「自動運転」は破壊者か 攻めるグーグル、悩むトヨタという日経の記事。

企業の本質に迫る話だと思ったので、少し考えてみる。

 

まずこのタイトル。破壊者か?ではなく明らかに破壊者ですね。

Googleはあらゆる分野のプラットフォームとなり得るソフトウェアを開発しようとしています。すべての分野でトップになるのは不可能(というか、世の中が許さない)としても、自動車ソフトウェアの分野ではトップを取る可能性が十分あります。

 

一方で、交通事故の年間の死者の数は日本だけでも年間4000人以上。これに大怪我や障害を負った人の数を含めれば、交通事故の被害者は数万人になると思われます。

このことを考えれば、自動車を作っているトヨタは、大きな社会的責任を追っているわけで、選択肢は「自動運転」一択のはずです。条件さえ揃えば、人間が運転するよりも機械が運転したほうがより安全であるのは、人間と機械の反応速度から見ても自明でしょう。

 

でもトヨタは悩んでいる。自動運転が義務付けられれば、ほとんどの自動車は規格化されるだろう。当然、自分で所有する選択肢は無くなり、ほとんどの自動車はカーシェアリングなどで共有財産となる。

あまりおもしろみのない車が、世の中にあふれるわけです。

 

もちろんそうなれば、トヨタは没落の一途をたどる。そして周辺業界も同じです。自動車部品、自動車保険、タクシードライバー、駐車場、これら車の周辺業界も斜陽となる。

 

でも、おそらくトヨタは思い切った手を打てないでしょう。要は、「自社のビジネスモデルを破壊する選択肢」を思い切って取れる会社は殆ど無いということだと思います。

かつて、ピーター・ドラッカーは「自らのビジネスを自らの手で陳腐化しなければ、いずれ新手のイノベーターに滅ぼされる」という趣旨の言葉を残しています。自分たちのビジネスを自分たちで破壊し続ける企業だけが、長い時の試練に耐えて生き残る。

 

また、個人レベルであっても自分がやっていることの陳腐化のスピードは意外と早いと認識したほうが良さそうです。例えば「営業職スキル」は陳腐化が早いスキルだと最近では感じています。

 

営業は非常にハイコストです。何しろ効率が非常に悪い。10件お客様を訪問した挙句、受注は2件だけなんてザラにある。しかもネットで購入出来る商品と比較され買い叩かれることも多い。

「対面で買いたい」という人が多かったのは過去の話です。

 

大して人脈もつかない営業であれば、本当に食えなくなる可能性があります。自分のスキルが陳腐化する前に、陳腐化を待つ側から、陳腐化させる側に回ること。それがとるべき道ではないでしょうか。

 

photo: http://punta.jp/archives/3647