ある人事の方が「6月に入ると新人の間の実力差が見えてくる」と言っていた。

「そんなに早くわかるものなの?」と思う方もいると思うが、おそらく正しい。

新人の役割は研修の受講と雑用をやることであり、人によりやっていることにあまり差がない。だから、余計に能力の差が目につくのだ。

 

「一番差がでるのは、コミュニケーションの部分だね。」と、その人は言う。

「コミュニケーション?」

「そう。」

私は思わず笑ってしまった。

「コミュニケーション力のある人を採用したのでは?」

「まあ、そりゃそうなんだけど、面接するのは現場の面接の素人だから、結局人事が研修と雑用をやらせて、もう一度ふるいにかけてるんだよ。」

「そうなんだ。」

「ま、人事をそれなりに長いことやってると、「面接で人の能力を見抜ける人」なんて全くいないことがよくわかる。」

「そんなもんかね。」

「ま、話を元に戻すと、コミュニケーション力がありそうだ、ということで採用した人も、当たり外れある。」

 

彼によれば「コミュニケーション力の高そうに見える人」には2種類あるそうだ。

一つは、「人当たりが良いだけの人」

もう一つは、「真にコミュニケーション力の高い人」だ。

 

 

「何がちがうの?」と聞くと、彼は

「ちょっと難しい課題を与えた時の反応が全くちがう。」という。

 

「具体的に教えてほしいな」

「例えばある新人デザイナーを2人、想像してくれ。一人は人当たりだけが良い人。もう一人は真にコミュニケーション力の高い人だ。」

「想像した。」

「彼らに課題を与える。ウチのwebサイトの商品ページのデザインをもっと良くしてくれ、と。」

「抽象的だな……」

「ま、そのとおりだ。どういうふうに行動するか、彼らは試されているわけだからな。」

「で、どうなる?」

「人当たりだけが良い人は、「どうすればいいか教えて下さい」って来る。「何がわからない?」と言っても、「どこから手を付けたら良いかわからない」の一点張り。」

「まあ、そりゃそうだろう。」

「そういう奴には教えてあげる。けど、そいつは「コミュニケーション力無いやつ」に分類される。」

「ほう、じゃ、できる新人は?」

「ま、人によって聞き方はちがうんだけど、問題点を整理してくるんだよね。もっと言うと、恐ろしく具体的に質問してくる。」

「どんな?」

「今年の新人で、一人すごい奴がいて、そいつはヒアリングシートを自分で作ってきた。項目が、「なぜデザインを良くしたいのか?」「今のページで使いにくいところはどこか?」「サンプルになるようなページはあるか?」……後なんだったっけな……。ま、とにかく質問がウマい。」

「それは凄いな。」

「もちろん、デザインそのもののウデはまだまだだから、ベテランに比べてクオリティは低いけどな。でも、こういうのを、コミュニケーション力がある、っていうんだと思うんだよね。」

「ほう」

「多分彼、想像したんだと思う。「なんでこの仕事をやらされてるのか」「発注者の意図は何か」そう言ったこと、確かにちょろっと研修で教えたんだけど、彼はそれをすぐに実践できてる。

結局、コミュニケーション力って、気が利くかどうかだと思うんだよね。彼、どうすれば相手が楽か想像できるセンスがあるんだよ。」

「なるほどね。」

 

確かに「人当たりの良さ」だけでは仕事はできない。真のコミュ力とは、すなわち相手の要求を読み取る能力なのだ。

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

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