昔訪問したある会社で「嫌ならやめろ」と口癖のように言う経営者に出会ったことがある。とてもワンマンな社長であったが、商売がうまく、会社の調子はとても良かった、
が、5年半でその会社は消えた。
その会社に在籍していた社員に、昔の話を聞いたところ、
「調子がいい時は、嫌ならやめろ、で良かったんですがね。事業の成長が止まった瞬間、優秀な人から辞めていきました。社長は裏切られた、とか言ってましたが、まあ、そんなもんでしょう。」
なぜ、こんなことが起きるのか。
経営者が「嫌ならやめろ」と言うと、会社の調子がいい時は、皆「使えない奴は要らない」と経営者に賛同し、辞めていく人物に大した注意を払わない。
また、「やめてほしくない、優秀な人」は、社内での待遇がよく、成功もしていて仕事が面白いのでその会社を辞めない。
だが、永遠に業績の良い会社はない。少し業績が横ばい、あるいは下降線を取った時、どうなるか。
経営者は、「いまこそ、社員の力を結集して事にあたろう」と社員を鼓舞するのだが、優秀な人は「行き先がいくらでもあって、他のほうが待遇が良い」ので転職の誘いが魅力的になる。
また、彼らはかつて社長が「嫌ならやめろ」と言っていたことを思い出し、「まあ、自分も成果が出なくなったらそう思われるだろう」と、引いていく。
みな、冷遇された社員のことは憶えている。たとえその人のことが好きでなくても。だから、経営者が「嫌ならやめろ」と言うと、会社がピンチの時には必ず出来る人から辞めていく。
優秀な人は、その経営者にかなりの恩があるはずだが、内心はこう思っている。
「社長、お世話になりました、あなたの力はもう必要ないですよ。あなたがかつて他の人にしたように、もうあなたは不要なんですよ。」
ということだ。
残念ながら、ほとんどの社員、腹心の部下はあなたが好きだからついてきているのではない。彼らにも生活があるし、守るべき家族がいる人もある。経営者が「嫌ならやめろ」と社員にいうことを、苦々しく見ている。
経営者は「嫌ならやめろ」といくらでも思って良いが、公言してははいけない。ピンチの時に必ず、裏切りがある。しかもそれは、できない人ではなく、あなたが頼りにしている人からだ。
(2026/10/26更新)
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