コンテナ物語貨物用のコンテナをご存知だろうか?あのコンテナである。

地味なイメージが有るコンテナだが、実はコンテナの登場が驚くほど世界を変えていることはあまり知られていない。ピーター/ドラッカーは、コンテナの登場を「世の中を一変させたイノベーションであった」と語っている。

 

さて、コンテナの登場以前の世界と、登場以後の世界はどう変わったのだろうか?

一言で言えば、「物の輸送にかかるコストは大幅に安くなった」そして、これが「世界の経済を変えた」のである。

 

このイノベーションの過程を詳しく紹介しているのが、上にあげた「コンテナ物語」だ。

この本にはこうある。

 

”かつてはどの港にも、安い賃金と劣悪な条件の下、貨物の積み下ろしで暮らしを立てる労働者の一群がいた。だがもうその姿を見かけることもない。数世紀にわたって会場貿易の拠点だった都市、たとえばニューヨークとリバプールは、港としては瞬く間に凋落した。”

”輸送コストが高かった頃は、港や消費者に近い立地が有利であり、そのため製造業は長年に渡りやむなくコストの高い都市周辺に工場を設置していた。だが、輸送費が下がると、彼らはさっさと地方に移転する。”

”また、郊外に広がる大型工業団地の類は次第に姿を消しつつある。(中略)今代わって登場してきたのは、ある製品ある工程に特化した小型の工場群である。(中略)貧しい国々にとっても、遠く離れた先進国のサプライヤーになるのはもはや夢物語ではない。原料は部品を運んでくるコストも完成品を遠い国に送り出すコストも急激に低下したからである。”

 

そして、こういった変化の結末はこうだ。

 

”経済と地理のこの新しい関係のおかげで、これまで国内しか見ていなかった企業も、国外に目を向けることが容易になった。”

 

 

つまり、真のグローバル化の立役者は、コンピュータでもなく、ウェブでもなく、「コンテナ」であったと言っても過言ではない。

情報だけのやりとりで済んでしまう世界は金融だけであり、人々は「モノ」のやりとりを求める。それは、コンテナの導入なくしては有り得なかった。

 

 

コンテナを初めて大規模に船舶貿易に導入したのはマルコム・マクリーンという人物である。彼は物流のボトルネックであった、港における荷積みと荷降ろしの非効率さに注目し、これを改善することは出来ないかと考えた。

当初、わざわざトラックから荷物を降ろさず、トラックごと船に積んでしまえば良い、という発想だったようだが、次第に「荷台だけ」載せれば良いとの結論にいたり、この「荷台だけ」の部分がコンテナと呼ばれるようになったということである。

 

コンテナは規格化されており、トラックに直接積め、船に直接積め、さらに鉄道の貨車に直接積める。これは物流にかかるコストを極限まで引き下げた。

これにより、前述したように世界は一気に小さくなった。そして、各国にはグローバル化の波が押し寄せる。

 

 

横浜に赤レンガ倉庫というものがある。現在では観光地となっているが、かつては物流の拠点であった。

しかし、コンテナの登場で、設備は陳腐化。かつてのにぎわいは失われる。

かつては港に倉庫があるのが普通の光景であったが、倉庫が主体の港はすでに時代遅れだ。

 

コンテナは何の変哲も無い単なる「箱」であるが、シンプルなイノベーションほど破壊力は大きい。そんな話をこの本では学ぶことができる。

 

 

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ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
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当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)