最近、仕事で新しいシステムを導入した。新しくなるということは、知らないものに出会うということだ。
当然、ユーザーは戸惑う。戸惑いを軽減するための手段として「説明」や「広報」がある。説明や広報は、本当に有効なのだろうか。一体どれだけ効果があるのだろう。
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新しいシステムを導入する。事前にマニュアルを配布し、説明会を開催し、メールでも広報した。
限られた時間の中でしていることであり、こちらも手探りでやっている側面も大きいため、全てを伝えることはできない。
やはり、問い合わせは多かった。社会人になって、一番電話が鳴ったと思う。
ここまでは想定内。全てを説明できているわけではないのだから、問い合わせが多くなることは当然だ。
ただ、想定外だったのは問い合わせの内容である。広報していないことを聞かれたケースもあったが、多くは既に広報していることだった。事前に配布しているマニュアルや広報のメールを読めばわかることを質問された。
「またさっきと同じ質問でした」
「広報していた内容?」
「そうです」
「メールを読んでほしいね」
「読んでいないのでしょうね」
……と、ここで思い出した。これは決してユーザーの問題ではない。私の問題なのだ。
学生時代にWILLFUという起業スクールに通い、次のことを教わった。
1:Said≠Heard
言ったからといって、聞いてもらえたわけではない。
2:Heard≠Listen
聞いてもらえたからといって、聴いてもらえたわけではない。
3:Listen≠Understood
聴いてもらえたからといって、理解してもらえたわけではない。
4:Understood≠Agreed
理解してもらえたからといって、賛成してもらえたわけではない。
5:Agreed≠Sympathized & Convinced
賛成してもらえたからといって、共感し、納得して行動したいと思ってもらえたわけではない。
※参照:WILLFUでもらった資料
今回は1~3が該当する。広報しても読まない人はいる。説明をしても、聴いていない人はいる。聴いても、理解していない人はいる。
そして、これは読まない人、聴かない人、理解しない人の問題ではなく、広報した人、説明した人の問題である。
伝え方が良くなかったのかもしれない。表現の工夫が足りなかったのかもしれない。でも、何より足りていなかったのは「回数」である。
相手に伝えるためには、繰り返し言い続けることが大切だ。これもWILLFUで教わった。「N人に一度にコミュニケーションする場合には、√N回コミュニケートしないと、1人にコミュニケートしたときと同じ効果は生まれない」らしい。
私が広報した人は、200人程度。ということは、14~15回、伝える必要があったということ。1回の広報で伝わると思っていたこと自体がそもそも間違いだったのだ。
問い合わせをうけ、個別に説明すると、必ず1回で理解してもらえる。なるほど、1人だから、√1回(=1回)で伝わるということか。
習って知ってはいたものの、実感が湧かなかった。実際にその場面に直面して、初めて身をもって理解した。
私の広報メールを読んだ人も同じだったのかもしれない。メールを読んでも実感が湧かない。実際に使ってみて、その場面に直面して、初めてメールの内容が理解できる。
そういえば私も、説明書とじっくり向き合わずに問い合わせをしたことがある。モノが壊れ(たように見え)、説明書を取り出す。何やらたくさんの情報が書かれていて、よくわからない。
理解するまでに時間がかかってしまいそうだ。よし、コールセンターに問い合わせてみよう。
電話すると、丁寧に教えてくれる。あっという間に理解でき、問題は解決した。説明書と向き合っていたら、解決するまでおそらく1時間はかかっていただろう。
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「相手の立場になって考えよう」とよく言われるけれど、こんなに身近で簡単そうなことでも、全然できていないと痛感した。知識が本当の意味で定着するのには、まだまだたくさんの経験が必要みたいだ。
ではまた!
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【著者プロフィール】
名前: きゅうり(矢野 友理)
2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。
著書「数学嫌いの東大生が実践していた『読むだけ数学勉強法』」(マイナビ、2015)
Twitter:@Xkyuuri
ブログ:http://kyuuchan.hatenablog.com/「微男微女」