オールタイムベスト小説100昨年11月から、Amazonが「オールタイム・ベスト小説100」という企画を行っている。

”Amazon.co.jpは2000年11月1日に、日本で書籍のオンライン販売を開始しました。13年にわたる書籍の販売で蓄積した販売数、カスタマーレビューの評価をはじめとする各種データをもとに、これだけは読んでおきたい「オールタイムベストブック」を選定しました。ここに、第1弾「小説100」を発表します。”

 

私はこのような企画があると、「とりあえず買ってみる」ということをしているので、100冊全てを読んでみようと少しずつ読んできたので、いくつか私的にヒットしたものをご紹介する。

個人的はビジネス書を読むよりも、よく出来た小説を読むほうがはるかに勉強になるため、声を大にして「小説を読もう!」と申し上げたい。

 

ちなみにKindleを持っている方であれば、100冊のカタログを直接ダウンロードできる。無料。

 

 

さて、読んでみて面白かったものをご紹介する。今回は「星を継ぐもの」だ。

最近はSFを多めに読んでいるが、通常SFというと、派手な戦闘があったり、壮麗な宇宙空間のイメージが浮かんだり、あるいはエイリアンとの遭遇なと、現在上映中の映画である「ゼロ・グラビティ」の創りだすようなイメージを思い浮かべる方が多いかと思うが、この本は少々出来が違う。

この本に戦闘シーンは無い。そこにあるのは、ひたすら「調査」のシーンだ。本の紹介はこのようにされている。

”月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。”

 

こう書いてみるといかにもチープな本の紹介だが、実際には5万年前の死体から「どうやって情報を引き出すか」をひたすら描写する本である。

 

「言語学者」は、この死体が持っていた手帳の翻訳に取り組む。この生物が持っていた言語の体系はどのようなものか、アルファベットを解明し、文法を解明し、そして単語を明らかにしていく。

「数学者」は手帳の巻末にある「数学の公式」と思しきものから、この生物がどのような科学技術を持っていたか、どのようなな単語が何を示すかを明らかにしようとする。そして、数学の定理はどのような言語体系を持っていても、普遍的な真理を表すのだから、自然対数の底や円周率をこの手帳から引き出す、という作業を行う。

「生物学者」は、この生物の骨格や、骨の残留物質から、どのような新陳代謝を行っていたのか、どのような環境に生きていたのか、体温はどのような温度だったかを調査する。

「電気工学者」は、彼が身につけていた宇宙服の部品を分析し、どの程度のエネルギーを扱うことができたのか、どのような単位を用いていたのかなどを明らかにする。

そして主人公はこのような専門家たちの意見を学際的にまとめる。例えば、「言語学者」と「数学者」に、「電気工学者」から得られた単位の情報を与えて、より多くの事実を引き出そうとする。

 

最終的に主人公は「5万年前に何があったのか」「彼らは何者なのか」「彼らはどこから来たのか」にたどり着く・・・。

 

SFの体をとってはいるが、実際にはこの本は「プロファイリングの芸術」を垣間見ることの出来る本である。

ラストの「衝撃的な事実」はそれだけ聞けば荒唐無稽であるが、プロファイリングを追ってくると恐ろしく説得力があり、「実際の世界にもこのようなことがありえるのではないか」と錯覚すらする。

 

 

「科学的手法」と「科学者」についてもかなり詳しい描写があり、「ものの考え方」を学ぶにも良い本であるので、オススメである。

 

 

 

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