少し前、「記事について相談したい」という若手の方とお会いした。

「何をするつもりなの?」と聴くと、

「webメディアを立ち上げたい」と言う。それで、我々のところに話を聞きに来たそうだ。

 

なるほど。

「書いたものを見せてくれませんか?」と頼むと、その方は自分で今まで書いたブログや寄稿した記事を見せてくれた。

うまくまとまっていて読みやすい文章だと感じたが、正直言うとあまり面白くない。

 

「うまい文章だけど、面白くないかな……。」

と正直に伝える。

すると彼は

「そうなんです。ブログも結構更新しているんですが、読者が増えなくて……。ブログすら読者が増えないのに、メディアも何もないですよね。」

と困ったように言い、

「どうすれば面白くなるでしょう?」

と私に質問してきた。

 

正直、私もよくわからない。

大体、どうすれば面白くなるのかはっきりとわかっていたら、今頃は小説家として大活躍できているだろう。

 

「私もわからないんですよ。書いてみて、読んでみて、面白くなかったら書き直すしかないと思う。」

と伝える。無責任だろうか。

だが、繕ってみたところで大したことは言えない。正直に言うのが一番だ。

 

「そりゃそうですよね……。」と、彼はがっかりしたように言う。

「メディアの立ち上げは難しいでしょうか?」

「うーん……ただ、私が面白くないからと言って、他の人が面白くないとは限らないし、やってみないとわからないことも多いから。でも、こういう記事ばかりなら私は確実に見ないし、面白くないものは皆、共有しないんじゃないかな。」

 

彼は頷いて言った。

「何で面白くないと感じたのか、理由を教えてもらえないでしょうか?」

「まず感じたのが、自分語りが多すぎて鼻につくかな……。読み手ってわがままなんで、書き手にはあまり興味がないと思う。芸能人なら別だけど。「お前がどう思ったかなんて、しらねーよ。」って言う感じ。」

「他には?」

「後は、机上の空論っぽいかな。何処かで聞きかじったことを言ってるだけというか……。webの何かの記事をコピペして作った印象。」

「………たしかにwebで調べて書いてます。」

「webに載っている情報を、さらにwebに載っけてもあまり意味が無いかなーと。本を読んだり、人に話を聴いたり、実際に体験をしたりした記事のほうが面白いと思う。」

「なるほど。他には?」

「さっき「自分語り」は面白くないといったけど、「その人の意見」なら面白いかな。「思った」だけだとポエムになってしまうけど、しっかりとした理由とか根拠が明示されている意見なら、読んでみようと思う。」

「そうですか……。」

「客観的な情報とか根拠、あとは実績も経験ないのに勝手なことを書いているように見える記事は、独りよがりに見えるかな。」

「でも、独りよがりだけど人気があるブログもありますよ。」

「うん。そう思う。だから好みの問題。まあ、読み手が著者自身に興味あれば、そこに何が書かれていてもいいんだよ。極端な話、昼に何食べた、でもいいってことじゃないかな。それはまあ、芸能人、ってことだよ。」

「わかりました。」

「まあ、あくまでも「我々の好み」だから、真剣に取り合わず、そういうもんかな、くらいに捉えておいてほしいけど。」

 

*****

 

彼が帰った後、少し違和感があった。

「何が面白いか」はよくわかっていないが、「何が面白くないか」については説明ができたのだ。

なぜなのだろう。

 

はたと思う。

つまり、人の作品にケチを付けることは恐ろしく簡単だが、逆に自分で何か価値のあるものを生み出すのはとても難しい、ということなのだ。

実際、ケチを付けても、スキルが向上するわけでもないし、作品を生み出すこともできない。

「ケチを付けるだけの人」になってはいけない、と、改めてあの若者に教えられたのであった。

 

 

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・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
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(2025/6/2更新)

 

 

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