昔、実力はみんなとそう変わらないのに、上司にとても気に入られて、出世している人がいた。

そのような人は、世の中を見渡すと、今でも結構いる……というか、それが普通なのだろう。

 

私が見た人は、具体的には、以下のような行動が目立っていた。

 

「上司とよく飲みに行く」

「上司が困っていそうなときに、話し相手になる」

「上司の面倒そうなタスクについて私がやりましょうか、と手を挙げる」

「上司をよく褒める」

「上司の悪口を絶対に言わない」

「上司とプライベートで一緒に遊びに行く」

 

こういう人はよく、「ゴマをすって出世した」と揶揄されがちだが、ゴマすり自体は、私は別に悪いことだとは思わない。

なぜなら組織というのは、気の合う人同士で仕事をしたほうが、多少実力が劣っていてもうまくいくからだ。「人として合うかどうか」を基準に人事を行う事は、全く悪いことではない。

 

そもそも、彼はそれほど悪い人ではなかった。

「上にゴマをするヤツは、下には高圧的でイヤなやつ」というのが、漫画などの定番だが、現実は全く違う

ゴマをするヤツは、コミュニケーション能力が高く、みんなとうまくやれる人が多い。

 

上司に特別気を遣っているのはミエミエだったが、同僚や後輩に威張っていたわけでも、部下を虐げていたわけでもない。

ただ、上司に気に入られようとしていることが目立っていただけだった。

もちろん中には、それを苦々しく思う人もいたが、それは単なる嫉妬であって、うらやましいと思うなら、自分もゴマすりをやればいいだけの話であって、それが競争というものだろう。

 

そもそも、「圧倒的な成果を生む」ことは、普通の人には無縁である。でも、給料はたくさんほしいし、権限もあったほうがいい。

サラリーマンは、出世すればするほど、自由な時間と楽しい仕事が回ってくるから、「サラリーマンは出世しなければ悲惨」なのだ。

 

だから、お金と自由が欲しいなら、普通の会社員は、「実力を磨く」のと同時に「上司に気に入られることが絶対に必要」となる。

これから社会人になるなら、絶対に覚えておいて損はない。

 

 

しかし、このように言うと、「仕事の内容よりゴマすりが大事な会社は、衰退するよ」という方もいるかもしれない。

 

でも、それはその人の願望に過ぎず、実際には間違っている。

なぜなら、大半の上司や経営陣はバカではないからだ。

 

むしろ一般社員よりも能力が高いことがほとんど。

仕事で大きなマイナスがつくようであれば、基本的にはいくら気に入られていたとしても、出世は難しい。

課長は実力

部長は人脈

役員は運

と私の知人のコンサルタントは言っていたが、「ゴマすり」が有効なのは、「みんなと同程度の実力はある」ことが前提になる。

 

そう言う意味では、本当にサラリーマンに重要なのは

「他の人より、ちょっと優秀だと思ってもらう技術」だ。

 

ちょっと優秀だと思ってもらえる技術

なので、組織でのふるまいとして気を付けることは、以下。

 

1.質問に対して、適切に短く回答する

「問われていること」対して、結論から回答できないと、即座に「優秀ではない」と思われてしまう。目立つので注意

 

2.人から話を振られたら、最低1つは自分の考えを返す

短くても「私はこう考えます」や「もう少し調査したいです」といった回答をするだけで、「きちんと考えている人」と見られる。「同じです」とか「特にありません」は最悪。

 

3.会議や打ち合わせの準備をきちんとやる

事前に配布された資料を読んでこない人、考えてこない人は多い。準備をすれば、すぐに差がつく。

 

4.納期を自分から設定する。

「では、〇日までにやりますね」と自分からいう。納期は設定してもらうのではなく自分で決めること。納期を守るのは当然。

 

5.社内営業する

ゴマすりではなく「社内営業」と割り切ろう。結局出世するかどうかは上が決める。

 

 

別次元の優秀さもある

ただ、「ゴマすりはイヤ。圧倒的な実力をつけたい」という人もいるだろう。

それもいい。

仕事における事実として、「信じられないくらい優秀な人」は、たしかに存在している。

 

私が昔在籍していたコンサルティング会社にも、一人「異常に優秀な人」がいて、「なんか、思考回路がちがうな」と思った記憶がある。

我々のような凡人が、目の前のクライアントに提案書をセコセコ書いているときに、大型の提携ビジネスを決めて、更に合弁会社までつくってきた、みたいなレベルで違うのだ。

 

「みんな似たようなもの」と思っている人もいると思う。でも、ちがう。

スポーツや将棋などに「圧倒的強者」がいるのと同じく、仕事や研究にも「圧倒的強者」が存在しており、彼らの仕事ぶりは常人とは全く異なる。

 

要は、彼らは「デカい課題を解決すること」にリソースのすべてを突っ込んでおり、見えている世界が違う。

 

研究の世界では「テーマが決まった時点で論文はすでに半分できている」という話があるが、それと同じ。

取り組むテーマで、成果というのは大きく変わってくる。

「圧倒的成果を出せる人」というのは、そのテーマを見つけるのが上手い人のことをいう。そして、そういう人たちは、「優秀であるアピール」が必要をする必要性を感じていない人も多い。

 

しかし、上司よりも圧倒的に仕事ができてしまったり、嫉妬を受けたり、視座が異なることなどから、時に組織の凡人たちと軋轢を生むこともある。

が、彼らにとっては「時間の無駄」なので、面倒なことが起きると、さっさと辞めてしまうか、独立してしまったりする。

 

そうして、彼は新天地でデカいことをやり、あとで新聞でその人の活躍を見る、みたいなことが起きる。

こういう人生を選びたければ、それはそれで良いと思う。

 

だが、才能なんてなくとも、大半の仕事はやれるし、世の中は地道な仕事で回っているのだ。

サラリーマンを毎日、普通にできていることだけでも、誇っていい。

 

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」76万部(https://amzn.to/49Tivyi)|

◯Twitter:安達裕哉

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◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書

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Photo:Nelemson Guevarra