マーケティング業界で働く友人と話しているとき、電子書籍の話題になった。
その友人は、
「薦められてKindle買ったけど、思ったより電子書籍は流行っていない」
と言う。
確かに、そうかもしれない。
ニューヨーク・タイムズでは、電子書籍の売上が急減したと報じている。
現在は、電子書籍に飛びついた人々が紙の本に戻る、もしくはデバイスと紙の両方を使い分けるハイブリッド型読者になりつつある兆候が見られる。
約1,200の出版社からのデータを収集している米国出版者協会によると、今年の最初5ヵ月間で電子書籍の売上は10%落ちたという。昨年は、電子書籍の市場占有率は約20%で、これは数年前と同水準だ。
「電子書籍は紙を駆逐する」と、アナリスト達は、電子書籍が出版業界を席巻する予言をしたが、今のところそれは外れているようだ。
ではなぜ皆は「電子書籍」を利用しないのだろうか。
その友人は言う。
「個人的にはKindleを気に入ったんだけど、どうも使ってる人はそんなに多くない。だから、いろんな人に聞いた。何で電子書籍にしないのかって。」
「どうだった?」
「マンガは電子で買ってる人がいるけど、専門書とかビジネス書とかは電子じゃないんだよね。だから、マンガ好きの人以外は、そんな電子書籍に移行してない。」
「ふーん、それって単にマンガ以外は電子化されていない物が多いってこと?」
「いや、逆かな。マンガ以外はあまりみんな買わないから、マンガばかりが電子化されてるんじゃないかな。」
言われれば確かにそうかもしれない。
「ふーん、何でだろうね。」
「うん、そこなんだけど。何人かの学生さんが言ったんだよね。電子で買わない理由。」
「何だって?」
「電子で買ったら「本読んでますアピールができない」と。」
「……?」
「彼らが持ってる本見て、ははーん、って納得した。」
「何の関係が?」
「要するに、「本」ってのは、周りに賢さをアピールするための道具なんだよね。「オレ、こんな本読んじゃってます」みたいな。」
「本当?それ。」
「マンガは読んでてもあまり賢そうに見えないから、電子で買う。でも「持ってると賢そうに見える本」は敢えて印刷本で買う。」
「賢そうに見える……ね。」
「そうすれば、電車の中でも、オフィスでも、「こんな本読んじゃってますアピール」ができるじゃない。それができないから、電子はあまり人気がないんだよ。」
「本当?それ単なる思い込みじゃない?」
「いやいや、本当の理由は読みにくい、とか端末が使いにくい、とかそんなんじゃないって。人間って、もっと俗っぽいんだよ。」
想像してみる。
「あと、サラリーマンの場合はオフィスの机に「サマになるビジネス書」とか置きたいじゃない。上司に「オレ勉強してます」アピールするために。」
「……。」
「思うんだよ。人間の「見栄を張りたい」っていう超強力な欲求を無視して、マーケティングなんてできないって。オレの仕事なんて、「どうやって人間の虚栄心を満たしてあげるか」に尽きるんだから。」
「はいはい。わかってるわかってる。」
「ま、そういうことだから、電子書籍はもっとユーザーに「オレは賢いですアピール」ができるようにしてあげないとダメだな。」
「そういうもんか。」
「たとえ虚栄心が動機であっても、本を読めばいいんだから。結果オーライだろう。」
この仮説があたっているかどうかはわからない。
だが「ああ、彼はリアリストだな」と思った。
(2024/1/22更新)
東京都産業労働局
からのご案内です。
東京都の公的サービス「デジナビ」が都内の中小・零細企業や個人事業主に対してIT導入補助金、デジタルツール導入助成金のご提案をお手伝いします
【都内中小企業向けデジタル技術導入促進ナビゲーター事業】
都内中小企業に対し1社につき1人専任の「ナビゲーター」がデジタル化のアドバイスを行い、経営課題の解決に向けた最大5回のサポートを無料でおこなうものです。
業種別デジタル化成功事例を公開中
<医療業> クラウドストレージを導入し、業務に必要な情報を共有化
<運輸業> デジタルとアナログの両輪体制による健康経営への道
<卸売業> クラウドサービスの活用で全国の情報交換が円滑に
<建設業(建築)> システム導入で本来の仕事に専念
<建設業(設備)> ICTの活用で残業のない働き方を実現
<建設業(土木)> 設計から施工まで一気通貫でICTを導入
<製造業> デジタルサイネージで従業員との熱意をつなぐ
<不動産業> 効果的なICTを実現し、顧客視点の全員参加経営へ
<福祉業> 医療連携と最新のICTで利用者の健康を守る
<飲食業> POSレジとキャッシュレスツールで作業負担を軽減
詳細は東京都産業労働局サイト都内中小企業向けデジタル技術導入促進ナビゲーター事業をご覧ください。
お申込みフォーム→
都内中小企業向けデジタル技術導入促進ナビゲーター事業 参加申込ページ
・安達裕哉Facebookアカウント (安達の最新記事をフォローできます)
・編集部がつぶやくBooks&AppsTwitterアカウント
・最新記事をチェックできるBooks&Appsフェイスブックページ
・ブログが本になりました。