ある日突然、組織は簡単に従業員を裏切る。これは紛れもない事実だ。
いくら従業員が、会社に安定した職と給与を望んだとしても、会社が本質的に不安定であることには変わりがないからだ。消費者が移り気で、気まぐれで、一番良い物しか買わないかぎり、会社というのは脆弱だ。
「ならば公務員」という人もいる。もちろん公務員は会社員よりも安定している。基盤が「売上」ではなく「税金」だからだ。
だが、公務員ですら盤石ではない。政治家を選ぶ国民が、移り気で、気まぐれで、その時の勢いで投票するからだ。ついこの前まで、鉄道も郵便も国営だったことを思えば、公務員が盤石、というのも信憑性はない。
三菱自動車が、生産工場の従業員の賃金カットをする交渉をしている。
三菱自動車は、燃費データの不正が発覚した軽自動車について、生産工場の従業員の賃金をカットする交渉をしていることが分かりました。
三菱は、すべての軽自動車を岡山県の水島製作所で生産していましたが、先月の不正発覚以来、生産を停止し、従業員を自宅に待機させています。
このため、経営側は軽自動車の生産に関わる従業員の賃金をカットする方針を労働組合側に伝えたということです。対象は、水島製作所の全従業員3600人のうち約1300人です。具体的な給与の減額幅などは現在、交渉中ということです。
(テレ朝news)
工場に勤める方や、取引先の従業員もかなり大きな影響を受けているだろう。不安で眠れない方も多いかもしれない。とても気の毒に思う。
だが、この出来事を見て「許せない」と憤る一方で、我々は認識をあらためなくてはならない。
「会社とは、脆弱なのだ。市民の生活を保証できる存在ではないのだ。」と。
先日、私は日本はもう「普通の国」だから、安定した職場に居続けると、本当にマズいかも。という記事を書いた。すると、読者の方から「会社に安定を求めて何が悪いのか」というコメントを数多く頂いた。
誤解をされているようだが、私は「安定を求めてはいけない」と言ってはいない。ただ「求めてもいいが、おそらく報われないでしょう」と言っているのだ。理由は上に挙げたとおり、会社が脆弱だからだ。
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先日、記事をお読みいただいた方々から「これについて、もうすこし話をしたい」と打診されたので、少し話をした。
「会社にも、国にも頼れない、という世界で、我々はどうしたら良いのか」
という趣旨だった。
「解雇規制を強化すべき」という方が意見を述べたが、「実質的に無意味」という意見が多数を占めた。現実として日本企業の競争力が落ちているということは変えられないからだ。会社には頼れない。
次に出たのが「セーフティーネットの強化」だった。だが、財源がない。「もっと税金を金持ちから取れば良い」という安易な意見もでたが、それほどの大きな財源は、金持ちから取るだけでは到底間に合う金額ではない。
「消費税率アップ」や「累進課税の強化」「法人税率の引き上げ」も、結局国内での配分のみの話であり、「日本が貧乏になりつつある」という現実を変えられるものではない。国も金持ちも全員を支えられない。
極端だが「全員で貧乏になりましょう」という意見もあった。だが、その場の殆どの人は「イヤです」と言った。
結局、その場での結論は出なかった。
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現在の日本は戦争もしておらず、「絶対的な貧困(1日1.25ドル未満で生活する人々、世界の4人に1人)」に該当する人も少ない。そして、それは先人たちの努力が作り上げたものだ。
だが、これからもそれが続くという保証はどこにもないし、また極端な話「日本」という国が世界地図の上に残るという保証もない。
歴史を見ると、国の滅亡は「戦争によって一気に無くなる」こともあるが「その国に愛想を尽かした国民」が流出したり、その国を離れたりすることで、国としての形を成さなくなり、どこかに併合される、というシナリオもよくある。
他者に「守ってくれ」と言っていたら、いつの間にか依存する相手もいない、という最悪の状況にならない事を祈るばかりだ。
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