長女の宿題遅れについて、どうしたもんかなあと色々試行錯誤していたんですが、最近「お、ちょっとずつできるようになってきたかな」と感心したので書いてみます。

 

この記事で書きたいことは、大体以下のようなことです。

・「完成するまで人に見せたくない、言いたくない」という性質だった長女に、「進捗状況を誰かと共有する」という提案をしてみました

・最近少しずつ進捗共有できるようになってきました

・結果、長女の宿題遅れが若干改善してきました

・進捗共有には、大きく「進捗管理のアウトソース」と「進捗状況の言語化によるタスク整理」「段階的に進めることによる報酬効果」という三つのメリットがあると思っています

・「進み具合を誰かと共有する」だけで、タスク状況はある程度改善します

・一方、「完成するまで人に見せたくない」という考え方は、基本的にデメリットの方が大きいです

・進捗共有が苦手な人は、職場や仕事でも全く珍しくありません

・「中途中途で進捗状況を共有する」という習慣とそれによるメリットが、こどもたちに少しでも根付いてくれるといいなーと思っています

以上です。よろしくお願いします。

 

さて、書きたいことは最初に全部書いてしまったので、後はざっくばらんにいきましょう。

皆さん、進捗共有って得意ですか?何かしらのタスクについて、「どこまではできていて」「どこまでは出来ていない」みたいな話を、さらっと人に話せますか?特にタスクが遅れている場合、「遅れてます」って言いにくいですよね。

 

以前から書いていますが、しんざき家には子どもが三人います。長男は高校生、長女次女は最近中学生になった双子です。

以前から、長女が宿題を提出するのが遅れる、あるいは宿題を出せない、というようなことがちょっとした問題になっていました。保護者面談で話に出たり、通信簿に書いてあって知ったりしました。

 

正直なところ、宿題が出せないだけならたいした問題じゃないかな、と当初は思っていたんですが、長女、どうも「出来てない」ことが残っていると体調を崩しやすいみたいなんですね。

例えば夏休みの宿題とか、読書感想文とか、「出してない」ままだと腹痛やら頭痛の頻度が明確に上がる。そういうタイミングで確認してみると、大抵「出さないといけないと思ってたんだけど……」と、残タスクがある様子で、要は本人的にも「出さないといけないのは分かってるのに出せてない宿題がある」という状況が、ストレスに繋がっている。

 

宿題を出せないだけならともかく、体調を崩してしばしば学校に行けなくなるようだと、健康はもとより長女の勉強や学校での友人関係でも、さすがにあんまりよろしくない。

タスク管理って長期にわたって非常に重要なスキルになりますし、ストレスが体調に出やすい体質なら余計その重要性が高いので、大人になるまでにいい感じのタスク管理術が身につけられるといいかもな、という考えもありました。

そのため、長女の宿題管理状況の改善に取り組んでいました。

 

進捗共有が苦手な心理について

まず、ヒアリングから始めました。

長女の宿題進捗を見てみると、どうも「面倒くさくて全くやっていない」というわけではなさそうなのです。テキストにもワークブックにも、ある程度やった形跡はあって、問題も7~8割方は解けています。

 

これで出しちゃえばよかったじゃん、と言ってみると、「やだ」と言います。

「全部ちゃんと出来てるのじゃないと出したくない」
「あー。できてないのが残ってるから見せたくなかったんだ」
「うん」
「まだ途中だから全部終わらせてから出します、って先生に言えた?」
「言えてない……」
「叱られそうな気がするから?」
「うん」
「細かくわけで一日何ページ、とかの整理ってやってたっけ」
「やってない……」

なるほど。

 

長女、言語化がまだあまり得意ではないので訥々となんですが、まあ確認したかったことは大体聞けました。

つまり長女、まず完璧主義的な側面があって、「完成させないと」という意識が強いし、「途中までしか出来ていない」という状況を他人に開示するのをとても嫌がるみたいなんですね。それに加えて、「進捗が遅れている」ということが人に知られてしまうことにも、それに基づいて人に叱られたり細かく管理されることにも抵抗感があるようでした。

 

また、タスクを「完成させるまで」のひとかたまりでしか管理していないのでタスク粒度が荒すぎ、タスクの進捗状況が自分の中で曖昧になってしまう、という問題もあるように見えました。「どこまで終わってるか、全体の中での進捗具合が把握できていない」から、着手までの心理的ハードルが上がってしまっているわけです。

結果、宿題には遅れが発生するし、「出来てないのを出すくらいなら出さない」という選択になってしまったり、「出来ていない、ということ自体隠そうとする」という心理になってしまっているようでした。

 

とはいえ、宿題の提出状況なんて先生からも親からも本来明白で、それは本人にも分かっているのだから、そりゃストレスにもなるでしょう。

当然のことですが、「途中まで」の成果物を出すのは理想的ではないとはいえ、「全く出さない」よりは遥かにマシです。少なくとも部分点はつきますし、出来なかった部分についてフィードバックを受けることも出来ますし、「ここまで頑張ったんだな」ということは先生に伝わる。「宿題の量を調整した方がいいかな」という問題意識を持ってもらえる可能性もあります。

 

一方、「できてない」を開示しないまま、成果物自体を期限内に出さないとうのは、相手からは「何もできてない上に、それを報告もできないんだな」という認識になります。

よく言われることですが、ゼロとイチでは無限倍の差があるわけです。

完璧主義というのは、「高い品質で成果物を完成させる」という意識につながるならプラスに働くこともあるのですが、仕事の上ではマイナスに動作することの方が多いです。

 

100%完成させるって大変なタスクなので、「まず手をつける」ということ自体難しくなってしまいますし、「このできばえでは見せられない」ということでずるずると進捗遅れを隠してしまいがちにもなります。当然、中途でのフィードバックも受けにくくなります。

進捗共有、特に「遅れている仕事の進捗共有」が苦手な人、全然珍しくありません。会社にも山ほどいます。マネージャーとしては一番困るやつです。

その辺、将来的にでもうまく改善出来るといいんだけどなあ、と思っていました。

 

進捗共有のメリットについて

私が長女に提案したのは、細かい管理というよりは、「ただ「どこまで進んだか」だけでもお父さんかお母さんに共有してみよう」ということ、要は定期的な進捗ミーティングの開催でした。

それを聞いて「進んでないじゃん」とか叱ることは絶対しないし、出来てなくても全然いいから、取り敢えず「ここまでやった」だけ人に言えるようになろう、と。細かい管理よりは心理的なハードルも低いだろう、と。

 

誰かと進捗状況を共有することって、大きく三つメリットがあると思っています。

つまり、

・進捗管理のアウトソース
・タスクの言語化による整理と把握
・段階を踏んで「ここまで出来た」と思えることの報酬効果

です。

まず前提として、人間の意志は弱いものなので、「自分一人で進捗管理をする」ということには限界があります。

きちんと自分で計画引いて、その通りに粛々とタスクを実行できる、という人は、いないとは言いませんが基本的にレアです。

 

そこで、まず「自分以外の人」にタスク状況を把握してもらうことで、「あれどうなった?」と言ってもらえる、気にしてもらえる。少なくとも「言えるくらいまではやらなきゃ」という意識ができる。

起きるときに目覚まし時計を使うのって恥ずかしいことじゃないよね?と言ってみると、割とその表現が刺さったみたいで、多少抵抗感が和らいだようでした。

 

次に、「タスクの言語化による整理と把握」。

人間って、「曖昧なタスクに手をつける」ことがもっともハードル高いものなので、まずはタスクの粒度をなるべく細かくしないといけません。とはいえ、タスクの分割ってそれだけでコツが要る作業なので、最初からそこまで上手くはできませんよね。

だけど、「どこまで進んだ」というのを説明しないといけない、となると、例えば「全体では○○ページまでやらないといけないけれど、今日は××ページまでやった」みたいに、自然と「粒度を細かくしたタスク」を言語化することになるわけです。正直、これだけでも十分、タスクって手をつけやすくなります。手をつけさえすれば、宿題なんてたいした作業量じゃないから十分終わるんですよね。

 

そして、「ここまではできた」という認識と出力による報酬効果。

親としては、「進み具合を共有できるだけで十分偉い」わけで、もちろん「○○までできた」って言われれば褒めます。本人的にも、「少なくともちょっとは進んだ」「それを報告できた」ということで、達成感も生まれますし、褒められることによる自信にもつながります。

この辺、例えば仕事でも「進捗共有なんてなんのためにやるんですか?」っていう人いるんですが、ご説明すると大体納得してもらえる事由でもあります。

長女とも、メリットや意味まで何度か話し合いつつ、「タスク進捗共有」を少しずつ進めてきた、というわけなのです。

 

進捗共有出来るようになるためのサポート

言うまでもありませんが、上記のようなことがサクサクできるようになり、宿題遅れ改善しました!というわけでは全然、全くありません。

何度か書いているように、子どもの成長は非線形で、今日できたことが明日はできなくなる、なんて全然珍しいことではありません。お話ひとつで物事が改善すれば誰も苦労しません。「タスク状況の共有」は、実は小学校の頃からのプロジェクトで、今でもまだ試行錯誤中です。

 

ただ、ちょっとずつでも改善できるといいなあと思いつつ、有効だったかも知れないと思っている工夫としては、

・「やったパート」について、長女の知見を元に色々教えてもらう形にした
・「今日はどこまで進んだ?」といった直接的な進捗確認ではなく、「今日やったところ、どこが難しかった?」というような間接的な確認にしてみた
・共有のタイミングはご飯のあとなど、他の談笑が一通り落ち着いたあとの話にしてみた

辺りがあります。あんまりストレートに「進捗確認!」といった場にしてしまうと構えてしまうかなあと思い、なるべく「学校であったこと」や「友達と話したこと」「今はまっている漫画の話」のついで、それらの楽しい話の延長にしてあげられるようにしたいと思いました。

 

また、細かい成功体験が積めるようにと、「○○ページまでできた」というだけで「××できるようになったのすごいな」「××ってどんなのだっけ」と教えてもらうようにして、達成感と共に、長女の教えたい欲が満たせるようにしてみました。

 

で、ちょうどこれを書いている昨日、こちらが何も言わなくても「今日は○○と××やったよ、何ページまで」というようなことが言えたので、進捗共有が苦手だった長女も、少しずつながら「進捗共有による成功体験」が積み上がってきたかなあ、としみじみしたので、ちょっと書いてみたくなった、という次第なのです。

まあ、宿題の遅れが完全に解決したわけでは全くなく、まだまだ道半ば、場合によってはやり方自体変えるかも知れないので、まだまだ「成功」とはいえないですし、向き不向きもあると思うので一般化するつもりもないのですが。

こういうこともあった、と思って読んでいただけると幸いです。

 

つけくわえますと、この時期は新社会人の皆様もぼちぼち五月病まっさかりの時期ではないかと推察しますが、ご自身のためにも「進捗共有」はしっかりなさった方がいいのでは、と老婆心から申し上げます。

 

最後にもう一度、簡単にまとめてみますと、

・進捗共有は、大人でも苦手な人が多い、けれど重要なスキル

・進捗共有するだけで、「タスク管理のアウトソース」「タスクの言語化による整理」「段階を踏むことによる報酬効果」などが得られそう

・長女に進捗共有のコツを教えてきて、最近若干ながら改善してきた気がする

・ただ、上手くいくまでに時間はかかるし、向いてる人も向いてない人もいる

・将来的にでも、少しずつ進捗共有が身につけばいいなあ、と思っている

以上のような次第になります。よろしくお願いします。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
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(2025/6/2更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

Photo:Simeon Galabov