Googleの働く環境についての話題といえば、「変わったオフィス」や、「70、20、10ルール」が有名だが、もう少しコアなことが知りたかった。そこで話題になっていた、How Google works 「私達の働き方とマネジメント」という本を読んだ。Googleの元CEOであるエリック・シュミットが書いた本なのだが、非常に面白い本だった。
本の帯には「Googleはこの方法で成功した!」と煽りコピーが記載されているが、残念ながら「すぐに使えそうな方法」は書いていない。その代わりにもっと役に立つことが書いてある。それは、「Googleがどのように問題を定義し、答を出したか」と、「Googleの考え方」である。
そして、そのことがまさにこの本の核心であり、「Googleの経営者のように考える」体験ができる貴重な本だ。
3分ほどで読めるよう、自分用にまとめたので、共有したいと思う。
まず彼らはこのような問をたてる。
問1 「現代は、どのような時代か?」
彼らの解答は次のようなものであった。
「現代は、インターネットの世紀である。具体的には、3つの生産要素が格段に安くなった。情報、インターネットへの接続、そしてコンピューティング性能」である。
問2 「その結果、企業の成功に最も必要な要素は何か?」
彼らは、こう解を出した。
「プロダクトの優位性である。情報の管理能力でも、流通チャネルの支配力でも、圧倒的なマーケティング力でもない。」
彼らがこの解の第一の根拠としたのが、①消費者がかつて無いほどの情報を手にした ②消費者の発言力が増した ことの2つだ。すなわち、企業の資本力で消費者のコントロールができなくなったということだ。
さらに、プロダクトの優位性が重要であるとした第二の根拠が「新たな試みをし、失敗するコストが大幅に低下した」ことである。これが顕著なのがハイテク業界、製造業である。
すなわち、プロダクト開発のスピードがとても重要になった、ということだ。
AmazonのCEOであるジェフ・ベゾスがこう言っている。「古い世界では持てる時間の30%を優れたプロダクトの開発に、70%をそれがどれほど素晴らしいプロダクトか吹聴して回るのに充てていた。それが新たな世界では逆転した」
問3 「優れたプロダクトをスピードを持って開発するのに必要な人材はどのようなものか?」
Googleの答は、「スマート・クリエイティブと言われる人々」である。
スマートクリエイティブは、コンピューター科学者、医師、デザイナー、科学者、映画監督、エンジニア、シェフ、数学者など、高度な専門知識をもっており、実行力に優れ、単にコンセプトを考えるだけでなく、プロトタイプを創ることのできる人々だ。
また、ビジネスセンスがあり、専門知識をプロダクトの優位性にや事業の成功に結びつけて考えることができる。競争心も旺盛で、時には長時間労働に至る猛烈な努力も欠かさない。
従って、「スマート・クリエイティブ」、すなわち「創りだす人々」をどのように集めるか、惹きつけるかがもっとも重要な課題となる。マーケターや営業、企画屋、管理者は重要ではないのだ。
問4 「スマート・クリエイティブを惹きつける、良い会社にするにはどうしたら良いか?」
そして、この本の核心である 「スマート・クリエイティブ」に存分に働いてもらうための条件が列挙される。Googleの答えは、6つ。要旨は以下のようなものである。これらはGoogleの考え方を強く反映している。
1.企業文化
・社員同士の距離を近づける。
・エライ人の言うことを聞かない。
・「悪党」すなわち、傲慢な人間、妬む人間からは仕事を取り上げる。
・人に「ダメ」といわない。
2.戦略
・計画は流動的に。
・市場調査はせず、技術的アイデアを中心に据える、顧客に聞かない。
・利益より「大きくなること」を重視する。
3.人材
・採用は絶対に妥協しない。学ぶ意欲の高い人物を採用する。大事なのは「何を知っているか」ではなく、「これから何を学ぶか」である。
・好き嫌いではなく、人格と知性で選ぶ。
・採用を全社員の担当業務に含め、「スゴイ知り合い」を紹介させる。貢献度は評価に入れる。
・報酬は、低いところから始め、成果を出す人にはずば抜けた報酬を支払う。
4.意思決定
・データに基づき、決定する。
・最適解に達するため、意見の対立を不可欠とする。
・収益の8割を稼ぐ事業に、8割の時間をかける。
5.コミュニケーション
・役員会の議事録であったとしても、法律、あるいは規制で禁じられているごくわずかな事柄を除き、全て共有する。
・会話を促進する。話しやすい雰囲気を作る。時にはコミュニケーション過剰と言われるくらい。
6.イノベーション
・イノベーションとは、斬新で有用なアイデアを生み出し、実行に移すこと。
・3つの条件を検討する。①それが対象とするものは、数百万人、数十億人に影響をおよぼすような大きな問題あるいはチャンスだろうか。②既に市場に存在するものとは根本的に異なる解決策のアイデアはあるのか。③根本的に異なる解決策を世に送り出すための画期的な技術は既に存在しているのか、あるいは実現可能なのか。
・イノベーティブな人間に、イノベーションを起こせという必要はない。自由にさせれば良い。
・ユーザーに焦点を絞れば、後は全部ついてくる(カネを出す「顧客」ではなく、サービスを利用するユーザーに焦点を絞る)
・リソースの70%をコアビジネスに、20%を成長ビジネスに、10%を新規ビジネスに。
もちろん、これはGoogleの考え方である。安易にマネをできるものではないし、異なる考え方を持つ方も多いだろう。
しかし、「次の時代の働き方」を模索する方には大変価値のある本であると断言できる。
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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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