ある日、私は都内で商談のため、とあるオフィスビルに訪れた。皆さんも一度は乗ったことはあるだろう。スケルトンのエレベーター。
なんともお洒落で私は好きだ。この日も、そんなエレベーターに乗った私は、ふっと「そう言えば何でスケルトン何だろうか」と考えた。
「最先端的なお洒落感を醸し出すことが出来るから?いや、エレベーター内での痴漢などの犯罪防止という理由もあるかもしれない」
そんなことを考えた。
疑問を持ったことすら忘れた
数か月後。
某テレビ番組で手話の通訳士として活躍している難聴の方(ここではAさんとする)とお話することがあった。
その日は、音の聞こえる世界と聞こえない世界についてや、私達健聴者が普段当たり前と思っていることが、実は当たり前ではないというお話など、様々なことをお話して下さった。
その中で、下記の内容はAさんが全て手話で私に伝えてくれた内容の一部である。
Aさん「シャンプーボトルにギザギザがあるのって知っていますか?」
私「確かにそういえばそうですね!でも何故でしょう…。そうか!!シャンプーとリンスを間違えないようにするためですね!?」
Aさん「そうです。これは、シャワーを浴びて目が開けられない状態の時や、盲目の方が、シャンプーとリンスを間違えないようにしているんですよ。普段何気なく気になっていても答えを知らないことって案外沢山ありますよね。」
私「なるほど。」
Aさん「このビルのエレベーターってどんなだったか覚えていますか?」
私「どんなだった?そういえば、スケルトンだったのが印象的でした。」
Aさん「そうですね。では、それは何故だと思いますか?」
私「え?おしゃれ…とか…デザイン的な要素が大きいのかなと…?あと犯罪防止!」
Aさん「それもあるかもしれませんね。でも、中から外を見えるこのスケルトンのエレベーターは私達のような聴覚障がいのある者にとっては、とても大切なことだと言えるのですよ。」
つまり、エレベーターに乗っている時に、地震や災害など何らかの事情で閉じ込められた場合、健聴者の場合は、電話のマークの非常ボタンを押して外部に助けを求める。しかし聴覚障がい者は、このボタンを押しても音声でのやり取りが出来ない。
しかし、外から中が見えると、駆けつけてくれた外部の人に筆談や身振り手振りで伝えることが出来ると言うのだ。
また、健聴者にとっても外が見えることで、自分の置かれている状況がわかり安心感を与えるという効果もあるという。
なお、現在ではエレベーターの中にも耳のマークの「聴覚ボタン」を設置しているものもある。
非常時に「聴覚ボタン」が押されると、聴覚障がい者の存在を係員に知らせることができ、エレベーター内のモニターに「係員が向かっています」など対応状況が文字表示されるのだ。
それと同時に係員が筆談の準備や手話の出来るスタッフと共に駆けつけるようになっている。そんなエレベーターも存在する。
その時、以前何となく考えた時のことを思い出した。そう言えば、私はこの事柄について確かに気になったことがあったではないか。でも、実際に調べたり、誰かに聞いたりはしなかったし、そうしたうちにスッカリそのことを忘れていた。
いつ忘れたのか忘れたくらいである。人って忘れる生き物というのは本当だったのだ。
現代の忙しい日々を送る私達は、気になったことをどれだけ覚えているのだろうか。いや、よく考えたらちょっとした気になる事柄を含めると、私の平均だと、たった数分、いや数秒でも忘れてしまっている気がする。
思考を止めない実験
では、実際に1日の生活の中で気になったことをピックアップしてみたら実際どのくらいあるのだろうか。
そう思って、朝起きて家を出るまででメモを取ってみることにした。
・汗をかくとかゆくなる(あせも)になるのはなんでだろう。
・赤みそと白みそって何が違うんだろう。
・朝食って本当に必要なのだろうか。
・硬水と軟水って何が違うんだろう。
・逆立ちして水って飲めるのだろうか。
・天気予報でよく使う「一時」と「ときどき」はどう違うんだろうか。
・この洋服の原価っていくらなんだろうか。
・金属アレルギーの人とそうでない人の違いはどこにあるのだろうか…
結果的に朝起きて家を出るまでの1時間程度で上記に書いている10倍以上の数になった。
これはキリがない・・・。
まだ、太陽の光に当たっていない状態でこの気になる数とは、どういうことなんだろうか。一歩外に出ることを考えると恐ろし過ぎる。
外に出れば人や物や植物・動物など、物理的なもの以外にも、ありとあらゆることが興味の対象になってしまう。そうなると、きっと24時間で相当数の気になることや知らないことが出てくるのが容易に想定することが出来てしまうのだ。
そう考えるといかに私達は頭を使わずに生きようとしているかがわかる。
「思考を止めるな」と昔の上司からよく言われた。
当時はとにかくビジネスにおいて戦略・戦術・マネジメントなどをとにかく毎日考えて、トライアンドエラーをする日々を送っていたが、確かに、「思考を止めない」という発想のおかげで常に新しい考えに出会うことが出来たと思う。
いわゆる「●●オタク」と言われる人達が、ある事柄に関して深い知識を持っているのは、どんな小さな「気になる」も、日々に忙殺されることなく、きちんと自分の中に蓄積させ、知識として取り入れているということを怠らないからだろう。
私達の生活の中で普段何気なく気になっていても、答えを知らないことは山ほどある。
「思考を止めない。」そうすれば毎日本当に色々な情報が入ってくるのだということに今更気づく事が出来た。
毎日全ての「気になる」を、正しくインプット出来たら、「ウザイほどのうんちく王」か「歩く辞書」。言い方を良くすれば「圧倒的な知識人」になれる。
興味が湧いたことを1日1つでもきちんと書き留めて、自分の知識として吸収出来たら、きっと何かがかわる気がする。
「思考を止めない。」実に重要なことである。
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。

<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【今回のトーク概要】
- 0. オープニング(5分)
自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」 - 1. 事業再生の現場から(20分)
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例 - 2. 地方創生と事業再生(10分)
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む - 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説 - 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論 - 5. 経営企画の三原則(5分)
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する - 6. まとめ(5分)
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)