この記事で書きたいことは、以下のようなことです。
・今年の劇場版ドラえもん、「のび太の絵世界物語」が大変面白く、素晴らしい一作でした
・私が劇場版ドラえもんに期待することの95%くらいは網羅されていました
・ひみつ道具のチョイスといい、伏線の埋め方と回収の仕方といい、さりげない科学や歴史の知識といい、「ザ・劇場版ドラえもん」という感じでした
・制作者さんのドラえもんへの熱量と解像度の高さがうかがえます
・あとヒロインのクレアが、恐らくドラえもんの全シリーズを見渡しても非常に稀少である「老人語を使う幼女」、いわゆるのじゃロリのキャラで極めてかわいいです
・唯一、本当に唯一残念な点は悪役の描写と行動の浅さ
・全体的に見れば極めてハイレベルな映画ドラえもんだったので皆さん観てください
以上です。よろしくお願いいたします。
さて、書きたいことは最初に全部書いてしまったので、あとはざっくばらんにいきましょう。
先に断っておきたいのですが、この記事には映画「ドラえもん のび太の絵世界物語」についてのネタバレが含まれます。鑑賞予定がある方、あるいはこの記事タイトルを読んで観てもいいかなと思った方は、是非観終わってから読んでいただきたい次第です。
劇場での公開は終わっていますが、U-NEXTで観られます。損はさせません。
まずしんざきのドラえもん歴についてなのですが、コミックスは全巻読んでいる筈で、大長編についても、F先生が執筆された漫画版については「夢幻三剣士」までは全て読んでいます。
しんざきは元々アニメをあまり観ない人間で、漫画に興味が偏っているため、劇場版については観たり観なかったりという感じだったのですが、子どもが産まれたことに伴い、「奇跡の島」くらいからの劇場版は大体子連れで観ています。
特に「ひみつ道具博物館」と「月面探査記」は、歴代大長編ドラえもんでもかなり上位に入るくらい面白かった。
そんなしんざきなのですが、「のび太の絵世界物語」を次女と観にいったらめっちゃくちゃ楽しめました。次女も楽しめましたが、私も目一杯楽しめました。大人も子どもも同じくらい真剣に楽しめるコンテンツ、本当凄いですよね。
今回は、大長編ドラえもんの普遍的な魅力の話から、「絵世界物語」のどこが面白かったのか、という話を書きたいと思います。
大長編ドラえもんの魅力とは何か
私が劇場版ドラえもんを観る時には、大体以下のようなことを期待します。
・のび太たちがピンチに陥り、そこから逆転することによるカタルシス
・悪役の魅力や行動の納得感、強大さ
・レギュラーキャラがそれぞれの持ち味や特技を活かして活躍すること
・ひみつ道具活用のアイディアと納得感
・序盤・中盤に出てきたひみつ道具が、最終盤のピンチ解決の糸口になる展開
・食事シーンが美味しそうなこと
いかがでしょう。食事シーンについてはともかく、大体同じような点に期待される方は多いのではないでしょうか?
まず、大長編ドラえもんの一番の味というか、楽しみどころが「大ピンチからの脱出」であることについては、恐らく議論を必要としないでしょう。
普段のドラえもんと違って、大長編では大抵の場合、のび太たちが大ピンチに陥ります。例えば「海底鬼岩城」ではポセイドンの稼働によって世界が滅亡の危機に晒されますし、「宇宙開拓史」ならコーヤコーヤ星がもう少しで破壊されるところでした。「日本誕生」ではドラえもんのひみつ道具すら通じない相手に、あと一歩でドラえもんたちは全滅するところでした。
こういう、「あわや」という大ピンチから、あるいは登場キャラの機転で、あるいはひみつ道具の意外な活用で、あるいはゲストキャラクターたちとの絆で、のび太たちが大逆転する。
この逆転の気持ちよさこそ、「劇場版ドラえもん」の最大の魅力だと思う次第なのです。
それに伴って、まず「敵役」「悪役」には可能な限り有能であって欲しいし、強大であって欲しい。
「宇宙開拓史」のギラーミンも、「宇宙小戦争」のドラコルルも、「日本誕生」のギガゾンビも、それぞれめちゃくちゃ有能・あるいは強力であり、だからこそ彼らを打ち倒すことがカタルシスになりました。
なにせ、ドラえもんが持っているひみつ道具は、基本的には便利・強力過ぎる代物であって、何の制限もなく活用できてしまうと、大抵の問題が解決してしまいます。
だからこそ、たとえばなにかしらの問題でひみつ道具の使用が制限されるとか、あるいは敵陣営が強力・ないし有能過ぎてひみつ道具だけでは問題が解決できないとか、そういう状況が「ピンチ」の演出には必須なわけです(あと、ドラえもんが焦るとなかなか目的のひみつ道具が出てこないとか)。
この点では、旧作「宇宙小戦争」のドラコルルが、歴代ドラえもんでも最強格の有能キャラだったことは、これまた論をまたないでしょう。
ドラえもんのひみつ道具によるあらゆる細工を全て見破り、知略と組織力だけでドラえもん一行を処刑の寸前まで追い詰めてみせた。「スモールライトの制限時間」という反則技以外、ドラコルルに勝てる要素は存在しなかった、と言っても良いと思います。
また、賛否が分かれるかも知れませんが、私自身は「ゲストキャラが活躍し過ぎるよりは、レギュラーキャラがそれぞれの特技や持ち味を活かして活躍してくれる方が好み」です。
もちろん大長編のゲストキャラはそれぞれ魅力的なのですが、元々ドラえもんのファンはのび太たちレギュラーキャラに思い入れがあるわけで、やっぱり既存キャラに見せ場を作ってほしいわけです。
そんな中でも、例えばのび太の銃の腕前とか、スネ夫の工作スキルとか、ジャイアンの歌とか、各キャラクターの元々の特技が活かされるともっと嬉しい。劇場版、スネ夫が弱音を吐きながらも軍師ポジションになる展開、大変味があって良いですよね。まあそのせいで出来杉が登場できてない気もしますけど。
で、元より「ドラえもん」の魅力の源泉と言えば、奇想天外な能力をもったひみつ道具と、そのひみつ道具によって起きる奇想天外な展開なのであって、最終盤の大ピンチについてもそこがトリガーになって欲しい。
「序盤に出てきたこの道具が、こんな形で状況解決に結びつくのか!」という気持ち良い驚き。定番の展開ながら、やはりこれがあるからこその大長編だと言って良いと思うわけです。宇宙開拓史でタイムふろしきが最後の大逆転に紐付く展開、今でもトップクラスに好きです。
つくづく思うんですが、ドラえもんの「ひみつ道具」のアイディアの「輝きが衰えない斬新さ」って本当凄いと思うんですよね。
例えば、「絵世界物語」では、重要なアイテムとして「水加工用ふりかけ」というひみつ道具が出てきます。ふりかけるだけで水を様々な形に加工できるパウダー、というひみつ道具でして、私が大好きなひみつ道具の一つでもあるんですが、これ「ドラえもん」に初登場したのってコミックスで言うと23巻、発売1981年です。約45年前ですよ?
半世紀前に考えられたアイディアが、今でも何の違和感もなく「未来の不思議なアイテム」として通用するし、ストーリーの重要な一角を担える。この辺、「ドラえもん」という作品がもつ色褪せない普遍的な面白さというか、藤子F先生の発想力が本当天才的であったとしか言いようがないなーと思う次第です。
あと、あんまり関係ないですが、食事シーンが美味しそうなの個人的に大事。「大魔境」の植物改造エキス、最高に美味しそうでした。
「絵世界物語」の面白さについて
さて、上記のような話を前提に、今年の劇場版である「絵世界物語」はどうだったのでしょう?と言いますと、
一言で言うとマジでよく出来てました。
本当、「我々が大長編ドラえもんに期待する要素」の95%くらいはきちんと抑えられていて、大人も子どもも楽しめる出来。
ここ10年くらいの劇場版ドラえもんでも、個人的には「月面探査記」を越えてトップかも知れない、と思うくらいの完成度でした。
本作のテーマは「絵」でして、のび太たちは「絵の中」に入り込むことで様々な冒険を経験するのですが、ある時、絵に描かれた中世ヨーロッパの国、「アートリア公国」から来たという「クレア」という少女と出会います。
まず、このクレアがもの凄く可愛いという点については、ここまで挙げてきた要素からは外れる点ながら、特筆しておく必要があるでしょう。
クレア、天真爛漫な振る舞いや、元々のキャラデザの完成度もさることながら、一人称が「わらわ」で、「○○じゃ」とか「○○かろう」といった古風なしゃべり方をする少女という、いわゆるのじゃロリ。
私が知る限り、ドラえもん世界で「のじゃロリ」のキャラクターが登場するのってクレアが史上初だと思うのですが、天真爛漫でありながら自分勝手ではなく、どことなく高貴でありながら気さくでもあり、とにかく好感度が高い描写をされまくっています。
このクレアの可愛さを堪能するだけでも、「絵世界物語」を観る価値は十分にあります。
ちなみに、クレアとセットで登場する小さなコウモリのような「チャイ」や、アートリアに住む絵が得意な少年「マイロ」、マイロの絵を評価する美術商人「パル」なども非常に重要な位置を占め、それぞれ魅力的なキャラクターです。
マイロの「大好きなものを大好きだと思いながら描けばいい」って台詞、劇中の最初から最後まで、あるいはもしかすると「大長編ドラえもん」というシリーズ自体すら貫く超重要なキーワードでして、この「絵世界物語」という作品の中核を占めるという意味で、歴代大長編全てを見通しても極めて重要なゲストキャラクターだと思います。影の主役と言って良いです。
ちなみに、のび太の父であるのび助が絵画について解説するシーンがあるんですが、これについても、のび助が昔画家志望だったという設定を知っているファンにとっては嬉しいシーンです。さり気なく設定が生きている演出好き。
で、今回の作中でも、のび太たちには大ピンチが降りかかり、それを解決するために頑張るわけですが、この時のキャラクター活躍のさじ加減やひみつ道具の活用も、「絶妙」と言って良い形でした。
クレアやマイロたちゲストキャラクターにもきちんと役どころが与えられ、この子たちがいなければ状況解決はあり得なかった、と思える程度に重要でありながら、しかしレギュラーキャラの活躍を奪うわけではない、素晴らしいさじ加減。
のび太たちの特技を活かした展開といい、ひみつ道具だけでは全てが解決しない状況設定のうまさといい、この辺あまりにも「分かっている」人の仕事過ぎます。スタッフの中に強火の劇場版ドラオタがいるとしか思えない絶妙さです。
核心的なネタバレは避けたいのですが、今回「ひみつ道具の活用」については「そう来るか」具合がより強力になっておりまして、敵の強大さも含めて、当初「こうなんだろうなー」と予想した方法だけでは全てが解決しませんで、もう一段深くまで視聴者を連れていってくれる展開になっています。
こちらも、「宇宙開拓史」と同質なカタルシスを与えてくれると言っていいでしょう。次女が言ってたんですが、へたっぴドラえもんグッズ化して欲しいです。
食事シーンについても、恒例のグルメテーブルかけによる食事シーンもさることながら、流しそうめんを食べるシーンも大変美味しそうで良かった。このシーンでもそうなんですが、クレアにまつわる様々な伏線は、最後の最後で結実することになり、これも作劇の妙と言っていいでしょう。
唯一、本当に唯一、私が「絵世界物語」で惜しいと思うポイントは、「悪役・敵役の強大さ・有能さ」についてです。
今回、狂言回し的なキャラに「ソドロ」がいまして、彼が悪役ポジションだろうなーというのは早くから判明するので別に書いちゃってもいいだろうと思うのですが、彼がお世辞にも有能なキャラとは言い難く、かといって完全なコメディリリーフというわけでもない中途半端さで、結果的に他のキャラが割りを食っちゃってる感があるんですよ。
例えるなら、はなかっぱ世界のガリゾウがそのまんま「相棒」に出てきちゃったような感じです。
コメディならコメディでそれに振り切ってしまえばいいと思うのですが、やっていることは笑って済ませられる範囲を超えているので、単なる三枚目ギャグキャラとも受け取れない。結果、「なんでそれが見抜けないの?」とか、「もっと早く手を打ってれば解決できたのでは?」感が強めに見えてしまって、唯一ここだけが100%楽しめない点だなあと。
行動理由ものび太に一瞬で論破されてしまうくらい浅いし、なによりパルがこの一点だけで株を下げまくったキャラになってしまって本当に気の毒。最後の方の展開見る限り、パルってもっと有能なキャラの筈なのに、「でもソドロがアレだしな……」になってしまう……。
一方ラスボスについては、歴代の大長編ドラえもんの中でもほぼ最上位格の超強力なキャラなのですが、これもソドロのせいで若干ながら割りを食ってしまっている感はあるように思いました。
とはいえ、ラスボスとの戦いできちんとのび太たちの特技が活かされる点や、絶望的な展開からの最後の逆転展開はもうカタルシス満点だったので、総合的に言えば十分ハイレベルな悪役だったと言っていいと思います。
長々と書いてまいりました。
結局、私が言いたいことは
「悪役の描写だけちょっと惜しい点はあるけれど、絵世界物語は全体的に言うと95点くらいの極めてハイレベルな劇場版ドラえもんであり、なによりクレアがあまりにも可愛いので、ドラえもんがお好きな方は是非U-NEXT辺りで視聴してみてください損はさせません」
「子どもも大人も楽しみ続けられる、「ドラえもん」という作品を作った藤子F先生は本当に偉大」
の二点のみであり、他に言いたいことは特にありません。よろしくお願いします。
今日書きたいことはそれくらいです。
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【著者プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
Photo:Sean Chen











