インターネットで拾い集めた情報だけで良いものはつくれない。メディアづくりには常に、取材がつきまとう。
電話やメールで聞いたり、あるいは直接お会いしたりして、さらには仕上げた原稿を確認してもらったり、手間ひまかけてひとつの記事が生み出されるのだ。
ただ、取材される側にとって、メディアからの取材は良いことだけではない。
取材対応はめんどうだ。特に売れているお店や話題の場所・人であれば、さらに忙しくなるなんて御免だと、うっとうしく感じる場合もあるだろう。
時間をつくって対応しなくてはならないし、そのために何かを見せたり、振舞ったりすることもある。
もちろん、その対価をメディアが支払えるときもある。例えば取り上げてもらって嬉しいと、先方から言われることもあるだろう。メディアのおかげでお客さんが増え、いいねの数が増え、思わぬ良い作用をもたらすかもしれない。
だが、残念ながらそうではないときも多い。
だから基本的に編集者やライターは、「取材させてもらう」立場にあることを肝に銘じなくてはならない。
わたしはその姿勢を大切にし、仕事をしてきた。そして、これからもしていく。
先方に伝わらないことも時にはあるが、それでもしっかり心を込めて取材をお願いしていく。メディアづくりの基本は、そういうものだと信じている。取材はしてやるものじゃない。させてもらうものだ。
しかし、その姿勢がゆらいでしまった失敗がひとつある。それは、ある寺社の取材だった。
意外かも知れないが、寺社仏閣の取材は一筋縄ではいかない。観光スポットとして出来たものではなく、宗教施設だからだ。
「うちは観光名所じゃないので」
「パワースポットなんて失礼だ」
「お祭りは観光客のためにやるのではない」
と姿勢を取るところは少なくない。
寺社をメディアに取り上げる際は、先方の意向を聞きつつ、可能であれば取材をさせてもらっていた。
おそらく先方はそういった事情もあり、こちらに苛立っていたのだろう。
先方が提示した取材依頼書のテンプレートと、掲載予定の原稿を郵送したのだが、何度送っても掲載許可が出なかったのだ。
送るたびに、電話をして、取材依頼書の至らない点と送った原稿の誤りをいただいた。だが誤りの箇所を指定されるだけで、正解はなぜかもらえなかった。
今思えばわたしは、さっさと記事の方向性を修正すればよかった。
「何度もお手数をおかけし大変申し訳ございませんでした。今回の掲載は見送らせていただきたく」
と、わたしから言えればよかったのだ。
だが言えなかった。
わたしは、この記事にはこの情報が欠かせないのだと、躍起になっていた。もはや、自分の記事のほうがよっぽど大切だった。大事な記事に穴を開けたくなかったのだ。
そして、煮え切らないまま悪態つかれるやりとりに、わたしは爆発してしまった。責了の1週間前だった。
前に座っていた編集長は、「人がこんなに怒るところを久々に見た」とすこし笑った。
勝手に「うちにはもう絶対載せませんから!」と言ってしまったので、そのあとだいぶ問題になった。
編集者として、よいものをつくりたい気持ちは今だって変わらない。熱を持って、たっぷりと愛を注いで、最高のものをつくりたい。
ただ、我々は取材させていただく立場だと頭で考えているものの、心のどこかでメディアは歓迎されるものだと勘違いしていたのだろう。こだわりが強く生意気な(つまり、わたしのような)編集者だと陥りがちの罠だ。
この失敗を踏まえ学んだことが、3つある。
ひとつは、「メディアアレルギーは簡単に治せない」ということ。
取材された記事に傷付けられ、メディアアレルギーになっている人は山のようにいる。アレルギーを治すのは簡単ではない。真っ向から戦うと、自分もメディアもたくさん傷付くだろう。そんな時は身を引くことも必要だ。
わたしたちには、みんながハッピーになれる記事、編集、取材、メディアを求められている。傷付け合うために、つくっているのではないのだ。
ひとつは、「身の引き際を計算したスケジューリングをすべき」ということ。
今回は責了1週間前、ぎりぎりまで取材交渉をして痛い目にあった。デザイナーや営業担当など、たくさんの人に迷惑をかけてしまった。しかし今思えば、いくらでも修正するチャンスはあったように感じる。
自分の記事は思い描いていた通りに仕上げたいが、1人でつくっているわけではないので、ワガママは言っていられない。軌道修正の道筋を作っていたら、先方と長い間揉めることもなかっただろう。
難航してしまったときはどうするかと、あらゆる可能性を考えてスケジュールを立てるべきだった。
ひとつは、「記事は作らせていただくものではない」ということ。
取材がうまくいかなったことと、できあがった記事の良し悪しは関係がない。当然、取材対象に記事のクオリティ責任を求めるのは筋違いだ。
うまくいかなければ取材対象を変えたり、そもそも企画の前提を見直したりするなど、ハンドリングすべきだった。記事は自分のもので、作らせていただくものではない。責任はすべて自分にあるのだから、いつまでも云々と言っていないで自分で転がしていく必要がある。
取材をしていくと、先方の「大切にしているもの」が見えてくる。それを掴むことが取材の醍醐味であり、人と人でつくられる情報であり、検索で得られない体温だと思う。
メディアづくりにおいては、大切にしているもの––つまりその「芯」に、寄り添っていくことが不可欠だ。理解しないと始まらないのである。
寄り添う気持ちこそが、取材させていただく姿勢なのだと、わたしは思う。
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奥田 真輔 氏
システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、
メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。
岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
2025年4月よりワークワンダース株式会社CTOに就任。AI活用を中心とした開発支援をリードする。
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著者:ながち
とあるWEBニュースの編集者。
過去に全国をめぐる温泉ライター、受注型オウンドメディア運営、旅行情報誌の編集など。
ウイスキーと温泉と大河ドラマをこよなく愛する、23歳の既婚者。
Twitter : https://twitter.com/1001log














