就活の面接において、最も重視される能力は相も変わらず「コミュニケーション力」だ。
経団連の調査によれば、現在では約9割近くの会社が選考において「コミュニケーション力」を重視している。
(出典:https://www.keidanren.or.jp/policy/2014/001_gaiyo.pdf)
おそらく、今後もこの傾向はあまり変化しないだろう。
限られた時間の選考でコミュニケーション力を適切に判定できるかどうかはともかくとして、コミュニケーション力を重視する会社が多いのにははっきりとした理由がある。
だが、その前に「会社が求めるコミュニケーション」とは何かを明らかにしなければならないだろう。
なぜなら、多くの学生はそれを少し誤解しているからだ。
例えば「自分のコミュニケーション力が高いことを証明するエピソード」を求めると、大抵の学生は
「会話を盛り上げるのが得意です」
「友達がたくさんいます」
「初対面の人とも気後れせず話せます」
そういったことをアピールする。
そう言うアピールをする学生の気持ちはわかる。
なぜなら、彼らにとっての「コミュニケーション」は、それしか存在しなかったからだ。
「一緒にいて楽しい」
ということが、学生にとって必要なコミュニケーション力の本質である。
だが、企業におけるコミュニケーションの目的は「一緒にいて楽しい」ではない。
「一緒に仕事をして成果が出る」なのである。ここが企業と学生が大きくボタンをかけちがっているところだ。
では「一緒にいて成果が出る」ためのコミュニケーション力、すなわち企業が必要としているコミュニケーション力とは何か。
それは「自分のアウトプットを誰かに利用してもらうための力」だ。
例えば、プログラマーになったとしよう。手元で作っているプログラムはそのままお客さんに売ることはできない。
作っているのは大きなソフトウェアの一部であり、これを社内の誰かにわたして、うまく利用してもらい、最終的にお客さんに届けなければいけない。
そして「誰かに渡す」ためには、必ず高度なコミュニケーションが必要になる。
「どのように使うか」
「注意点は?」
「どのように品質を担保しているか?」
「何を目的として作ったか?」
そう言った取り決めがなければ、あなたのアウトプットはうまく利用されない。すなわち「成果が出ない」ことになる。
別の例えをしよう。
あなたが営業用のチラシを作っているとする。
ただ、これを使うのはあなただけではない。同僚、上司、他部門の人、社長が使うかもしれないし、他社の人が更に他の人に製品を紹介するために使うかもしれない。
そう考えれば結局「あなたのアウトプットを他の人がうまく利用できるかどうか」はとても重要だ。
「チラシを誤解なく使えるかどうか」
「表現はチラシを使う人が理解しやすいか」
「初めてこれを見る人が正確な理解をできるか」
「これを持っていく営業マンが、顧客の興味を喚起できるか」
そう言った事はすべて、「コミュニケーション力」を必要とする仕事である。
極端なことを言えば、「自分の作ったものが、そのまま売れる」ときには、あまりコミュニケーション能力は必要ない。
例えばわたしの家の近所のラーメン屋に、死ぬほどうまいところがあるが、そこの親父はコミュ症だ。
だが関係ない。ラーメンを作るのは親父一人だし、私がそれを食べることはだれに教わらなくても可能だ。
現代社会は高度な知識労働者を必要とし、知識は専門特化した時にこそ、活かされるものだ。
すると必然的に仕事は分業となる。
すなわち「アウトプットを誰かに利用してもらわなければ、何一つ成果を生み出せない」ということになる。
「知識労働」は本質的にコミュニケーション能力が高いことを要求する仕事になっている。
上手なコミュニケーションをとることは、実は成果を生み出すために必須の仕事なのだ。
だから「コミュニケーション能力はあったほうがいい」ではない。
「コミュニケーション能力が高くないと、仕事ができない」のである。
コミュニケーション能力の低い人は、知識労働に向かない、という事実こそが、企業が就活において「コミュニケーション力」を求める真の原因なのである。
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