最近頻繁に、何か聞かれるとすぐに
「わからない」
という若手に何度か出会った。
通常は「わからない」という言葉は、暫く考えた後に
「やっぱりわかりませんでした」と言った形で出てくるものだ。
しかし、上のケースはたいして考えもせず「わかりません」と言う。
例えば、
「なんでお客さんは怒ったと思う?」 → 「わかりません」
「どうやったらもっと成果が上がるかな?」 → 「わかりません」
こんな具合である。
先輩や上司も呆れ顔で、「ちゃんと考えているのか?」と聞くが、彼らは
「考えてもわかりませんでした」と気にする様子もない。
—————–
実は、これは若手だけに限った話ではない。いい歳をしたオジサンも「オレ難しい話わかんねーから。」と言っている人は、過去に訪問した会社に結構存在した。
ある会社の管理職は、こういった部下に対して半ば諦め気味だ。
「いや、いいんですよ。別に。究極的には自己責任ですから。誰にでもわからないことはありますし。……
まあ、黙っているよりも「わからない」と表明して、キチンと教えを請う、という姿勢を見せることは逆に知ったかぶりをするよりも遥かに重要なのかもしれないです。」
しかし、状況だけを見ると、残念ながら彼らは教えてほしくて「わかりません」と言っているようには見えない。
「考えたくない」から、わかんないと言っておく。
あるいは、
「考えるのがつらい」から、わかんないと言っておく。
そんな風にも見える。
「早く結論から言ってくださいよ」
「ググればいいんでしょ」
そんな感じである。
もちろん、こういった状況ばかりではない。
中には上司がいわゆる「嫌なヤツ」で、考えて答えているにもかかわらず、詰問するように「そんなんじゃダメだ」と言われ続け、ついに考えることをやめた、という事象もあった。
が、むしろこれは例外に属する。
彼らは今までの人生において「わからない」と言えば、自分で考えることを免除されるという経験をしている可能性が高い。そしてそのたびに周りが「仕方ないから、代わりに考えてきてあげていた」のだ。
もしかしたら昔からこう言う人は一定数存在していて、上司を困らせてきたのかもしれない。
だが、いつの頃からか、我々はわかりにくいものに遭遇すると、
「自分の理解力が足りないのだ」と思うよりも、「説明がヘタだから悪い」という、相手を責めるマインドになることが多くなってきた。
相手に知的負荷をかけることは、商売においては禁忌である。人はわかりやすいものを好むからだ。
だが、仕事においても常に
「丁寧に教えるのが上の役目だ」
「あなたの説明がわかりにくいのが悪い」
と、消費者のような顔をしていては、能力の向上は見込めない。
だからこれは一種の「いきすぎた消費者マインド」と言ってもよいのではないか、とたまに思う。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】 ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。
(2025/6/2更新)
こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ——
「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。
【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
【著者プロフィール】
・安達裕哉Facebookアカウント (安達の最新記事をフォローできます)
・編集部がつぶやくBooks&AppsTwitterアカウント
・すべての最新記事をチェックできるBooks&Appsフェイスブックページ
・ブログが本になりました。