働いてある程度経つと、リーダースキルを求められる。もちろんリーダーは天才でなくては務まらないものではなく、だれでもできる仕事だ。
しかし、リーダーと一般社員は、いわば別の仕事であって、作業者の延長にリーダーがいないのは周知のとおりである。
そのため、リーダーになりたての頃は求められる成果を勘違いしたり、スタイルを変えることができず苦労する人が多い。
前職では企業に向けて多くの研修を行っていたが、最も人気なのは年間を通じて管理職研修であった。リーダーとしてのスキル、マネジメントの手法を学びたいということで数多くの方が学びに来た。
だが、セミナーで得たノウハウやや本を読んで得た知識は実践しなければ身につかない。それは、どんな技術も同じである。
数学は自分で手を動かして問題を解かなければならない。
英語は実際に人と話さなくてはいつまでたっても身につかない。
プログラミングは、実際にソフトを作る必要がある。
ゴルフは、自分でボールを打ち、コースに出る必要がある。
リーダーの技術も全く同様である。テクニックや考え方は勉強する必要があるが、実践は不可欠だ。
したがって、経験の浅い新米リーダーは、大変苦労することになる。
だが、そんな状態の人でも一つだけ、スキルに関係なく必ずでき、メンバーの信頼につながる行動がある。私はそれを、ある会社のマネジャーにインタビューをした時に学んだ。
彼は、4月からマネジャーに昇格した5人の部下を率いるチームリーダーであり、責任を果たすことを会社から強く期待されていた、
だが、彼の経験の無さが災いし、チームは幾つもの問題を抱え込むこととなった。
チームの一人が顧客との接点でトラブルをおこす
チームの一人がスキル不足で悩みをかかえる
チームの一人が納期遅延
心配したトップがこのチームの内情をメンバーにヒアリングした。だが、チームは崩壊するどころか、トラブルによってますます結束が硬くなっていた。皆リーダーを助けようとしていた。
なぜチームはまとまりを保ったのか。
実は、リーダーは特別なことをしているわけではなかった。飲み会を設定しているわけでもなく、話を一生懸命聞いているわけでもなかった。ただ、窮地においても「機嫌が良かった」だけだった。
メンバーは言った。
「トラブルの報告をしても、リーダーが不愉快そうな顔をしないので相談しやすい」
「リーダーが落ち込んだり、弱音を吐いたりしないので、精神的に楽」
塩野七生氏の著作「ローマ人の物語」において、最も有能であると評されるリーダー、ユリウス・カエサルはこう評されている。
生涯を通じて彼を特徴づけたことの一つは、絶望的な状態になっても機嫌の良さを失わなかった点であった。
リーダーがなすべきことや、テクニックは数多ある。が、それよりもまず最初に必要なのはあらゆる状況において「機嫌良く振る舞う」ことなのかもしれない。
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