、「お勧めする喜び」「お勧めしたものをちゃんと読んでくれて、その感想を共有できる喜び」というものを知って欲しい。
もちろん上で書いたA先生のように、「自分が面白いと思ったことに共感してくれる相手」とは、それだけ真剣にやり取りできる、という側面もあると思います。同じ土俵に立った相手とは真剣に取り組まなくてはいけない。ただ「親子」というだけの関係性だけではなく、「コンテンツ仲間」という関係性をもっていることによってコミュニケーションが円滑に進む部分も、おそらくあるんじゃないかなーと。
私、子どもが3人いまして、3人とも本来結構難しい年ごろだと思うんですが、それでも普段からべらべら色んなことを喋れるのって、多くはこの「コンテンツの共有」を入り口にしたものだと思ってるんですよね。上の子が高校生になっても、未だラノベの話で一緒に盛り上がれるというのは、つくづく幸せなことだと思います。
更に、「純粋に、自分が知らなかったコンテンツと出会う機会になる」。
子ども向け漫画でも、絵本でも、動画でも、「これ、子どもに言われなかったら絶対触れなかったな」と思うコンテンツって、実際のところめちゃくちゃ多いんですよ。そして、真剣に摂取してみると、誰かを夢中にさせるだけのことはあって、やっぱり面白いもんは大変面白い。氷の城壁も、河野裕先生も、「氷の上のプリンセス」も、「世界でいちばん透きとおった物語」も、全部子どもからの「お勧め」で知りました。もちろん「これは合わんな」ってものも当然あるんですが、打率で言うと「おもしれー!」と思うことの方がかなり多い。
私もそれなりに色んなコンテンツにアンテナ張ってるつもりではあるんですが、さすがにこの年になると感覚も鈍ってくるもので、漫画でも動画でも、なかなか新しいものを見つけてくるのが難しくなっても来るんですよね。そこに、子どもたちが「こんなのあったよ!」「面白いから読んでみ!」と勧めてくれるのは、本当、オタク冥利に尽きるなーと思う次第なのです。
これも先ほど書いたとおり、リソースというものは有限です。時間もお金も体力も限られていますから、「お勧めされたものを全て摂取する」というのはちょっと難しいです。
とはいえ、子どもと「コンテンツ仲間」であり続けるためにも、自分が何かをお勧めするだけではなく、子どもの「お勧め」を今後とも出来る限り真剣に摂取していこう、と。
そんな風に考える次第なのです。
今日書きたいことはそれくらいです。
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【著者プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
Photo:Taylor Flowe