先日ある会社において研修がおこなわれた。社内の講師を使った内定者向けの研修だ。
そして、研修のテーマは「信用」だった。
他社においても、若手向けの研修でよく見かけるテーマだが、大抵は
「締め切りを守りなさい」
「報連相をしなさい」
「遅刻してはいけません」
といった、「信用される人になりましょう」という説教臭いものがほとんどだ。
だが、その会社の「信用」に関する考え方は、ちょっと特色があった。
テキストにはこうあった。
「ビジネスは、多くの人を巻き込まねば大きくなりません。特にこれからは、社外の人と組むことも多くなるでしょう。」
そして、つづけて
「どういった人と組むべきでしょう?」
と問われる。
強みを補う人、Win-Winの関係になれる人、など、様々な発表があった。
すると講師は「その通りです。でも中には悪い人もいます。それらは全て「信用」の上に成り立っています。信用できる人と組みましょう」と言った。
そして「信用できる人って、どんな人ですか?」と続けて問われる。
皆がそれぞれの答えを発表し最後に講師からの解説があった。
「そうですね、皆さんが発表したように、嘘をつかなかったり、時間を守ったりすることは大事です。ですが、ビジネスに於ける信用は、もう少し複雑です。」
と講師は言う。
そして、彼は、次のような趣旨の講義をした。
1.成功している人を信用するのではなく、努力する人を信用して下さい
成功しているかどうかは、信用が置けるかどうかの指標にはなりません。その人の成功は、誰かを踏みにじって得られたものかもしれません。
結局、自分で手を動かして、辛抱強く実行する人と組むのが最善です。
2.自分をいい気分にさせてくれる人を信用するのではなく、約束を守る人を信用して下さい
詐欺師は、虚栄心やプライドをくすぐって、その人の信用を得ようとします。自分をいい気分にさせてくれる人を信用するのではなく、「確実に約束を守る人」と組まなくてはいけません。
3.権威ある人を信用するのではなく、礼儀正しい人を信用して下さい
権威とは、演出されたものに過ぎません。それは信用するかどうかの判断基準にはなりません。でも、礼儀は違います。礼儀はその人の人格の一つの現われです。礼儀正しい人を信用しましょう。
権威ある人の無礼な振る舞いに我慢する必要はありません。
4.新しいものに詳しい人ではなく、古いものも大切にする人を信用して下さい
新しいものに詳しいことは、その人を魅力的に見せます。しかしビジネスは往々にして新しさよりも手堅さが求められます。また、真のイノベーションは往々にして古いものの中から生まれます。
古いものをいたずらに否定せず、大切にする人とビジネスをしましょう。
5.儲け話を聞かせてくれる人ではなく、お金をきちんと払う人を信用して下さい
「儲け話」には用心して下さい。それは大抵誇張されているか、ウソの一種です。「知り合いの◯◯さんがすごい儲けている」なんて話も、殆どは話者の願望が現れているだけです。
あなたの労働と成果に対して、きちんと対価を払ってくれる人と組みましょう。お金は「支払う時」にこそ、人格が出るのです。
6.夢ばかり語る人ではなく、具体的なことを語る人を信用して下さい
夢ばかり語る人がいます。それはそれで良いのですが、ビジネスで組む相手としては不適格です。なぜならば、夢は具体的な行動が伴って初めて価値が出るものだからです。
「具体的にはどうするのですか?」と聞けば、その人が信用に値するかどうかはすぐに分かります。
最後に講師はこう締めくくった。
「もちろん、あなた方も相手から「組みたい」と思ってもらえる人にならなければダメですよ。」
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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