中学生になると、算数が数学になる。そして、数学が算数と異なる大きな理由の一つは、「抽象的な概念」を取り扱うということだ。

なかでも最初のハードルとなるのが、マイナスの概念である。

 

算数においては数は実際の物質と対応付けられており、1という数字はりんごが1個、2という数字はりんごが2個あると言った具合である。

しかし、マイナスという概念は、現実の物質と対応しない。りんごが-1個、という状態は、現実には無いのである。

 

そして、このあたりから「数学」が嫌いになりはじめる生徒が増える。それまでに持っていた「数」に対する概念を改める必要があるにもかかわらず、そういったことをきちんと説明されないので、「納得がいかない」という状態になりやすいからだ。

そういった、「数学嫌い」を生み出す原因を解決しようと、鋭く考察しているのが小島寛之氏の「数学でつまずくのはなぜか」である。

 

 

例えば、なぜ、「ー(マイナス)とー(マイナス)を掛けると +(プラス)になる」のか、について通常であれば「規則だから」で済ませてしまうところを、実にわかりやすく説明している。

彼は赤塚不二夫氏の「天才バカボン」の主人公であるパパの発言と、気球の昇降を引き合いに出す。

 

”「反対の反対は、賛成なのだ

これを耳にしたとき筆者は、これこそが正負の数の掛け算を理解させるツボじゃないかと閃いた。

(中略)正負の数の掛け算を理解するためには、このように「方向算」というものを導入することが一番うまい手だったのだ。”

 

例えば、(+3)×(+5)=15

という計算を、気球の昇降を使って次のように解釈しよう。

気球が時速3キロメートルで上昇している時、5時間経過すると気球は元の位置より15キロメートル上方にいる。

 

このとき、このモデルを利用すると

(-3)×(-5)=15

という計算も全く同様に難なく意味づけすることができる。

気球が時速3キロメートルで下降している時、5時間さかのぼると、気球は元の位置より15キロメートル上方にいる。

 

このモデルの利点は子どもたちが頭のなかで気球の昇降の様子を容易に思い浮かべることができ、そのイメージによって、計算法則が自然に納得できることだ。”

 

 

なるほど、大人も納得の説明である。

数学の概念は物質と対応付けが難しいため、理解が非常に難しいがそれを見事にクリアしている。

 

 

かつての教室であればこのような概念の理解は、それぞれの先生に任されていた。そのため、「教わった先生」により、生徒の理解度に差がつくなどの弊害があった。

現在は違う。動画などをつかってビジュアルにこのような概念が理解できるようになるのだ。このようなベストプラクティスが共有されれば、もっと学校の授業は楽しいものとなるだろう。

 

 

 

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