共働きが一般的になってきたとはいえ、まだまだ日本は「家事は女の仕事」という風潮が強い。

「なんで女は、仕事も家事も両方やらなきゃいけないの!」

働きながらも家事をこなしている全国の既婚女性から、こんな叫び声が聞こえてきそうだ。

 

実際、共働き家庭では女性はどれくらい家事を負担しているのだろう。

統計を調べてみると、2006年のデータでは、妻が9割近い家事を負担している。*1

10年以上経った2017年、状況はどのように変わったのか。

 

大和ハウスの『共働き夫婦の「家事」に関する意識調査』*2では、共働き夫婦の家事の負担率についてのアンケート結果が公開されている。

そこでは、夫は「夫3割:妻7割で家事をしている」と考えている一方で、妻は「夫1割:妻9割の家事負担だ」と考えていることがわかった。

夫婦で協力して家事をこなす家庭も、もちろんある。だが10年経ったいまでも、女性がほとんどの家事を担っている状況は、実感としてたいして変わっていないようだ。

 

……そう書くと、まるで女性が強制的に家事をさせられているような印象を受けるかもしれない。

だがわたしには、どうも女性自身が「家事は自分の仕事だ」という使命感を持っているように感じるのだ。

 

「家庭的」はいまだに女性への褒め言葉

20代半ばになり、女友達と結婚について話すことが多くなってきた。

わたしは「女だから家事をやるなんて考えは古い!」と思っていたのだが、意外にも多くの友人が、

「やっぱりご飯を作って旦那さんの帰りを待ちたい」

「家事は基本的には自分がやるつもり」と言う。

もちろん、共働きを前提として。

 

いまだに意中の男性に「料理ができるアピール」をする女性はいるし、男性が「家庭的だね」と言えば、喜ぶ女性は少なくないだろう。

なんやかんや言って、男性だけではなく女性自身も、家事をする女=素敵だと思っているのではないかと思う。

現代の共働き夫婦の妻は、社会的自立を望むと同時に、家庭的な良妻でもありたいと思っているんじゃないだろうか。自覚の有無に関わらず。

 

だから、働いていても「家事は自分がしないと」と思ってしまう。そうすると、男性もそれを期待する。女性自身が家事を放棄しない限り、家事は依然として女性のものであり続けるだろう。

だが、日本の現状を考えれば、女性がそう感じてしまう理由も理解できる。男性が仕事で忙しく、女性より稼いでいることが多いからだ。

 

男性が、「仕事の時間が長すぎて家事ができない」「俺の方が稼いでいるから家事の負担は考慮してほしい」と言えば、多くの女性は「わたしがやるしかないのか……」と諦めモードに入るだろう。

でもそれは、女性から見たら、甚だ理不尽なものだ。

 

長時間労働のせいで家事ができない男性もいるだろう。

でもそれは、女性のせいではない。「男は忙しいから女がやれ」というのは、女からしたらいいとばっちりだ。

男の方が稼いでいるというのも、平均賃金を考えればたしかに事実だ。だがそれも、一概に女性が悪いわけではないだろう。

 

そもそも夫婦間で「どっちが大変だ」「どっちの方が稼いでいる」と序列をつけることに意味はない。

それならば、「どっちも楽しよう」ではダメなんだろうか? 家事って、そんなに大切なものなのか?

 

 

家でくつろげないなんて、おかしいじゃないか

わたしはドイツ人のパートナーと暮らしているのだが、毎日の家事といえば、夜ご飯を作るくらいなものだ。

朝ご飯は各自パンを食べ、昼も各自、夜ご飯だけ作る。洗濯は週に2度か3度、時間がある方がやる。

とはいっても洗濯機で洗って部屋に干すだけで、畳むのは各自。わたしが料理をしているぶん、掃除は彼が土日にやる。それで終わりだ。

 

最初ははりきって「良妻」を演じていたが、すぐに音を上げて、いまの生活リズムになった。

多くのドイツの家庭では、家事をかなり効率化している。夜ご飯はパンやサラダで済ますし、食器は食洗機で洗うし、洗濯物も丁寧にネットに分けたりしない。シャワーだから、毎日風呂掃除をする必要もない。

 

それに引き換え、日本の家事はとにかくやることが多く、時間がかかる。

2015年の『国民生活時間調査』*3では、成人女性の平均家事時間は平日・土日ともに4時間を超えていて、30代の女性は日曜日、平均6時間40分も家事をしている。(※この統計には専業主婦も含まれている)

 

わたしは、単純にドイツがいいと書きたいのではない。ただ、家事と仕事の板ばさみになっている女性に、「そんなにがんばらなくていいんだよ」と伝えたいのだ。

一生懸命仕事と家事を両立する女性は素敵だが、それはマストではない。家事は快適に生活するためのもの。快適さのためにストレスを溜め込むなんて、本末転倒だ。

 

毎日豪華な手料理がなくとも生きていけるし、多少部屋が散らかっていても死にはしない。もっと効率化して手を抜いていいと思うし、必要とあれば家事手伝いを雇ってもいいだろう。

女性が一生懸命家事をすればするほど、家事は女性の仕事であり続ける。

「女性が家事をすべき」という呪縛が解け、家でくつろぎ、仕事の疲れを癒せる女性が増えてほしいと思う

 

*1社会生活基本調査」総務省統計局

*2 http://www.daiwahouse.co.jp/column/voice/20170524134636.html

*3 http://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20160217_1.pdf

 

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【プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

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