「効率的」という言葉は、ビジネスにおいて良い言葉のように思える。だが先日、とある会話を聞いて、“効率の良さ”を追い求めることについて、改めて考えさせられた。

 

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これまで採用担当は1人だったが、最近2人体制で進めていくことになった。単純計算で、2倍の労力がかけられることになる。

新たに実行できることも増える、ということで、大学訪問をするのはどうかという案が出た。

就職の支援をしている大学のキャリアサポートセンターを訪問し、関係性を築くことができれば、学生に紹介してもらえたり、イベントに呼んでもらえたりするのではないか、という案だ。

 

採用担当となった2人が大学訪問に関して、次のような会話をしていた。

「1の労力をかけて1の成果が出ているとする。これから1の労力を追加することができるわけだけど、それによって2あるいはそれ以上の成果が期待できるのであれば、それを実行するべきだと思う。

でも、1.5の成果しか期待できないのであれば、追加できる1の労力は別のことに使った方が効率的ではないだろうか」

これは、大学訪問についてあまり積極的ではない担当者の意見だ。

 

確かに、大学訪問をするよりは、採用イベントに参加したり面接の機会を増やしたりした方が効果は高いように思える。この意見に対し、もう1人の担当者は次のように言った。

 

「誰もが知っている有名企業なら、大学訪問する必要はないかもしれない。でも、うちの会社は、キャリアサポートセンターの人にも学生にも知られていない可能性が高い。

もし知っていたらうちの会社にピッタリな学生なのに、ただ知られていないというだけでその可能性がなくなってしまうのはとても残念だし、もったいないことだと思う」

 

とはいえ、限られた予算、人数、時間で採用しなければならない中、効果があるかどうかわからないことに労力を割くことには、やはり疑問が残る。大学訪問に前向きな担当者は、こう付け加えた。

 

「あなたが言っていることはわかる。『大学訪問をしたから●名採用できました』とはならないだろうし、仮に大学訪問のおかげで採用できた人が現れたとしても、それが表には出てこないかもしれない。

だから効果はわかりにくいし、定量的に測れるものでもないと思う。

でも、今までやってこなかったことだから効果がわからないのは当然だし、だからこそやってみる価値がある。それに、採用活動は“今年だけ”するわけじゃない。今後もずっと、毎年やっていくもの。長期的に見たら、今動いておくべきじゃないかな。」

 

どちらの意見が正しい、という話ではない。それぞれがそれぞれの理由をもって意見を述べていて、それぞれに納得できる要素がある。

 

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結局、大学訪問は実行された。効果は、すぐにはわからない。

長期的な目で見たら、効果が全くないということはないだろう。それでも、大学訪問に消極的な担当者が言っていたように、1の労力をかけたのに、0.5の成果しか出なかった、ということになるかもしれない。

その可能性は当然あるし、そうなった場合、“効率”という観点からすると、あまり良い選択ではなかったという話になってしまうかもしれない。

 

それでも、『打てる手は全て打っておく』ことは大切だと思うし、これまでやってこなかったことをやってみて、結果がどうだったかを検証できるということは、それだけで事例としての価値があると思うので、私は大学訪問が実行されて良かったと思っている。

 

採用活動に限らず、「前例がない」と却下されるケースはあるだろう。「前例がない」のは、うまくいかないことが明らかであり、チャレンジしないことが正しい選択だったというだけの話なのかもしれない。

でも、もっと気軽に『やってみる』ことができたら良いな、とも思う。(余談だが、『前例がないことにチャレンジ』というとハードルが高くなる気がするので、私は『やってみる』という言葉をよく使っている。)

 

もしうまくいかなかったら、また次の手を打てば良いだけのことだ。そのためには、うまくいかなかったことを想定して、あらかじめ別の手を考えておくことが必要になるけれど。

 

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ではまた!

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(2024/3/26更新)

 

[プロフィール]

名前: きゅうり(矢野 友理)←名前をクリックすると記事一覧が表示されます

2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。

著書「[STUDY HACKER]数学嫌いの東大生が実践していた「読むだけ数学勉強法」」(マイナビ、2015)

Twitter: 2uZlXCwI24 @Xkyuuri

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