仕事の能力は、組織において重視される。だが「仕事ができる」とは何か。これを明確に定義している組織は少ない。

 

もちろん会社の求めることはいうまでもなく「成果をあげること」なのだが、この成果は◯◯さんの、この成果は◯◯さんの、という切り分けができないものが多く、「成果を出した人ができる人」と定義してしまうと、評価の間違いを犯すリスクが高くなる。

くわえて、すぐに結果のでないような仕事も数多くあり、必ずしも短期的な業績を持って、「結果を出す力がある」とみなすのも早計である。

 

だから、多くの会社では「結果を出す能力とは何か」をできるだけ詳細に定義し、評価を結果のみに頼らないようにする。

 

 

では、一般的にどのような能力が「成果に繋がる」とみなされているのか。京セラおよびKDDIの創業者であり、多くの経営者に支持されている稲盛和夫氏は、

仕事の結果=能力×熱意×考え方

と言った。

この考え方のポイントは、全てが掛け算であること、そして「熱意」と「考え方」が入っていることである。

要は能力が高くても、熱意がない人物、考え方が間違っている人物は結果が出ないですよ、という説教なのだ。

 

だが私は正直に言えば、今ひとつ腑に落ちていなかった。というより、曖昧すぎて評価には使えない。

そこで「多くの人ができると考える人物は、本当にできる人物である可能性が高い」という考え方を採用し、多くの会社での人事コンサルティングの経験を元に、共通して見られるパターンを洗い出してみた。

 

多くの評価制度を観察すると、「仕事ができる人物」は、下の3つを全て、ある程度のレベルで保有している人という定義が多い。

  1. 知的能力
  2. 行動力
  3. 人から好かれる能力

3については「人間力」という言葉を使う組織もあるが、曖昧な言い方なのでより直接的な「好かれる能力」とした。

そしてさらに、上の3つは以下のように9つに分解できる。

 

1.知的能力

ピーター・ドラッカーによると、知的能力は成果の上限を規定する。

・知的な態度をとれる(勉強できる。参考:知的であるかどうかは、五つの態度でわかる。

・知識がある(業務遂行のみならず、広範な知識を有する。資格なども含まれる)

・知識を使いこなす能力がある(発想ができる。参考:「アイデアは、既存の要素の新しい組み合わせ」

 

2.行動力

知的に優れていても、行動しなければ何も始まらない。

・率先垂範(人より先にやる。参考:とにかく始めてしまう人、は何がちがうのか。

・勇気(初めてのことも、恐れずやる 参考:「仕事ができるやつ」への最短の道

・体力(行動量が多い 参考:「頭の良いリーダー」と、「行動力のあるリーダー」どちらに人はついていくか。

 

3.人から好かれる能力

現代の仕事はすでに、個人の能力を大きく超えた水準の質を要求されている。チームでなければ、大きな成果は上がらない。

・共感力(人の気持ちがわかる。論理では人を説得はできない上、共感抜きに行動をさせるのは更に困難である。)

・リーダーシップ(人を纏める力。心の余裕。参考:新米リーダーが必ずやらなければいけないこと。

・倫理観がある(まっとうな人であること。性根が卑しい人物は人から好かれない。 参考:ヒポクラテスの誓い

 

 

言ってしまえば、これらの基準がどこの会社の人事評価基準にも形を変え、含まれている。

「組織でどうしたら評価されるか?」を気にする方はチェックしてみると良いだろう。

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

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