どうもしんざきです。

皆さん五月病ですか?私くらいの五月病ベテランになると、4月初週くらいにはもう五月病になりますし、一年の三分の二くらいは五月病のままで過ごしています。たゆまぬ五月病を続ける精神力が重要です。

それはそうと。

 

新入社員の研修にかかわったことは何度かあります。

オリエンテーションに何回か顔を出しただけのこともあれば、研修コースの策定に口を出したことも、割とがっつり研修の講師側に参加したことも一応あります。

新入社員のグループワークに人狼ゲームを導入しようと提案して却下されたこともあります。面白いと思ったんですけどね、新人研修で人狼ゲーム。

 

そういった中で、意見が分かれることが多かったのが、「新入社員の自主性」問題です。

極端に言っちゃうと、私、新人を育てる時に「自主性」を考慮する必要なんて一切ないんじゃないの、と思ってる派閥なんですよ。いや、自主性を考慮するだけなら別にいいんですけど、少なくともそれをお題目の一つに据えて、自主性を重要項目の一つに位置付ける必要は全くない。

必要ないというか、弊害の方が多いんじゃないですか、と。

 

何故かというと。

 

「自主性」とか「自分で考える」というのは、ある程度仕事がわかって、一人前に作業ができるようになってから、初めて身に着けることが出来るようになるものだから。

「自主性」をテーマにしてしまうと、それを理由に新入社員が放置される時間が増えて、結局何もすることが出来ず、「自主的に行動しようとして何も出来ない時間」に慣れてしまうから。

「自主性」は、先輩社員が「自分で考えてみろ」を理由に教育の手を抜いてしまうことの大きな理由になってしまうから。

 

 

先日、はてな匿名ダイアリーでこんな記事を読んだんです。 

自分で考えろは新人に使ってはいけないと思う

世の中には、なぜか自分で考えろを使ってしまう人が多い。

作業手順を教えるのでもあえて簡略化して教えたり、

結果が間違っていた場合もどこが悪かったのかをすぐに教えず、考えてみろと放置してしまうパターンが横行している。

しかし、これをやったところで考える力などつかない。

むしろ仕事に対して恐怖感を覚え、萎縮してしまい、緊張感から物覚えが悪くなったり、

怒られる恐怖から聞くべきことを聞くこともできず、結果さらにミスってしまうという悪循環に陥りやすい。

結果として成長を鈍化させているという残念なパターンが大半だ。

これ、正直私、全面的に同感でして。あー先に書けばよかったなーと思ったくらいです。

 

「守破離」って言葉、ご存じですか?元々は日本武道の言葉だったと思うんですが。茶道だったかな。

「守」が、指示通りの作業を、指示通りに進めることが出来る、という段階。第一ステップですね。

「破」が、作業を分析して、改善したり改良することが出来る、よいう段階。第二ステップです。

「離」が、当初の作業を離れて、自分で新たな技術、新たな仕事を創造出来るという段階。

 

これ、「自分で創造できるようになりましょう」という意味の言葉じゃないんですよ。守があって初めて破と離がある、つまり「まず型通りに出来るようにならないと、その先に進むことは出来ない」という話なんです。

 

そして、「型通りに出来るようになる」というのは、分野にもよりますが、決して簡単な話ではありません。

武道程ではないかも知れませんが、仕事だって、最初の段階として「指示通りの作業を出来るようになる」為に、覚えなきゃいけないこと、身に着けないといけないことって山ほどあります。

そして、大抵の場合、その為には入念なサポートが必要になります。

 

皆さん、新人の時に、「同じことを何度も聞くな」って言われたことありませんか?

私、逆に、「同じことを何度も聞け」って言うようにしてるんです。「忙しくて答えられない時もあるけど、あやふやで進めるくらいなら同じこと何度も聞いて」って。

 

大体において、新入社員って「何が分からないのかが分からない」状態な訳じゃないですか。

一通り説明して、「分からないことあったら聞いて」って言っても、「あ」「えーと」とか言って何も有効な質問が出来ない状態な訳です。

質問をする為には、それ自体ある程度理解を必要とするものなんです。

 

ただでさえ質問をすること自体が大変なのに、更に質問のハードルを上げてしまったら、聞けるものも聞けなくなりますよね。

質問のハードルなんて、低すぎるくらいで丁度いいと思うんです。

だから「同じこと何度も聞いて」って言いますし、それで自分の業務に差し支えが出たら、「ごめん今ちょっと無理だから〇分後にもっかい来て」って言えばいい。

 

ただ、例えば昔、同じように新人に教えている人の中には、「ちゃんとメモとって」「一度で覚えて」「何度も同じこと聞かないで」っていうスタンスの人もいて。

そういう人に、「同じこと聞かないでって酷じゃないですかねー」って言うと、「いや、聞いてばっかりじゃなくて、自分で考える経験も必要だよ」って言われるんです。

 

うん、一面、そうかも知れません。自分で考える、というのは重要なことです。

 けれど、その重要さは、多分「会社に入って、まだ仕事もろくに覚えていない」という状態で必要とされる重要さではない。守破離の守も出来ていない状態で破を求めてはいけない。

 

「自分で考えろ」って言うの、楽なんですよね。ことこまかに教えなくていい、質問に答えなくていい。そして、ちゃんと「自主性を育てる」っていう建前も出来る。

けど、それって「先輩社員にとっての甘え」に他ならないんじゃないかなあ、と。ちゃんと質問に答える手間をとりたくないから、「自主性を育てる」っていうお題目に甘えてるだけなんじゃないかなあ、と。

 

 

悪いことに、「自主性もって仕事して」という言葉のもと右往左往してるだけ、という時間に慣れてしまうと、新入社員の側も「あ、自主性ってこんなもんでいいのかな」って思っちゃう場合があるんですよね。

肝心の、守が出来て破に進む段階で、本当に期待されることが出来なくなってしまう。かつて、破を求められて右往左往していた記憶が、実際の破を行う時の邪魔になってしまう。

 

これ、先輩社員から見ても新入社員から見ても、「自分で考える」とか「自主性」という言葉が大きな弊害になってしまっているということだと思うんです。

 

いや、もちろん、「自分で考えて」って言われて本当に自分で色々考えて、しかも成果まで出しちゃう新人、ってのも中にはいますけどね。

そんなのはモンハンで言うと希少個体とか特異個体っていうレベルのオーパーツな人なので、多分会社側がそういうレベルを求めてはいけない。

 

だから私は、「自主性」「自分で考える」という言葉は、少なくとも一人前に作業が出来るようになるまでは封印するくらいで丁度いいんじゃないかなあ、と考えているわけなんです。

 

 

長くなりました。

五月病ルーキーの新入社員の皆様におかれましては、日々大変だとは思いますが、五月病を乗り越えて健やかに企業の中での地歩を築いていっていただければなあ、と思う次第です。

そして、いつか私のように立派な五月病ベテランになってください。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

【プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

 

(Photo:Efrén)