6月のソフトバンクのスーパーフライデーでは、セブンイレブンのアイスクリームやコーヒーがもらえるクーポンが配布されています。

そして先日、そのスーパーフライデーで賑わう金曜の夜にセブンイレブンに寄ったところ、店内にいた子どもがセブンイレブンのプライベートブランドのカフェオレを床に落としてしまったのです。

 

そのカフェオレは、赤い蓋の部分が破れて中身を床に撒き散らしていました。 

 ああ、落としてしまったのか……と気の毒に思いつつ眺めていると、その子のお母さんがレジの店員さんに、床に落としたカフェオーレ(の残骸)を見せて、「これ落としちゃったんですが、どうしたらいいですか?」と尋ねました。

アルバイトらしき店員さんは、「ああ、わかりました。いいですよ」と優しく答えて、お金を請求する様子はありません。

 

落として中身の大半をぶちまけたカフェオレが売り物になるわけもなく、「弁償します」「代金は払います」とお母さんは言うだろうと僕は思っていたんですよ。

ところが、お母さんは、弁償を口に出すこともなく、いいんですか、それは良かった、とばかりに、そそくさと立ち去ってしまったのです。

 

うーむ、どう考えてもこれは店にとっては損害なんだし、200円もしないカフェオレ1つの代金くらい払おうよ……というか、とりあえず「払います」くらいは言おうよ……

 

もちろん、子供がやったことで、わざと落としたわけではないし、店としても、そこで揉め事になって仕事が滞るより、良いイメージを持ってもらうほうがメリットが大きい、ということで、そういうマニュアルになっているのだろうとは思うんですけどね。

家族連れが多いコンビニでは、子どもが商品を落としたり汚したり、というのは十分予測されることで、想定内のロスとして、粛々と処理されている可能性は高いでしょう。

 

でも、やっぱり、「弁償します」ってお母さんが言わなかったことに、僕はけっこうがっかりしたのです。

払わない結果になることを予測していたとしても、それは、そこは弁償を申し出るのがスジなのではないか、って。

 

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スッキリしないまま帰路についたのですが、考えてみると、僕がこういうケースで「店側の損害」を意識してしまうのは、さまざまな報道やネット経由で、「コンビニ経営の厳しさ」を知っているから、なんですよね。

そういう情報に接していなければ、「子供を持つ親の立場」から、「まあ、子供のやることだから、しょうがないよね」と、この親のほうへの共感が強くなったかもしれません。

 

でも、コンビニ経営者ではない僕にとって、コンビニ経営側のバックヤードでの万引きや商品ロスとの苦闘を知ることは、知りたいという欲求を満たすことではあっても、一顧客としては、「なんとなく、気おくれしてしまう」ところもあるのです。

 

最近大きな話題になった、不在が多いことによる宅配業者の疲弊についても、そういう相手側の状況を知ることによって、「遠慮」したり、「配慮」したりせざるをえなくなるのです。

そういう情報に接していなかったら、たぶん、「今日は宅急便が来るから、二度手間にならないように、ちゃんと家にいよう」とは思わないで、「まあ、不在時に来たら、再配達してもらえばいいや」くらいの気持ちで、自由に休日を過ごせていたはずです。

また、そういう日にかぎって、なかなか来ないんですよね、配達に。

宅配ボックスを使えば良いのでしょうが、配達されるものの内容や大きさによっては、難しいこともあります。

 

 

コンビニ経営がそんなに儲かるものではなく、かなりギリギリで、おにぎり一個のロスもかなりのダメージになることや宅配業者が荷物と再配達の多さに疲弊しきっていることなど、「知らない」という人は、世の中に少なくないのです。

知らなければ、「ま、子供はよくこういうことやるよね」「だって、ずっと宅配便を待って家にずっといるのも勿体ないし」と思うだけの話で、そこに「罪の意識」みたいなものは生まれてこない。

 

結局のところ、いろんな物事に配慮しすぎると、どんどん自分が不自由になってしまう。だからといって、とくにそれに見返りがあるわけでもない。

「自分がいいこと、正しいことをしている」と、少し優越感に浸れるくらいです。

知らない人たちは、別にそこに罪悪感なんてないのですよね。だって、「相手の事情なんて、知らないし、想像しない」のだから。

 

「意識が高い人々」によって、状況が緩和されても、それによって受ける恩恵は、みんな同じでもあります。

 

いろんな人や物事の「事情」を知るということは、知識欲を満たすことではあるのです。

しかしながら、ひとりの人間にできることには限りがあるし、かえって、知ることによって感じるようになる痛み、みたいなものもあると思うのです。

 

インターネットで、これまで見えなかったバックヤードが垣間見られるようになったことは、「知る快楽」を満たしてくれるのと同時に、「知ってしまったことによる不安や不快」を助長しまっているのかもしれません。

 

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(2026/9/16更新)

 

 

【著者プロフィール】

著者;fujipon

読書感想ブログ『琥珀色の戯言』、瞑想・迷走しつづけている雑記『いつか電池がきれるまで』を書きつづけている、「人生の折り返し点を過ぎたことにようやく気づいてしまった」ネット中毒の40代内科医です。

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(Photo:NukelarBurrito)