つい先日、セブンイレブンに寄った際、レジでお金を払おうとして、ふと周りをみて気づいたことがありました。
あっ、「セブンドーナツ」が、個別包装になって、店員さんに言って取ってもらわなくても、自分で取れるようになっている!
思わず、シフォンケーキを1個買ってしまいました。
鳴りもの入りで登場し、最初は好調が伝えられていた「セブンドーナツ」なのですが、その後はどうも売れ行きが芳しくない、と報じられていました。
コンビニがコーヒーで成功して、ドーナツで失敗したシンプルな理由(現代ビジネス)
コンビニ各社が「戦略商品」として大々的に宣伝してきたドーナツが不振にあえいでいる。
コンビニ・コーヒーやフライド・チキンは定番商品となったが、ドーナツは完全にパイの奪い合いとなってしまった。
コンビニ各社は「脱チェーンストア理論」を掲げ、個性的な店舗運営を目指しているが、言葉とは裏腹に現実にはむしろ商品の画一化が進んでいる。今後はM&A(合併・買収)が加速することで、個性的な商品や店舗はますます消滅していくかもしれない。
ミスタードーナツなどの既存のドーナツ店に比べて、質の問題があるのでは、とか、そもそも、お客さんはコンビニにドーナツを求めていないのでは、などと、さまざまな分析がなされていたのですが、コンビニをよく利用する僕からすると、「コンビニのドーナツは、けっして悪いものじゃないんだけれど、わざわざレジで店員さんに『あれください』と声をかけてまで買うのはめんどくさい」という商品だったのです。
コンビニであれば、別にレジであれを注文しなくても、菓子パンとかシュークリームとかのスイーツ系とか、代用できるようなものがたくさんありますし。
レジが混雑して、後ろで人が待っているときには、揚げ物商品など「店員さんにもうひと手間かけてしまうもの」を頼むのは考えてしまうんですよね。
そもそも、中年男が「ドーナツを……」と言うのは、ちょっと恥ずかしい。
いや、そんなのお客さんはいちいち気にしないよ、と思う人は多いだろうし、コンビニの運営側も、おそらくそう考えていたのでしょう。
ドーナツに関しては、個別包装にすることは、技術的にそんなに難しいことではないはずです。
ただ、こういう「ちょっとめんどくさいという壁」って、案外、買うか買わないかの「決め手」になったり、新しいニーズを生み出したりするきっけかになったりするんじゃないか、と僕は思うのです。
以前、「カルピスウォーター」を開発した人の話を読んだことがあるのですが、発売時は、社内で「そもそも、カルピスは水で薄めるだけなのに、薄めたあとのものを割高な値段で買う人がそんなにいるのか?」という否定的な声が多かったそうです。
もう少し遡ると「缶やペットボトルのお茶」というのも「家でつくるのが常識で、好きなだけ飲めるものを、外でお金を出して買う人がいるのか?」と言われていた、とのことでした。
いまでは、いずれも定番商品となっています。
もちろん、これらの商品は、使っている水やお茶などの品質や味などに気配りがされてはいるのですが、何よりも
「家でいくらでも飲める」
「水やお湯を入れるだけなのに」
「それを冷まして持ち歩くだけなのに」
という先入観を捨てたことが成功につながっているのです。
その「ひと手間」って、めんどくさい人にとっては、けっこうな障壁なんですよ。
カルピスを飲みたいけど、わざわざコップを洗ってカルピスに水を入れて薄めるの、ちょっとめんどうだな、使ったコップも洗わなきゃいけないし……
逆に「そういう手間が無い体験」をしてしまうと、後戻りできなくなってしまうところもありそうです。
コンビニドーナツの場合は、代替になる商品が店内にたくさんある、というのも事実ですし、店員さんが熱心にレジを打っているときに一声かけるタイミングって、けっこう難しい。
「めんどくさいと思う人」には、けっこう大きなハードルなんですよ、これ。
菓子パンと同じように買えるのならば、ドーナツを選ぶ人は増えるような気がします。
さて、これが「セブンドーナツ」復活のきっかけとなるかどうか。
個人的には、こういう「手に取りやすさ」「店員さんを煩わせなくて済むようになったこと」って、けっこう売り上げに影響するのではないか、と予想しているのです。
「買おうかどうか迷う、微妙なところに位置する商品」だからこそなおさら。
商品を開発する側、売る側にとっては意識しないような「めんどくささ」をお客さんが感じることって、どんな業界にも、まだまだありそうな気がします。
そういうことを突き詰めているはずのコンビニ業界でさえ、こういう「改革」の余地があるのだから。
揚げ物とか、おでんとかも自分で取れたらいいのに、って思うのですが、これは衛生上の問題もあるんでしょうね。
(2024/3/26更新)
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著者;fujipon
読書感想ブログ『琥珀色の戯言』、瞑想・迷走しつづけている雑記『いつか電池がきれるまで』を書きつづけている、「人生の折り返し点を過ぎたことにようやく気づいてしまった」ネット中毒の40代内科医です。
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