人は見たいと欲する現実しか見ない、と述べたのはユリウス・カエサルだが、2000年を経た今も、それは変わらない。
明るく、ポジティブに生きられるのは素晴らしいことなのだろうが、現実を直視すれば、人生は無慈悲で、冷酷だ。
だから、そうあって欲しい、でも現実は違う、ということが人生には数多くある。
いつまでも健康で、長生きできる。
人生は短い。日本人男性は約80歳、女性は86歳だ。あと満開の桜を何度見ることができるか、数えてみると、そう多くはないことがわかる。
また「健康で」も現実は違う。
健康寿命、という自立して暮らせる寿命の平均は男性70歳、女性73歳だ。
男性、女性ともに人生最後の10年は人の手を必要とする暮らしになる。
老後は「年金」と「貯蓄」で安泰
現在の年金は制度として欠陥を抱えている。また、子供のの数は減り、年金の払い手もいなくなる。
そして低金利のこの世の中で、貯蓄をしても増えず、投資で成功する人も少ない。終身雇用はなくなり、退職金の制度がない会社も増えている。
ということは、老人になっても、健康を害しても働き続けなければならないのが、これからの世の中だ。
努力は必ず報われる
努力は必ずしも報われない。とくに金銭的な形で報われるかどうかと、努力をしたかどうかはあまり関係がない。そこには能力、運、など、様々な要素が絡む。
疑うなら「努力は必ず報われる」を中学受験に失敗した小学生に聞いてみると言い。小学生ですらそれを信じないだろう。
かと言って、努力をしないで怠けていても同じか、と言われればそうではない。怠ければさらに報われる可能性が低くなるだけのことだ。
報われないかもしれないけど、努力しなくてはならない、これが現実だ。
人は平等
憲法上の権利と義務は平等である。だが、実際には平等ではない。
生まれ、容姿、能力、そして与えられる様々な機会。それら全てが平等にはできていない。よって、そこから得られる人生の結果も平等ではない。
ある人は富み、多くの人に認められ、ある人は貧しく、誰からも気にされず死んでいく。
人は孤独ではない
自分を支えてくれたり、共に歩んでくれる人がいる人生は、幸運に恵まれたものだ。
そういった人生は、勝手に手に入るものではなく、不断の努力と自らの才覚、そして運によって獲得するもので、たとえそれを望んでも手に入らない人も多い。
逆に「地獄とは、他人のことだ」という発言は、本質を突いている。むしろ、他者はデフォルトでは敵である。
そして、究極的には、誰しも人生の最期は一人になり、孤独な旅に出ることになる。
人生は素晴らしい
人生は素晴らしい、という人もいるが、そうは感じていない人も多いのが現実だ。素晴らしいと言える人は単に幸運だっただけであるか、貧困と無知を知らない人だ。
生とは、意味も運命もなく、ただ放り込まれただけの厳しいものである。
サルトルは「人間は自由の刑に処せられている」と言い、
ブッダは「人間の生そのものが苦だ」といった。
それは恐らく真理だ。
ビジネスパーソンの中には無邪気にも「ネガティブなのはいけない」という人もいるが、私はそれに賛同できない。ネガティブな人は正直で、不運なだけだ。そのことを責める気にはなれない。
むしろ、ポジティブすぎる人にいらだちをおぼえる。それは本質に対する「ごまかし」を感じるからだ。
だが、人生は厳しく、無慈悲だと知っているからこそ、些細な幸運、親切にも喜ぶことができる。私はそこに、人生の希望を、一縷の望みを託す。
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