少し前に元陸上選手の為末大が、「努力すれば成功する、は間違っている」と発言し、批判が殺到した。彼は「アスリートとして成功するためには、生まれつきの才能がなければいけない」と言いたかったのだろう。
逆説的だが、世の中にもそう考えている人が多かったからこそ、批判が殺到したとも思われる。「スポーツ選手や芸術家は、特殊な才能が必要である」と。
才能のある人間と、才能のない人間は生まれつき決まっており、その差は埋められないものなのだと。
しかし、それは才能を誤解している。
統計によれば一概にそうとはいえない。
米国のジャーナリストであるマルコム・グラッドウェルは、「大成するかどうかは才能の有る無しよりも環境に左右される」とその著作の中で述べる。
彼はカナダのアイスホッケー選手の年鑑を調べるうちにある事実を発見した。
「優れた選手の殆どは、1月か、2月、3月生まれである」
彼は仮説を立てる。
カナダでは、子供の学年は1月〜12月が区切りだ。そして、成長過程の子供は、同じ学年であっても1月生まれの子と、12月生まれの子では体格や運動神経などに大きな差がある。
要は、同じ学年であっても早い時期に生まれた子供は学年内の競争で有利だということだ。そして、子供のうちに競争で勝ち、強豪チームに入ることを許された子どもたちは、一流の指導を受ける権利を手にする。
他方、遅い時期に生まれた子供たちは、弱小チームに入ることになる。そして弱小チームの子供たちは平凡な指導者のもとに置かれざるをえない。
つまり、世の中は「初期にあったほんの少しの差が、増幅される仕組みになっている」ということだ。その中で、「生まれつきの才能」が占める割合はどれほどだったのか。おそらく我々が考えるほど大きくはない。
「私は努力した。だからこうやって成功した」
「私には才能があった、だからこうやって成功した」
という人々の殆どは環境の影響を過小評価していると言わざるを得ない。
むしろ、
「努力が評価され得る環境にいたから、私は努力できるようになったのだ」
「才能を伸ばしてもらえる環境にあったから、私の才能は開花したのだ」
と、考えることが正しいように思える。
(2026/9/16更新)
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