a0002_001422なにかと嫌われる「マニュアル」であるが、マニュアルのメリットは非常に大きい。

大別すると、マニュアルのメリットは次の3つになる。

 

・ある作業において、念入りに作られたマニュアルを使用することは非熟練者であっても熟練者と同程度の作業効率、および質を得ることが可能となる。

・暗黙知を形式知化することで、改善の議論が可能になる

・作業のデータを取るための土壌ができる

 

よく誤解されるのが、「マニュアルを作ると業務効率が上がる」であるとか、「マニュアルは作業を画一化する」といったような考え方だ。

経験的に言えばマニュアルを作ったとしても、最初から業務効率が上がることは稀である。むしろ下がることのほうが多いかもしれない。これは当然で、「今までに慣れたやり方」から、「マニュアルに記載されたやり方」への移行期間中は作業効率が落ちるためである。

また、マニュアルを作ったとしても作業は画一化されない。業務のすべてを記述することは不可能であるし、仮にそんなことが出来たとしても、分量が多すぎてとても使えないものとなるからだ。

多くの会社でマニュアルが不評なのは、実はその使い方が間違っているからだ。うまく使うには、「作成過程」から見直しが必要である。

以下にその過程を示す。

 

 

マニュアルを作成する時に最初に行わなくてはならないのは、「上の3つのメリットを関係者と共有する」ことである。

その際に難しいことは、多くの場合「長い経験を持つ者」は、マニュアルに対して消極的である、ということだ。熟練者にとってマニュアルは敵である。

 

・熟練者の技術を非熟練者が真似ることができるようになり、相対的に熟練者の地位が低下する

・慣れたやり方から改善を行うのは、多くの熟練者にとって新しい試みであり、苦痛を伴う

・熟練者は現在の効率が最高であると思っている人が多く、比較されることを好まない。したがって、改善活動の根拠となるデータを取られたくない。

 

 

従って、マニュアルを作るのであれば、「非熟練者」が数多く存在する業務から手を付けるべきである。その際に、作業効率の目標は「熟練者のレベルを超える」目標を設定すること。業務の種類とマニュアルの作り方によっては十分可能である。

 

2番めに行うべきは、「マニュアル作成者」の設定である。

これはできれば「マニュアル使用者」も参加させることが望ましい。マニュアル作成に参加することで、のちの教育過程を省くことができるばかりか、作成過程でマニュアルの有用性をジャッジしながら進めることができる。

できれば、「経験の浅い担当」と、「未経験の担当」を混ぜて行うことが望ましい。

 

3番目に行うべきは、「作業の分解」である。

分解と言っても箸の上げ下ろしまで分解するのではなく、ある程度のまとまりに分解すること。一般的には「作業」「判断」「対策」をセットとした単位とすることが望ましい。

営業であれば、「アポ取り」「インタビュー」「プレゼンテーション」「フォローアップ」「クロージング」などである。これらはそれぞれ上の3つを含んだ単位になっている。

 

4番目は、分解した単位の仕事別に「基準」をセットする。「不良率」「アポ率」「リターン率」「インタビュー時間」など、測定可能な基準を設けること。

そして、それらを記録できる様式をつくり、マニュアルとすること。マニュアルは多くの場合文章で書くよりも様式とし、表に記録をつけることが出来たほうが有用である。

 

5番目は現場で利用し、データを収集すること。最低でも10~30回程度の繰り返しのデータが必要である。

6番目はデータを利用してマニュアルを改定すること。改定しなければマニュアルはそのまま死ぬ。マニュアルを作るメリットを享受したければ、マニュアルとデータを見ながら改善活動を行うことである。

そうすることで、「思い込み」や「力関係」に惑わされず業務効率を重視した建設的な話し合いが可能になる。データのないところに改善はない。

 

以上の6ステップを確実に行わなければマニュアルのメリットを享受することは難しい。だが、オペレーションを卓越させるためには不可欠のステップである。

 

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(2024/3/26更新)