地下鉄に乗って (講談社文庫)JALの月刊機内誌にエッセイがある。飛行機にのる度に楽しみにしていたのだが、それを書いている浅田次郎氏の小説を読んでみたくなり、Kindleで探してみたところ「地下鉄に乗って」という小説があったので、購入して読んでみた。

 

結論としては、非常に良い買い物だった。今まで読んでいなかったのが悔やまれる。

 

主人公の男は、「女性用下着」のセールスマンをやっているのだが、実は巨大な企業の創立者の息子であり、ある事件を境に家を飛び出した、という設定となっている。

主人公は会社の帰り道にひょんなことから、過去にタイムスリップしてしまい、自殺したはずの兄と会う。兄の自殺は一家に暗い影を落としていたのだが、なぜ兄が自殺したのかは「父との喧嘩が原因」という事以外はわかっていなかった。

在りし日の兄と、父との関係がなぜこじれたのか。

そもそも父はどのような人物なのか。

過去と現在を行き来する主人公は次々と以外な事実を知り、ついに真実にたどり着くのだが、それは犠牲を伴うものであった。

 

タイムスリップというネタが出てくるので、軽い話かと想像していたのだが、そうではなく、

「家族」

「日本の復興」

「善意と誤解」

という3つのテーマが非常にうまく語られていると感じる小説であった。

 

 

特に、「善意と誤解」については、主人公のつぶやきがとても悲しい。

 

「少なくとも、家族の誰ひとりとして、愛憎の法則に逆らったものはいない。家族は愛し合っていた。とりわけ、聡明な兄は誰よりも父を理解し、尊敬し、割愛していたのだと思った。」それでも、この結末しか無かった。

 

一日二日で読める小説なので、休日に時間のある人は、是非手にとって見てもらえれば、と思う。

 

 

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(2026/6/2更新)