ビジネスパーソンにとって、なぜ「書く力」が必要なのか
皆さんは仕事で文書を書く機会があるだろうか。 営業であれば日報を書いたり、マーケティング担当であれば、こんな風にブログ記事を書いている人もいるかもしれない。
書くことが本業ではないという人でも、お客さんや社内の関係者にメールを書く機会はあると思う。最近はチャットツールなどの発達で、仕事のやりとりはメールやチャットで済ますという人も多いのではないだろうか。
私も仕事のやりとりはメールで済ますことが多いのだが、時にメールの書き方が悪く、仕事に支障をきたすことがある。 何度もやりとりをした上に手戻りが発生し、なかなか仕事が進まない。
仕事で使う以上、メールは立派なビジネス文書だ。
そして、そもそもビジネス文書の目的は、その趣旨を読み手に理解してもらい、意図する通りに行動を起こしてもらうことだ。
いくら丁寧に時間をかけてメールを書いたとしても、依頼内容を理解してもらえない、相手が行動を起こしてくれなければ結果的には意味がない。
普段そこまで意識してメールを書いているだろうか。 最悪の場合、読み手はあなたのメールをいつもわかりにくいと感じている。読んですらいないかもしれない。
それでも「あなたのメールはいつもわかりにくいです」と指摘されることはない。心の中で「メールがわかりにくい人」という烙印を押されて終わりだ。
「書く力」が、あなたのビジネスの成果を左右する・・・というのは言い過ぎかもしれないが、隠れた必須スキルであることは間違いないだろう。
書く力を身につけるための3つのポイント
いきなり本文を書き出さず、「誰に」「何を伝えるか」を決める
わかりやすい文書を書く最大のコツは、書く前に「誰に」「何を伝えるか」をじっくり考えて決めることである。
書くのが上手な人は、共通してこのプロセスを重視している。 逆説的だが、このプロセスを怠ると後で余計に時間がかかることになる。
書くのが苦手な人は、パソコンに向かってすぐに文字を打ち始める。締め切りまでに返信してもらいたいのか、あるいは部署に回覧してもらいたいのか、メールの目的やゴールを決めずにとにかく書き始める。
結局途中で手が止まり、読み返したところで何を言いたいのかわからない文章が出来上がっている。時間もないので「ま、いいか」と送信ボタンを押すが、相手からは一向にメールの返事が返ってこない。
忙しい人ほど焦って書き出したくなる気持ちはとってもわかるが、まずはその衝動を抑えてみよう。 むやみやたらと書き始めず、「誰に」「何を伝えるか」を考える。たった1分でもいいから考える。この2つさえ決まってしまえば非常にわかりやすいメールになるし、何しろ書き手自身が楽になる。
「読み手」をできるだけ具体的に思い浮かべる
心に響かない文書は、たいてい「読み手」が不在である。特に報告書やブログ記事など、不特定多数に向けた文書で起きやすい。誰にでも受けそうな文書は、結局誰の心にも届かない。
逆に、読み手の人物像が明確になれば、どうすればその人に伝わる表現や構成になるか、自然と考えるようになる。どの言葉を選べば相手に刺さるメッセージになるのか、どうしたら行動を起こしてくれるか。 その人の気持ちを想像しながら書く。すると文章に熱がこもり、その人に伝わる言い回しや表現になる。
時にラブレターのように、時に親が子供を諭すように、どのような書き方が一番響くのかを考えながら書く。
世の中には様々なハウツーが溢れているが、何よりも大事なのは、文を書きながら相手を想う気持ちだと思っている。
たまに終始言いたいことだけを言い放った、自分よがりの文章を見ることがある。
しかし書くことはコミュニケーションの一部であり、相手がいて初めて成り立つもの。 どんな書き方がわかりやすいか、どんな言葉を付け足せば喜んでくれるか、そんな風に読み手の気持ちを想像して書けば、きっと想いは伝わるのではないだろうか。
ひたすら書いて添削してもらう
とはいえ、いきなり誰もが感嘆する素晴らしい文書が書けるようになるわけではない。
バットの素振りと一緒で、基本の型を習ったら、まずはたくさん振ってみる。その後コーチに見てもらい、フォームを改善してもらう。
文書も同じで、まずは基本ルールをおさえてとにかく書く。書いたものを添削してもらう。添削箇所をさらに書き直す。ひたすら書いて添削を繰り返すことが、書く力を身につける最短の道である。
おまけ:「書く」特訓は「考える」特訓になる
一見地味な「書く」という行為を続けていると、実はものすごいおまけが付いてくる。それは「考える力」である。
文章は、頭の中で考えたことが見える化されたもの。頭の中身がぐちゃぐちゃな人は、文章もぐちゃぐちゃである。逆に論理的な文章を書きながら頭の中がぐちゃぐちゃという人はいない。 これは「書く」だけでなく「話す」場合も一緒だ。
「メールがわかりにくい」「話がわかりにくい」と言われる人は、実はアウトプット前段階の「考える」力の弱さに原因があることが多い。
人間は自分の思考する以上に書くことはできない。だからこそ、書く前に「誰に」「何を伝えたいのか」をしっかり考える必要がある。この約束を守れば、きっとあなたの文書はわかりやすいものになるはずだし、心を動かされる人さえ出てくるだろう。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】 ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。
(2025/6/2更新)
ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ——
「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。
【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
−筆者− 大島里絵(Rie Oshima):経営コンサルティング会社へ新卒で入社。その後シンガポールの渡星し、現地で採用業務に携わる。日本人の海外就職斡旋や、アジアの若者の日本就職支援に携わったのち独立。現在は「日本と世界の若者をつなげる」ことを目標に、フリーランスとして活動中。