Evernoteが価格改定をするとのニュースを見た。

Evernote の価格プランの改定について

 

使い込んでいる人にとっては、年額5200円であっても「まあ安いよね」と思うくらいの価格でしかない一方で、今まで無料で利用していた「フリーライダー」ユーザーにとってはかなり不満を感じる内容だろう。

 

私の知人の「有料」Evernoteユーザーは、

「無料で使っているひとがいなくなってくれれば、その分Evernoteが儲かる。彼らが儲けてくれたほうが、サービスも良くなってくれる期待も持てるし、何より彼らのサービスが安定して存続してくれることのほうが嬉しい。」

と言っていたが、「無料」ユーザーの知人は

「OneNoteに乗り換えるか……」

と、真顔で言っていた。

 

有料ユーザーは残留し、無料ユーザーは離れる。それであれば価格改定は成功と言って良いのだろう。

 

 

実は、商売のほんとうの意味でのコツは「値上げ」にこそ、存在する。

例えば、昔在籍していた会社は、あるストックビジネスを行っていた。月額1万円弱で企業に「会員」となってもらい、研修やコンサルティングを提供する、というビジネスだ。

研修の内容が充実していたこともあり、順調に会員を伸ばしたが、困ったことが起きた。最初に会費を安く設定しすぎたため、新しく投資ができないのだ。

もちろん、社内でかなりの議論があったが、結局「値上げ」を断行した。会員数の伸びが止まるかと思われたのだが、実際にはそんなことは起きなかった。

起きたのは

「安っぽいものだと見られなくなった」

「怪しまれなくなった」

「より上手な利用の仕方を編み出す会社が増えた」

のだ。

要するに、値上げは成功した。モノは「安ければ売れる」というものではなかったのだ。

 

ここから私は「安売りはダメなのだ」という結論に至った。

考えてみれば当たり前なのだが、人は、「高いもの」「手に入りにくいもの」に対して価値を感じる。安く、あるいは無料で配布してしまう、ということはお客さんに「あまり良いサービスではないのでは」という誤った印象を与えてしまうことにつながる。

結果、私の上司は「売上アップの一番簡単な方法は値上げだな」と言って憚らなかった。

 

また、あるwebサービス会社の経営者はいつもこう言っていた。。

「商売の本質は、「皆に満足してもらう」ではない。それを目的とすると、途中で間違う。そうではなく「よりお金を払えるお客さんに、より満足してもらう」が最優先だ。お金を持っていない人を対象としたビジネスは、あまりうまくいかないし、収益に貢献しない客の言うことをきいても、大して売上は伸びない。

だから、ある程度ユーザーが増えたら、値上げしたり、有料化したりして、「顧客の選別」をしていかなければならない。そこには、「うちのサービスは優れているから大丈夫」という自信は必要だけどね。」

 

売上アップの一番簡単な方法は、「値上げ」だ。新規開拓でも、広告でも、マーケティング強化でもない。

 

明治乳業が、「おいしい牛乳」を値上げしたというニュースが流れていた。

明治が主力商品「おいしい牛乳」を実質値上げ、業績好調なのになぜ?

健康志向の高まりにあわせて、ヨーグルトなど主力商品の売れ行きが好調なこともあるが、値上げによる収益改善効果も大きい。営業利益ベースで見れば、コア商品の売り上げ増の押し上げ効果が116億円なのに対し、子会社を含む価格改定、いわゆる値上げによる収益改善効果は217億円に上る。

だが、「おいしい牛乳」のファン客は、少しくらいの値上であれば、今までと変わらず買うだろう。

 

 

サラリーマン、あるいはフリーランスの方々が、「安く使われている」という状況をよく見かける。だが「ほんとうに良い仕事をしてくれる人」は極めて少ない。

だから、自分に自信があるならば、堂々と「昇給してくれ」「報酬をアップしてくれ」と言おう。交渉をはじめなければ、相手はそもそも真剣に賃上げ、報酬アップを検討しない。

したがって、年収アップの最も簡単な方法は「賃上げ交渉」だ。

 

企業の商品・サービスに限らず、個人も自分高く売らなければ、ダメなのだ。

そうして初めて「安く使われてしまう労働者」から脱却できる。

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第4回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第4回テーマ 地方創生×教育

2025年ティネクトでは地方創生に関する話題提供を目的として、トークイベントを定期的に開催しています。

地方創生に関心のある企業や個人を対象に、実際の成功事例を深掘りし、地方創生の可能性や具体的なプロセスを語る番組。リスナーが自身の事業や取り組みに活かせるヒントを提供します。

【日時】 2025年6月25日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【ゲスト】
森山正明(もりやま まさあき)
東京都府中市出身、中央大学文学部国史学科卒業。大学生の娘と息子をもつ二児の父。大学卒業後バックパッカーとして世界各地を巡り、その後、北京・香港・シンガポールにて20年間にわたり教育事業に携わる。シンガポールでは約3,000人規模の教育コミュニティを運営。
帰国後は東京、京都を経て、現在は北海道の小規模自治体に在住。2024年7月より同自治体の教育委員会で地域プロジェクトマネージャーを務め、2025年4月からは主幹兼指導主事として教育行政のマネジメントを担当。小規模自治体ならではの特性を活かし、日本の未来教育を見据えた挑戦を続けている。
教育活動家として日本各地の地域コミュニティとも幅広く連携。写真家、動画クリエイター、ライター、ドローンパイロット、ラジオパーソナリティなど多彩な顔を持つ。X(旧Twitter)のフォロワーは約24,000人、Google Mapsローカルガイドレベル10(投稿写真の総ビュー数は7億回以上)。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
ご視聴登録は こちらのリンク からお願いします。

(2025/6/16更新)

 

Books&Appsでは広告主を募集しています。

安達裕哉Facebookアカウント (安達の最新記事をフォローできます)

・編集部がつぶやくBooks&AppsTwitterアカウント

・最新記事をチェックできるBooks&Appsフェイスブックページ

・ブログが本になりました。

「仕事ができるやつ」になる最短の道

「仕事ができるやつ」になる最短の道

  • 安達 裕哉
  • 日本実業出版社
  • 価格¥500(2025/06/16 13:54時点)
  • 発売日2015/07/30
  • 商品ランキング71,888位

(rc!)